探されていたようです
少し体調を崩してて、投稿が遅れました。
( へ;_ _)ノシ{季節の変わり目の風邪にご注意を
そんな白鳥の安らぎ亭での宴会から三時間程たった今……
「あの、デボラさん……私の部屋で……何を?」
リリーは、自室のベッドの上に座っていた。
サイドテーブルに、大皿に盛り付けられた食べ物とジュースが置いてある。
デボラが、わざわざ持って来てくれたのだった。
「まだ食い足りないだろ?ほら、ゆっくりお食べ」
そう言うデボラだったが、リリーにしてみれば、それどころでは無かった。
すぐ隣の食堂からは、未だにどんちゃん騒ぎをしている女性冒険者達の声が聞こえてくる。
なのに、リリーの泊まっている狭い室内に、宿主であるデボラと何度か見た事のあるエルフと獣人族の女性冒険者がいたからだ。
「えっと……あの……お二人は」
「ナルルス」
「えっ?」
「ナルルス、私の名前」
エルフの女性は、表情を変える事無くそう言うと、無言でリリーをジッと見てくる。
「あはは、すまないニャ。ナルは少し人見知りするのニャ」
「は……はぁ」
猫の顔をした獣人族の女性冒険者が、横からフォローを入れてくる。
「んで、私の名がポーリーナ。ヨロシクニャ」
そう言いながら、ポーリーナと名乗る獣人族の冒険者が右手を差し出してきた為、慌てて握手するリリー。
『やっぱり、猫の獣人族さんは、語尾に『にゃ』と付けるんですね』
と失礼な事を想像していたのだが
「何度も言ってるけど、その喋り方止めて」
「いいじゃない、人族って猫族に対してこの喋り方を期待してるって言うし。あっ、じゃなくて『期待してるって言うニャ』」
そんな二人の掛け合いに、ガックリと項垂れるデボラ。
『作ってたんですね、その台詞』と心の中で呟きながら……
「ほらほら二人共、リリーが困ってるじゃないか。さっさと用件を言いな。その為にわざわざ移動したんだんだからね」
デボラがソファーに座るナルルスとポーリーナにそう言うと、二人は顔を見合わせて頷く。
「所でリリー、貴女に聞きたい事がある」
「聞きたい事……ですか?」
エルフのナルルスの言葉に、『こてん』と首を傾げるリリー。
「まず一つ……貴女、結婚してる?」
「……はい?」
いきなり予想しない発言に、思わず狼狽えるリリー。
「結婚って……えっと……その……男性と一緒になる訳で……私は……あの……」
わたわたと手を振り回して焦りながらも、必死に言葉を探しているリリーを見て
「うん、これは無いね」
「経験無い」
「結婚処か男性と付き合った事も無さそうね、あっ『無さそうニャ』」
バッサリと切り捨てるデボラの言葉に同調する二人に、リリーは真っ赤な顔をしてうつ向く。
「あ……あの……これは一体?」
うつ向くリリーの目の前で、ヒソヒソと話し合い始めた三人を下から睨む様に見ながら聞く。
すると
「そうね……見てもらった方が早い。ポー?」
「はいはい、これ『ニャ』」
「……もうそれいいから」
額を押さえながら喋るナルルスの横で、腰のポーチから折り畳まれた紙を出してくるポーリーナ。
リリーの目の前に出された紙に書かれていたのは……
『探し人』の文字だった。
「これ……は?」
「リリーは西方語……この国の文字は読める?」
「だ……大丈夫です」
ナルルスにそう答えると、上から目を通して行く。
一番上に、大きな文字で書かれていたのは『探し人』だったが、その下にあったのは似顔絵だった。
何やら、ストレートヘアの女性の姿が描かれていた。
リリーが目線を下に下げて行き……ピキリと音を立てて固まる。
「それ、裏の世界で出回っている。君の事?」
ナルルスの言葉が、何故か遠くから聞こえてくる様だ。
真っ青になった顔色のリリーが見ていたのは、似顔絵の下に書かれていた文字。
『名前:リリィ』
『特徴:黒髪、黒目』
『ユンロークス村、村長の息子の妻』
『経緯:黒い鎧姿の大男により連れ去られた』
何度見直してもそう書いてあった。
「えっと、リリー?」
ナルルスの問い掛けに答える事も出来ず、目の前が真っ暗になっていったリリーは、まるで電池が切れるが如く、ベッドへと仰向けに倒れていくのだった。