10話 立花先生と『300』
次話12時頃予定。
「疲れた……」
「試験官お疲れ様でした。立花先生」
「いえ、校長先生こそ札の準備等々お疲れ様でした」
試験が終わって一息。試験のフォローをしてくれていた先生と片付けを進めているとわざわざ校長先生が労いの言葉を掛けてくれた。
今年はやんちゃな受験生が多くて疲れも大きかったけど、この一言で全て報われた気さえする。
特にあの不良受験生と水スキル持ちの受験生には困ったわね。
それに下着が透けてしまった時なんか恥ずかしさが表に出ない様にどれだけ我慢した事か……。
「それでどうでした、立花先生から見た今年の子達は」
「良くいえば活発、悪く言えば生意気ですね」
「はっはっはっ! 学生はそれでいいんですよ! ましてやダンジョンでは個人個人の強い想いがスキルやステータスに反映されますからね。主張が強いのは長所となります」
「そうかもしれませんけど……。あの子達の世話をする事になるのは負担が大きいかもしれません」
校長の言っている事も一理あるけれど私としてはやっぱり大人しくて優秀な子を受け持ちたいわね。
「でもそういう生徒って面白みに欠けるから俺は嫌だな」
「井上先生……いらしてたんですか?」
「今年は実戦試験の説明から終わりまでの様子を事務所の人達にもご覧頂いてたからね。事前にこういう事言うと立花先生緊張しちゃうと思って黙ってたんだけど……言っておいた方が良かった?」
「……いえ。通りでダンジョン入口にまでカメラがあった訳ですね」
井上先生は私よりも前からこのダンジョン学校に勤務する先生。ちょっとひょうきんなところがあってどちらかと言えば苦手な部類。
「井上先生もお疲れ様でした」
「いえいえ校長こそ」
「事務所の方々の反応はどうでした?」
「実際にダンジョンで戦っている様子を見れて良かったって……早速いろんな子に目を付けてましたよ」
「そうですかそうですか。残念ながら我々が受け入れられる学生の数には限りがあります。試験に漏れてしまった子達があわよくば事務所の人の目に留まってくれれば……と思ったんですけど」
「いやぁ流石に事務所の方々は優秀な子達、合格必至な子達ばかり誉めてましたからそれは厳しいんじゃないですか?特にあの野宮って子の事ばっかりですよ」
野宮さん。リーダーシップがあって適性検査の結果も最高。
私達側としても是非この学校に通って欲しい、出来れば私が担当したい子でもある。
「ただ、一部違うところに注目してる人もいまして」
「もしかしてあの藤っていう子ですか?」
「それが違うんだよ立花先生。ほらあの攻撃力1の子がいたでしょ?」
「ああ。あの地味な……」
確か攻撃スキルで『バリア』を使った子……。
実戦試験ではあの不良と連携してはいたけど、結局は攻撃力1。1人で戦うには不向き過ぎる。
「まぁ実戦試験を見てうーんって唸ってはいたけど、始まる前は期待値高かったんですよ」
「それは何故ですか?別に試験前からそこまで目立った所は見受けられませんでしたけど……」
「それがあの天才少女加護麗華の兄貴だったらしいよ」
「えっ!?」
「ほう……」
井上先生の言葉についつい声を荒げてしまった。
校長もびっくりなさった様で眉をピクリと動かした。
「前評判が高すぎたからあの地味さ加減にガックリって訳ね」
「うーん。地味だけど、俺はあの『バリア』は滅茶苦茶強いと思ったけどな。カメラには映ってなかったけど、Cが勝ったのって――」
「井上先生。その予想当たってるみたいですよ」
校長先生は回収した札の中から1枚取り出して笑って見せた。
「まさか、そんな……」
「ふ、面白いねぇ」
Cの札の裏に記載された300という数字。
ざっと見た感じ10~20という数字が多い中でその数字は明らかに異彩を放っていたのだった。
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