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街中を教えてもらいました

今回は説明回です。

早朝の街中、二台の馬車が中央区に向かって進んで行く。

別に珍しい光景でも無い……ハズだった……普段であれば


「おい、あれ……」

「すっげぇ、マジかよ?」

「どうなってるの?」


街中からヒソヒソ話が聞こえる。

そう、二台目の馬車に注目しながら……


「もうすぐ到着なので、みんな我慢して下さい」


二台目の馬車の御者席に座るアベルが、一台目の馬車と周辺を歩く冒険者仲間に声を掛ける。

全員がうつ向き加減で進む中、異様な光景の元となった『馬車を引く黒騎士』と、その『左肩に座っている少女』には、容赦無い注目が集まっていた。

肝心の少女の方は……


「うわぁ~街だぁ~建物大きい~」


目をキラキラさせながら、街中を珍しそうに眺めている。


彼らは、門で少々問題を起こしたが無事街中に入る事が出来た。一番の理由は、冒険者ギルドからの使者による一時保証だったのだが……そのギルドの使者は


「入るのは構いませんが……出来るだけ騒動を起こさないように」


……っと、釘を刺すと、さっさとギルドへと帰って行った。

仕方がないので、そのまま街に入ると、中央区にある商人ギルドへと向かっていた。


ちなみに、門番とのやり取りで壊した武器に関しては、門番側の対応が悪かったと言う事で、兵士達の弁償となった。

一応、リリーが


「あ……あの……剣とか槍とか壊した物……弁償……します……から」


っと、小さい声ながらも主張したのだが……


「あぁ~お嬢ちゃん構わないよ、コイツらも悪かったんだし」


隊長のラドの一言で、彼ら新人の自腹が決定してしまったのである。


ちなみに、彼らの使う武器は量産品とは言え一つ銀貨50枚はするらしく、手持ちのお金が銀貨20枚しか無いリリーは、その金額を聞いた途端、真っ青な顔をしながら黒騎士の兜を叩きまくると言う行動に出ていた。



ーーー

周囲の奇異の目に合いながらも、街の中央区へと到着する。

真ん中に噴水があり、そこから東西南北へと大きな道が続いていた。


その北側の道、北西側に当たる角の建物が『商人ギルド』だった。

見た目は普通の木造三階建て、入り口周辺に、荷運び用の馬車が数台置いてあり、入り口の上には『稲穂と馬車を型取った』看板が掛けてある。

入り口から少し離れた場所に馬車を停めると、同行の商人が


「じゃあ、話をつけてきますので」


っと、軽い足取りで建物の中に入って行く。その間にアベルの仲間達は、馬車から馬の固定具を外し、建物裏へと引いて行く。

それを見ながら、リリーは溜め息をつく。


「疲れたのかい?」

「え?えぇ……少し」


アベルの声にびっくりしながらも、リリーは周りを見渡す。

石造りの土台に木造の建物と言うシンプルな作り、通りの面に並ぶ建物は、全て同じカラーで統一されていた。

土台の石、白い壁、赤茶色の屋根瓦、建物の高さはマチマチだが、同じカラーのせいか、不思議と街全体が統一されているように思えた。

田舎の、作りも何もかもバラバラな村に比べて、なんて計算された美しい建物なんだろうと、リリーは感動していた。


「そうかい?昔から住んでると、これが普通だと思うんだが?むしろ、田舎の方が個性的な建物が多くて凄いと思うけど」


アベルが不思議そうな顔で答える。



ーーー

商人が戻って来るまで、アベルから街の事を聞く事になった。


まず、今居る場所が『商人ギルド』旅商人が登録する事で、馬車の貸し出しや手に入れた商品の卸売りまで一手に引き受けてくれる。

勿論デメリットも有り、馬車等を損失すれば最低限の保証はしなければならないし、ある一定以上の貢献……売り上げが無ければ追い出されてしまう。


道を挟んで北東側角にあるのが『鍛冶ギルド』だ、入り口には『二本のハンマーをクロスさせた』看板があった。

「鍛冶ギルド」はその名の通り、武器や防具の販売、作製、更には鉱石などの買い取りを行っていた。

又、特殊な素材を持ち込む事で、専用の装備品を作ってくれる。

しかし、当然ながら特殊性が上がれば上がる程、金額がはね上がってしまうと言うジレンマに陥る事もある。


同じく、道を挟んで南東側角にあるのが『魔法ギルド』、『三本の杖をクロスさせた』看板を掲げている。


「えっと、リリーちゃんは『魔導師』だったっけ?」

「え?えっと、魔道具師の方……です。でも、魔道具作りは苦手で……」


この世界では、魔導師の名称には二つのタイプがある。一つは『魔法を極め、弟子を取り導く魔法使い』宮廷魔導師がこのタイプに当たる。もう1つは『魔道具を作り、人々の生活を導く魔法道具作製師』であった。

一部の人々は『魔道具師』と揶揄する事もある。


リリーには、『魔道具師』の名称が、自分達を虐げてるモノとは知らなかったのだが


「うっ……うん、何かゴメン」


アベルは意味合いを知っていたので、揶揄されたと思ったのかもしれないと謝罪を口にするのだが……


「?」


リリーはキョトンとした顔をするだけだった。


「え~魔法ギルドは、魔法都市オードナルドが中心となって運営されているんだ」

「へぇ~」


魔法都市オードナルド、魔法使いの為の学院があり、聖王国内から優秀な人材を集めて教育している場であった。

そして、魔法ギルドは、学院生の実習の場を斡旋したり、マジックアイテムの鑑定や買い取り等も行う組織であった、ただ……


「あまり、開放的な組織じゃ無いから、用が無い限り近寄らない方がいいよ」


魔法使いには、エリート意識の高い者が多く、一般人とのイザコザが多い事でも有名だった。


そして商人ギルドの南側、道を挟んだ南西の角の建物が『冒険者ギルド』であった。

建物入り口上には、『剣を中心に、槍とハンマーをクロスさせ、後ろに盾を刻んだ』看板が掲げてられていた。


「あそこが僕達、冒険者のギルドだよ」

「へぇ~」


アベルの指さす方向を見る、冒険者と思わしき人々が、早朝から足早に建物の中へと入って行く。


「この時間だと、早朝の依頼書張り出し時間だから混むんだよ」

「依頼書張り出し?」

「うん、良い依頼程、早めに無くなっちゃうからね」


なるほどっと頷くリリー、さっきから見ていると、いかにもベテランと思われる人達が足早に入って行く。


「こっちが終わったら、冒険者ギルドに行くから、もう少しだけ待ってくれないかな?」

「あっ、はい……私は大丈夫……です」


うんうん、昨日より大分馴れてくれた様だし良かった。

そう安堵するアベルだった。

次回からドタバタ回にする予定です。

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