27話 ボス?
「はぁ、んっく、はぁ、ああ……。ふぅ……」
「相沢っちバテ過ぎぃ。あーしポイント20だったよぉ。相沢っちは?」
「は、8ポイント……」
「やったぁ。あーしの勝ちぃ。勝ったからぁ……ちょっとおんぶしてぇ」
「ちょっこら、おまっ!」
反動の所為で相変わらず息を荒くする相沢。
それでも少しすれば呼吸は元に戻るし、戦闘中は疲れている様子を見せなかった。
入学試験の時から相沢なりに努力した結果なんだろう。
「レッツゴー相沢っち号ぅ」
「俺は乗り物じゃねえ! それにこの下は多分ボスだ。いくら強くてもあんまりふざけ過ぎれば死んじまうぞ」
「やられるかもだけどぉ、死にはしないってぇ」
渚さんは相沢の背中におぶさりながらぺしぺしと馬に鞭を入れる時のように体を叩く。
下着を隠さないのも男子にベッタリなのも、女子として大丈夫なのか?
今は相沢が相手だから大丈夫だとしても金田だったら……。考えるのも恐ろしい。
「ボス……実は私初めてなんだけど、その、どうしてこの先がボスって分かったのか聞いてもいい?」
風間さんはボスという言葉に反応して舌舐めずりをすると、沸き上がる衝動を圧し殺す様に相沢に質問する。
「別に大した事じゃないけど……。まぁ一応説明すると、ダンジョンボスはそのダンジョンの5分の1にいる事が殆んど。ここは100階層まであるんだろ?だったら次の20階層にいる確率が高いってわけだ」
「そうなのね。それで、その、ボスってどれくらい強いのかな?知能が高いのなら今までの雑魚よりも痛ぶる甲斐がありそうなんだけど……ふふ」
「ま、まぁ知能が高いのは間違いないんだがそんなに余裕がある敵じゃないはずだ。基本的にボスはそれまでのフロアより1ランク上が多いらしくて……ここだとCクラスのモンスターだと思う」
Dクラスのモンスターがいる場所に入れるようになった、とちょっと前まで意気がっていた相沢は神妙な面持ちでそれを呟く。
「相沢っち怖いの?」
「ば、馬鹿! 俺が怖がるわけないっ――」
「僕はちょっと怖いです。……Cランクのモンスターに拘束スキルが効くのか不安で。それに知能の高いモンスターは……」
やけに暗い声の金田に意外そうな目を向ける相沢達。
辺りが一気に重い空気で包まれてしまった。
こういう役目を担うのは緊張して吐きそうになるんだけど……
「み、みんながいるから、だ、大丈夫だよ!その、だ、だから……止めを刺すのは俺達に任せて!」
「加護君……。ありがとう」
金田はなんとかいつもの表情に戻る。
はぁ、勇気使いすぎた。
「ふふ、そうよ。殺すのも痛ぶるのも譲らない……」
「でも風間っち、あんまり突っ込んでかないでね」
「そうだぞ。さっきまでいたのがソルジャーコボルトだったって事は今度は広範囲遠距離攻撃も出来るガジェットコボルトかもしれない。不用意に突っ込めば死ぬのはこっちだ」
広範囲遠距離攻撃のモンスター。
弓じゃないとなると避けるのは難しいか。
ならいくらか消耗したとしても……
「『バリア』シリーズ④『リフレクションバリア』」
俺はボスに挑む前に大量のMPを消費して劣等生クラス全員の姿を包む様にしてコンパクトなバリアを展開した。
ちょっと窮屈だけど、これなら階段は下れるな。
最悪出待ちされて一気に叩き込まれる可能性もあるからここでスキルを発動出来て良かった。
「んー……」
「か、風間さん、様子見も必要だから……」
「風間っち我慢我慢」
バリアは中にいる人の行動を制限する役割をもこなしてしまう。
それを分かった上で風間さんはぷくっと頬を膨らませて俺を睨んでくるのだった。




