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遠退いてました

短い話ですがお付き合いを


( へ;_ _)へ

冒険者ギルドのあった表通りから裏通りへと続く道を歩くリリー。

馬車一台が通り抜け出来る程度の道幅を左側に寄りながら、一歩一歩、ゆっくりと歩く。

その背後をまるで壁の様な大男が付き従う。

魔法生物である黒騎士だ。

黒騎士は、人気の無い周囲を見渡し、警戒しながら進んで行く。


「ねぇ黒騎士さん、聞いているの?」


人付き合いが苦手なリリーだが、黒騎士とはスラスラと喋れる関係だった。

祖父の作った魔法生物だからと言う理由もあるのだろうが、何度も身を守ってもらえた事も一因だ。

とはいえ、一切喋る事の出来ない黒騎士は、リリーの他愛ない話にただ頷くだけなのだが……


そんな裏道を歩いていると、前の方から人が二人歩いているのが見えた。

リリーがそれに気付き、フードを深く被り直すと、うつ向き加減に歩いていく。

すれ違いざまに「こんにちは」と挨拶をされ、慌てて「こ……こんにちは」と返答するリリー。

予想しなかった事で動揺したリリーは、大きく頭を下げる。

その際、フードの端から『黒髪』がチラリと見え隠れしたのだが、リリーは気付いていなかった。


男性二人は、笑顔を張り付けながらリリー達の横をすり抜けて行く。


「どうしたの、黒騎士?」


いつの間にか立ち止まっていた黒騎士に気付き、リリーも足を止め振り返る。

何も語れない黒騎士は、男性二人の姿が消えるまで、その場を動く事は無かった。



ーーー

リリーの目の前には、四階建ての建物があった。

二週間前まで寝泊まりしていた場所。


「戻って来たわ」


入り口から中に入ると、カウンターを拭いている大きな背中が見えた。


「あの……」

「あぁいらっしゃい、お泊まりか……い?!」


大きな背中の人物が振り向くと、リリーを見て動きを止める。


「あの……戻りました……私の使ってた部屋は……まだ残って?!」

「リリー!!」


フードを上げて掃除をしていたデボラに話しかけたリリーだったが、大きく広げた手に捕まってしまう。


「あぁ~リリー、あんた無事だったんだね。心配してたんだよ」

「ちょっ?!デボ……ラさ…ん!!」


デボラのその大きな胸に顔を挟まれるリリー。


「ぷはっ!!ちょっ……と……待っ……息が……!!」

「門番に聞いても分からないって言うし、ゲイルの所に行ってものらりくらりとするし、私は心配で心配で」

「……!!」

「ちょっとデボラ、何を騒いでいるの?さっさと拭き掃除を終わらせ、仕込みの方に回って下さらない?私一人にさせるつもり?」


厨房から顔を出して来たのは、黄色いワンピースに白いエプロンを着けたケーテだった。

ケーテは、リリーがゴブリン討伐に出た後も、デボラの元で店の手伝いをしていた。

最近では料理の腕前まで上がり、厨房を任せられる程だった。

そんなケーテが見てる先では、デボラが『お客』と思われる人物に『ベアハッグ』を掛けている光景だった。


「ちょっとデボラ、何やってんのよ!!」


ぎゅうぎゅうと締め付けるデボラの腕の隙間から、細い手足が力無く垂れ下がっていた。


「この馬鹿力、お客様を窒息死させるつもり?!」


そう言うとケーテは、壁に立て掛けておいた箒を持ち、デボラの背中をバシバシと叩く。

そんな音を聞きながら、『あ~、前にこんな感じの事があったような?』などと呑気な事を考えながら、リリーの意識は遠退いていったのだった。

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