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バストラの街に到着した様です

遅くなってしまいましたが続きです。


( へ;_ _)へ

聖王国首都の南部に位置する街『バストラ』。

人口二万、街の大きさは、城塞都市オルボアを越える程大きい。

その大きな街は、全体の三割という宿屋で成り立っている。


このバストラと言う街は、十字路になった街道によって成長した街だ。

北に七日程で聖王国首都、東に十日程の距離に『魔法都市オードナルド』、南南東に二十日程、南部大陸への玄関口とも言える港町、そして西部に五日程の距離で『オルボア』と、四つの都市へと続く街道より発展してきた。

特に南部の港町から商人が運ぶ珍しい品物、その大半がこのバストラの街経由で搬送されていた。

南部から持ち込まれた品物が、このバストラで倍、さらにその先々の街で何倍の金額にもなっているのだ。

それこそ聖王国中の商人が集まるとも言われている程だ。


そんな商業の街とも言えるバストラ西側大門。

大門と言うが、城塞都市オルボアや聖王国首都にある巨大な門と違い、三メートル程度のこじんまりとした門がそこにあった。

左半分が閉じられ、半開きになっている右側を武装した兵士達が守っている。

時刻は夕方、後半々刻(三十分)程で門を閉じる時間になる。

何人かの兵士は、門の外に転々と置いてある鉄籠の中に、大量の薪を積んでいく。

夜間警戒用の灯りだ。

城門前に灯りを灯す事により、バストラを目指す者達への目印に、さらにはモンスター等襲撃者に対し、城門前へと誘き出す為の餌として火を付けるのだった。

その為の準備を三人の兵士がしていた。

新品の鎧から覗く顔は、まだまだ幼い。

最近入隊した新人兵士なのだろう彼らは、両手に大量の薪を持って、ヨロヨロと不安定な足取りで、鉄籠へと薪を入れに行く。


「お、重い……」

「おい、落とすなよ?」

「いいから早く終わらせようぜ、夜が来ちまう」


三人の新人兵士は、そんな愚痴を言いつつ、大量の薪の入った鉄籠を篝火台(かがりびだい)の上に持ち上げる。

三本の鉄棒で組まれた台座部に、しっかりと鉄籠が固定されているのを確認すると、次の台座へと目線を向ける。


「おい、あれ?」

「おい、よそ見してないでこっち手伝えよ。」


新人兵士の一人が街道先を指差しているが、手が止まっている事に他の兵士達が気付く。

早く終わらせないと先輩兵士に怒られるぞと言葉を続けようとし、目線を指差す方へ向けるとそこには、大型の馬車がこっちに向かって来ているのが見えた。

遠目に見ても、早い速度で走っている。

この辺りの街道は、整地されていると言っても、都市内の様に『石畳』になっている訳では無い、ただの踏み固められた道だ。

そんな道を速度を上げて進めば、場合によっては車軸が折れてしまう可能性もある。

だが、こちらに向かって来る馬車は、それすらも構わないとでも言う感じだ。


『もしかして、モンスターにでも追われているのか?』と思った新人兵士達だったが、馬車の後方にそんなモノがいる様子は無かった。

そして、馬車が兵士達の真横を通り抜けて行く。

先頭を走る馬車の御者席には、小柄な人物が二人、手綱を握っていた。

二人共、フードを目深に被っていた為、顔は見えなかったが、その体格から女性ではないかと思われた。

大量の荷物を積んだ荷台には、何人かの姿も見えた。

二台目の馬車の御者席は、先頭の人物とは対照的に、金属の鎧を着込んだ戦士が座っていた。

口を真一文字に結び、ひたすら前だけを見ていた。

こちらも荷台に数人の人影が見えるが、その誰もが疲れ果てている様に見えた。


そして問題なのが三台目、先の二台とは逆に幌の無い小型の馬車だった。

だが、その荷台を見た瞬間、兵士達の目線が釘付けになる。

荷台に乗っていたのは荷物では無く人、それも明らかに悪人と思われる髭面の男達だ。

そんな男達が五人、頑丈そうな縄で全身を巻かれ、山積みされながら運ばれていた。

だが、それだけでは無かった。

その荷台横を並走する様に走る黒い陰、それは身長二メートル、全身艶の無い黒い鎧姿の大男だった。

その大男は、右手に抱え込む様に大きな木箱を持っていた。

まるで空箱とでも思える様な感じだが、そうだとしても、それなりの重量のハズだが、まるでお手玉の如く軽々と持っていた。

さらに驚かせたのは左肩、小柄な女の子を乗せている事だった。

大男の左肩に『ちょこん』と座る女の子は、風で頭のフードが飛ばされない様、必死になって左手で押さえている。

さらに右手で大男の兜を抱え込む様にしながら、しがみついていた。

新人兵士達にしてみれば、抱えるのがやっとの大きさの木箱と、小柄とは言え女の子一人を肩に乗せて疾走する黒い鎧姿に、ただただ唖然とするだけだった。


四台目に通過した馬車も、スキンヘッドの巨漢が手綱を握っていた為目を引いたのだが、黒い鎧の大男のイメージが強過ぎた為、新人兵士達の記憶には残らなかったのは別の話。


唖然とする新人兵士達だったが、馬車が通り過ぎると、自分たちの仕事を思い出し、急いで薪を鉄籠へとくべるのだった。



ーーー

四台の馬車は、そのままバストラの街の西門に到着すると、兵士達の代表を呼ぶ様に伝えて来た。

直ぐに、兵士長を名乗る人物が出て来たのだが、彼も目の前の状況に目を白黒させてしまう。

何しろ彼らの前には、明らかに堅気とは思えない風貌の男達が五人、簀巻き状態で転がされていたからだ。


「あ~、彼らは何だ?」


兵士長としても、目の前の男達が何なのか聞くしか出来なかったのだが


「私はディトラス商会のエドウィンです。ここに転がっているのは盗賊らしく……」


そう言うと、商隊を代表する様にエドウィンが兵士長へと説明し出す。

とは言うものの、エドウィン側も直接襲われた訳でも無く、相変わらず森の中や茂みの影に『埋められていた盗賊っぽい者達』を発見した為連れて来たとしか説明出来なかった。

実際、何人かは手配書があったらしく、盗賊の類いとして処置する事となった。

彼らの所持品と思われる『怪しい品々』も、早めの処置の原因でもあった。



ーーー

彼ら盗賊達が兵士に連れられて行こうとする際、何人かの目がこっちに向いていたが、リリーは素知らぬ顔をするのが精一杯だった。


『わ……私では無く黒騎士さんを睨んで下さい』


心の中でそう叫ぶリリーだったが、肝心の黒騎士は、恨みの籠った目線すらも完全に無視していた。


「さて、一日遅れですが何とか中間地点まで来ましたね」

「そうだナ。で、何日滞在だイ?」


ディトラス商会のエドウィンと、護衛のリーダーであるスキンヘッドの大男が、今後の事を話し合っていた。

他の商会の人達は、この街に下ろす品物を確認していた。


「とりあえず、ここまでは順調ね」

「そのよう『ニャー』」

「ポー、その口調止めてって言ってるでしょ?」

「ナルが『フレンドリー』な喋り方になったら止める『ニャー』」


そんな話をしながら、リリーに近づいて来た猫の獣人族ポーリーナとエルフのナルルス。

目立つ容姿を隠す為、フードを被っているが、それでも街中では目立つ二人組だ。

リリーと黒騎士の姿と合わせると、さらに怪しくなるのだが……


「で、この後はどうする?」


そう言って来たのはナルルス、彼女達の護衛任務応援はこのバストラの街までだ。

この街で暫くの間、冒険者として仕事をしてからオルボアへ帰る事になっていた。


「まずは荷物を……ギルドに届けます……後は……明日か明後日にも……東へ向かう予定……です」

「先に届けますの?もう夕方ですのに?」


そう答えるリリーに対して、何とも言えない顔をしている修道士のケーテ。

ケーテにしてみれば、もう少し休んでからと言いたかったのだろうが


「ケーテは……ゆっくりしてても……いいんですよ?」


暗に『自分達は先に行くつもり』だと答えるリリー。

正直、ここからなら黒騎士が全力疾走すれば、三日程で魔法都市オードナルドに到着してしまう。

ケーテと一緒に行動する方が遅くなってしまうのだが……


「まぁ、リリーったら酷いですわ!!私を置いて行こうとするなんて」


そう言うと突っ掛かって来るケーテに、困り顔のリリー。

個人的に言うと、ポーリーナやナルルスと一緒にケーテが行動してくれると有難いのだが……そう思い、チラリと二人を見ると


「「……」」


二人してそっぽを向いて知らん顔になっていたのだった。

そんなやり取りをしていると


「ようお嬢ちゃん達、今夜の宿屋は決まったのかい?」


ヘラヘラとして顔で近づいて来たのは、商会の護衛の一人、小柄な身体のハンターだった。


「俺達は裏通りの安宿に行くんだけど、お嬢ちゃん達もどうだい?ついでに飯も奢っちゃうよ?」


何とも掴み所の無い感じで喋り掛けてくる小男に、何故かナルルスとポーリーナが、警戒する様な目線を向けるのだった。

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