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報酬をもらってました

はい、続きです。

( へ;_ _)へ

首から下げた銅プレートを胸元に入れ、髪の毛を整えるリリー。

そこでふと気になる事があった。


「あの……何故クロノ兄は銀で……私は銅プレート……なんでしょう?」


リリーと黒騎士は、ほとんど一緒に居たはずだった。

ならば、同じプレートになっている……と思っていたのだが。


「あ~、その件なんだが……その……な。それが二つ目の要件って言うか何と言うか……」


いきなり『しどろもどろ』でハッキリとしないゲイルに『こてん』と首を傾げるリリー。

しばらくすると、ため息を一つ付き


「すまん」


と、頭を下げるゲイル。

いきなり目の前で頭を下げられて、逆にオロオロとするリリー。

いくら『ガサツで苦手な人物』であっても、こんな態度を取れては、リリーも困惑するしかなかった。


「あの……いきなり何……でしょう?」

「今日呼んだ本当の理由……って言うかだ、俺の方の本題はそのプレートの件だ」

「本題?」


余計に分からないと首を傾げるリリー。

疲れた顔をしたゲイルが


「あ~小娘、ゴブリン討伐に関する街中での噂話は知ってるか?」


と話出す。

ゴブリンに関する噂と言えば、例の事が思い浮かぶ。


「えっと……もしかして……帝国から来たって言う神官……ですか?」

「あぁ、それだそれ」


額に手を当てながら、うつむき加減のゲイル。


「その噂の件で……だ。お前の銀プレートへの昇進がお流れになった」

「……はい?」


キョトンした顔のリリー。

『帝国から来た神官』の噂話とリリーの銀プレートがどう繋がるのか分からないからだ。


「まぁ、簡単に説明するがな……今回のゴブリン討伐に女性が参加してたってのは……いろんな所に広まっちまってる」

「はぁ……そうなんですか?」

「そうなるってのは予想通りだった……その場合、責任は『俺がギルドマスターを辞める』事でケジメを付ける……となる予定だったんだが」

「……ケジメ?」

「そうだ。俺が『独断で女性冒険者を連れて行った』とする事で、批判は全て受ける……ハズだった。ところがだ、何処からともなく『帝国の女性神官』ってのが出て来やがった。しかもそいつは、オルボアの冒険者ギルドとは関係無しに行動した……ってなっちまってる」

「……」

「ここで俺が『いやいや、実は俺の所の冒険者ですよ』なんて言ったらどうなる?」

「……余計混乱しそう……ですね?」

「するんだよ、しちまうんだよ。それどころか、オルボア領主からも問い合わせが来ちまったんだよ。参加したって言う『帝国の神官』の情報が欲しいってな」


額を押さえたゲイルが、ソファーの背もたれに寄りかかり、大きなため息を付く。


「まぁ、百歩譲ってオルボア領主……バルトルトのヤツだけだったら何とでもなる。アイツとは昔馴染みだからな。問題なのは王国……国王の方だ」


バッと体を起こすと、少し怒り気味の表情になる。


「何だか分からねぇが凄ぇ食い付きで『帝国の女性神官』の件を聞いて来やがる!!どんな人物だったのか!!顔はどうだったか!!使った魔法は何だったのか!!歳は!!見た目は!!そんなもん、知るかってんだ!!」

「あ……あの……」


ストレスが溜まっているのか、怒りのまま喋るゲイルに引き気味のリリー。


「王都から来た騎士やら貴族やらが、『一緒に戦ったのなら知ってるのだろ?』とか聞きに来やがったが、こっちの知らない所で広まった『噂話の女性神官』の事なんざ分かる訳無えってんだ!!」

「えっと……ギルマス……?」


肩で息をするゲイルにオズオズと話掛けるリリー。

そこで、ふと我に帰ったゲイルが頬を掻く。


「あ~、すまん、当たり散らしちまったか。最近色々あったせいでな」

「い……いえ……」


噂を流したのがカタリーナだったとしても、実際、その噂を流す切っ掛けになったのがリリーだっただけに、心苦しくなったのだが……


「まぁあれだ、こんな状況でお前に銀プレートを渡しちまったら『もしかしたら噂の神官なんじゃないか?』って疑問を持たれるかもしれねぇだろ?だからお前……『リリアーナ・アフィレスはゴブリン討伐に参加していなかった』って事になっちまってるんだよ」

「な……なるほど……」


『参加していない事になっている、だから銀プレート発行は出来ない』話としては理解出来たが……


「とは言え『はい、そうですか』ってはならねぇよな?お前としても」

「……」


それは当然だろう、リリーは実際参加した上、死にかけたのだから。


「で……だ。その分の報酬を別で出そうと思ってる」


そう言うとゲイルは小さな袋を三つ、リリーの前に置く。

何の変哲もない20センチ程度の小袋。


「開けてみるといい」


ゲイルの言葉に従い、右側の小袋を持つ。

中身が入っていないかの様に軽い小袋の口の部分の紐を解き、中を覗き込む。

内部は真っ暗で底が見えなかった。


「?」

「手を突っ込んでみな」


ゲイルの言葉に、恐る恐る手を入れてみると、何か硬い物が指先に当たる。

それを掴み、ゆっくり引き出してみるとそこには……銀貨が一枚掴まれていた。


「?!」

「どうだ、驚いたか?」


まるで、イタズラが成功したとでも言いたげなゲイルのニヤニヤした顔があった。


「これは……いったい?」

「マジックポーチ、所謂『次元収納袋』だ」


その言葉に目を大きく見開くリリー。


マジックポーチとは、ロストアイテムと呼ばれる代物だ。

太古の昔、『大魔法使い』とも『大賢者』とも呼ばれた人物が作ったとされるマジックアイテムだ。

だがその死後、彼が作ったとされる魔法の殆どが消失。

大量のアイテムを収納出来たとされるマジックポーチの類いも、世の中に出回っていた分以外は手に入らなくなってしまっていた。

ロストアイテムの類いには、他にも『蘇生ポーション』や『再生ポーション』、『大規模破壊魔法』や『特大広範囲魔法』等、今の時代とは比べ物にもならない物がある。

噂では『高位のドラゴンが守るお宝の中にある』とまで言われているが……そんな代物が今、リリーの目の前にあった……それも三つも。


「そのマジックポーチ三つをお前の報酬とする」


ゲイルの言葉に、リリーは固まって答える事が出来なかった。

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