意地悪されてました
しまった、グダグダ回になってしまった?!
Σ(=Α=;{なん……だと?!
右手でポーチを持ち上げ、オロオロしながらテーブルの上に戻す、そんな謎行動を繰り返すリリー。
「おい小娘、何やってんだよ?」
呆れた口調のゲイルの言葉に『はっ』と我に帰ると、真っ赤な顔をしてうつ向く。
「いえ……あの……報酬にしては……多過ぎで……す?」
「あぁ?!何言ってやがる。これでも少ない方だ。大体、お前の回復でどれだけの奴らが救われたと思ってやがる?」
「でも……」
リリーとしては、大した事はやっていない、むしろ邪魔になっていたのではないか、そう思っていた。
一緒に戦っていたベンノ達の様に前線に立っていた訳でもなく、後方でスキルを発動していただけ。
もっと言えば、黒騎士が駆けつけなければ食い殺されていたハズだ……と。
「あ~お前が何を思ってようが関係無ぇ。これらは『今回参加した冒険者達が納得の上の報酬』だって事だ」
「……えっ?」
ゲイルの言葉に顔を上げるリリー。
「お前は過小評価し過ぎだ。お前の回復は、俺達の役に立った。本当なら、もっと被害が出ていたハズだ。お前はそれを防げたんだ。もっと胸を張れ」
「ギルドマスター……」
ニヤリと笑うその顔は、どう見ても悪人顔なゲイルだったが……
「ふむ?まあ……張る胸が無い様だがしょうがないか?」
「?!」
リリーの胸元をジロジロ見ながらそう答えるゲイルの視線に、胸を押さえて抗議する。
「へ……変態……です!!」
「あぁ?!ガキが一人前な事言うんじゃねぇよ。せめて、もうちょっと肉を付けてだな」
「失礼しますギルドマスター、追加の書類をお持ちしました」
ゲイルが自分の胸の辺りを持ち上げ、女性の肉体について講釈しようとした瞬間、部屋の扉が開き、左手に書類の入った箱を持つジーンが入って来た。
何故かその視線は、やけに冷たいモノだったが……
「お……おう、そこに置いといてくれ」
「はい、分かりました」
姿勢を正したゲイルは、ジーンが部屋から出て行くまで冷や汗を流しながら待っていた。
扉を閉める瞬間、鋭い目線が飛んで来たが、ゲイルは敢えて目線を反らし、窓の外を見る。
『パタン』と扉が閉じる音と共に、体がずり落ちていく。
「あ、危なかったぜ……」
「……ジーンさんが……何か?」
「ジーンにスタイルの話はご法度なんだよ」
「……?」
「あ~、『若い』お前さんじゃ分からねぇだろうがな……言っとくが、ジーンに聞くなよ、いいな?」
「……はぁ」
何故か必死になるゲイルの剣幕に圧されたリリーは、それ以上の追及を止めた。
なんと姿勢を戻したゲイルは、リリーの前の袋を指差す。
「取り敢えず、そいつの説明からだ。使い方は分かるか?」
「え……えぇ、一応は……」
「そのマジックポーチは、一つにつき一種類の代物を収納出来る。収納出来る量に関しては……まぁ、この部屋程度かな?」
「?!」
ゲイルの居る部屋、ギルドマスター用の執務室はそれなりに広い。
馬車の一台は入るだろうスペースだ。
「言っとくが、この程度の代物なんざ安い物なんだからな」
その内容に唖然とするリリー。
四~五メートル四方の空間分あるマジックポーチの性能に、ただただ驚くしかなかった。
「俺が常時使っている袋なんざ、十種類まで入る上、容量はこの袋の百倍だからな」
「は……はぁ?!」
そう言いながら、自らの腰にあるポーチを軽く叩くゲイル。
恐らく、あれがそうなのだろう……と、そう思うと、もはや考えが追い付かなくなっていた。
リリーの前にある次元収納袋でさえも、金貨何十枚になるか分からない代物だ。
それよりも容量が大きく、さらに複数入るとなると、金貨どころかそれ以上、白銀貨と呼ばれる硬貨での取引となるだろう。
ちなみに、銅貨千枚で銀貨一枚、銀貨千枚で金貨一枚、金貨千枚で白銀貨一枚の計算になる。
白銀貨など、大国同士の取引ぐらいにしか流通はしていないとされている。
極希に、太古の遺跡から出て来るとの噂もあるが、あくまでも噂の類いだ。
「使い方が分かってるなら話は早ぇ、次に右の袋だが、銀貨千枚入ってる」
ぽろりとリリーの手から袋が離れ、テーブルの上に落ちる。
「ぎ……ぎぎぎ……銀貨……千枚……」
「落ち着け小娘」
ポンと頭を叩かれたリリーは、震える声で『千枚』を口の中で繰り返す。
銀貨一枚でも大金のリリーにとって、千枚もの銀貨の価値に、ただただ狼狽えるだけだった。
「おっと、こっちも忘れる所だった」
そう言ったゲイルは、リリーの目の前に五枚の銀貨を並べる。
「少ないが、これはギルドからの報酬」
「いやいやいや……ちょっと待って……下さい。何で……銀貨五枚も……いえ、それ以前に……銀貨千枚って……」
「まぁ落ち着けって。そうだな、その銀貨千枚は『オルボア領主』、この五枚は『冒険者ギルド』、で、袋は『俺個人』からの報酬だ」
「内訳……おかしい!!」
テーブルをペシペシと叩きながら抗議するリリーだが、そんな事『何処吹く風』とばかりに無視して話を進めるゲイル。
「で、真ん中の袋だが」
「私の話を……聞いて……下さい」
「中には書類が入っててだな」
「聞け……この……髭ダルマ!!」
部屋の中では、ペシペシペシペシと乾いた音が鳴り響く。
リリーの叫び声に対して、ゲイルは『意地の悪い笑顔』で対応するのだった。
もっと話を簡潔に出来る様にしてきます。
; ´△`){精進せねば……