大騒ぎしてました
( へ;_ _)へ{更新速度が亀ですがお許しを
日が沈み、月が上がり始めた時間。
オルボア南部、大通りから一つ入った裏通りにある宿屋『白鳥の安らぎ亭』は、外に聞こえる程の大騒ぎだった。
通りを行き交う人々が、「何の騒ぎだ?」と疑問に思いながら店内を覗き込むと、何やら納得しながら去って行く。
「あぁ、今夜はあの娘が主賓か」
男性冒険者の一人が、中の様子をチラリと見た後、そう呟きながら去って行った。
ーーー
そんな大騒ぎの場はというと、奥に木箱で作られた壇上があり、その上にテーブルが一つ設置されている。
そのテーブルの上には、いくつかの食べ物が置かれ、それを一人の女の子が食べていた。
壇上の上で用意されていた椅子に座り、美味しそうに食べていたのは、薄緑色いワンピースを着たリリーだった。
「美味しい……です」
黙々と、デボラお手製ポテトサラダを食べながら、美味しいを連呼するリリー。
「まったく、カタリーナの所でもっと美味しい料理を食べて来たんだろ?何をいまさら」
そう言いながらも、満更では無い笑顔で料理の追加を持って来てくれるデボラ。
「デボラさんの……ポテトサラダは……絶品なんです」
「そりゃ大げさな」
「カタ……お母様の所のポテトサラダも……美味しかったんですが……少し塩辛かったので」
「あぁ~なるほど」
アフィレス家の料理には、高級な調味料も使っている為、リリーの口には少々合わなかった様だ。
特に、アフィレス家で出たポテトサラダは、主のジークレストの好みに合わせていた為、胡椒が効いた辛い物だった。
そんな二人の後ろの席では、剣士のレオナとピーアが、仲間である魔法使いのエッバを必死に押さえている所だった。
「うぅ……何で……リリーちゃんが貴族に……逆玉に」
「いやエッバ、それ違うからな。逆玉ってんなら貴族の嫁に行った場合で」
「レオナ、その言い方だとフォローになってないと思うんだが」
デボラに締め上げられた後、レオナ達も交えて何があったのか『根掘り葉掘り』聞かれたリリーは、話せる部分だけを説明したのだが……玉の輿を狙っているエッバには、どうにも歪曲した話が伝わった様だ。
「何で私には玉の輿が来ないのぉ~?」
「いや……だから、リリーは玉の輿に乗った訳じゃなくてだな。ってか、玉の輿ってのは来るもんじゃないだろ?」
「ピーア、もう諦めろって。コイツ酔っぱらって何も分かって無ぇ様だし」
何度もリリーの元へ突撃しようとするエッバを物理的に押さえる剣士二人。
そんな三人の隣のテーブルでは……
「やはり、リリーが無事だったのは、アリストレスティア様のお陰でしたわ」
そう言うと、目の前にあったエールをグイッと飲み干す修道士のケーテ。
「あらあら何を言ってるのかしらケーテちゃん。リリーちゃんが無事だったのはルルリアルリアルト様のお陰なのよ。そこの所分かってる?」
同じく、目の前にあったエールの入った杯を少しずつ飲みながらそう語ったのは、神官見習いのジルリオーネだ。
二人の信仰する三女神教は、別に互いに仲が悪い訳ではない……良くもないが。
そんな中で、この二人は何故か壊滅的に仲が悪い。
お互いに聞いても、相手の何が気に入らないのか分からないとの事。
ただ、仲間であるレオナにしてみれば
「あれは同族嫌悪。だが、本当に仲が悪い訳じゃないのさ」
とバッサリ切り捨てる程だ。
互いに気に入らないクセに、何故か一緒に行動する事が多い二人だ。
「流石ルルリアルリアルト様、信徒リリーの為にこれだけの事をして下さるなんて」
「何度も言うけど、リリーはアリストレスティア様の信徒なの!!ジル、貴女分かってる?!」
「まぁケーテ、口調が悪くなってるわよ~?」
「ぐっ!!」
互いにエール片手に言い合いをする二人。
他の女性冒険者達は、巻き込まれない様距離を置いて飲み食いをする。
このデボラが経営する『白鳥の安らぎ亭』では、年に数回、新人冒険者が難しい依頼をこなした際、お祝いと称して大騒ぎ、所謂『宴会』をするのが通例となっていた。
勿論祝う気もあるのだろうが、どちらかと言うと、この日の料理とお酒は無料になるので、新人から中級の女性冒険者達が、料理やお酒目当てにやって来るのだった。