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黒騎士は行動している様です。その2

仕事が始まる前に書き書き


(´・ω・){見直し?後でしマッスル

急に動きを止めた情報屋に、怪訝な顔を見せていた暗殺ギルドの面々だったが、それもほんの僅か。

三人共、腰の辺りに隠していたナイフに手を伸ばしながら、素早く振り向……こうとして、その姿を消した。


真ん中にいた暗殺ギルドの者と情報屋は、両隣にいたハズの者達が、一瞬で視界から消えた事に驚愕した。

一呼吸置いて情報屋の後方、狭い路地から『べちゃり』と何かが潰れる音が、複数聞こえてくる。

それが何なのか、確認する間も無かった。

一人残った暗殺ギルドの者は、最早身体半分が後方を向いている。

既に逆手に構えられたナイフは、黒い鎧の首元へと動いていた。


()った』


情報屋には首筋を切られる『黒い鎧の男』を想像したが、そうはならなかった。

情報屋の目の前から、暗殺ギルドの『最後の一人』が消えた。


「えっ?!」


そう呟いた瞬間、後方で『べちゃり』と男が聞こえる。

目の前で黒い鎧の男が、ゆっくりと突き出した右拳を引き戻すのが見えた。

つまり


『拳で三人の男を吹き飛ばし……た?!』


黒い鎧の男がこっちを見る、『次はお前だ』とでも言う様に。


「うっ、うわあぁぁー」


情報屋の男は逃げた、大通りの人混みの中へ。

朝の市場だった事から、たった数歩進むだけで人の中に紛れ込む事が出来る。

これが、情報屋が交換場所に市場を選ぶ理由だった。

決められた符丁であれば、他者に知られる事も無い、もし、捕まりそうになっても、人混みに紛れ込めば逃げ切れる。


「くはっ……はっ……はっ………………はぁ~」


息を切らせて人の間を抜いながら、少しずつ息を整える。

息も絶え絶えに人混みを走り抜け様とすれば『追われたるんです』と宣伝する様なものだ。

だから彼は、息を整え周囲の一般人の中に溶け込もうとする。


『もう少し行けば『抜け道』に出る。そこから迂回して盗賊ギルドに逃げ込めば……』


冷静に、これからの進路を考えていると、進む先、市場の切れる交差点部に何かが立っていた。

息を飲み、目を見開く。

先程、出し抜いたハズの黒い鎧の男がそこに立っていた、交差点の真ん中に。

道行く人々は、まるで目に入っていないかの様に避けて行く。

そんな異常な世界で、黒い鎧の男目線は、一直線に情報屋を見ていた。


「ひぃっ?!」


一瞬でパニックを起こした情報屋は、人を押し退けながら、裏通りへの細い道に入る。

押された人々が非難の声を上げるが、そんな事は関係無い。

ただただ、この場から逃げる事だけをかんがえる。

裏通りに入り、左右を見れば、右に大きな人影が見える。

誰かを考える前に左へと走る。

走り抜けると、そこは裏通りより広い道、そして今度は、左に大きな人影が見える。

すぐに右へと走る。

後ろは振り向かない、右へ、左へと全力で走る。

人が通り抜け出来そうもない通路を無理やり通り抜ける。


気が付けば、周囲は段々と寂れた雰囲気になっていく。

スラム街まで来た事に気付き、今度は、建物の中を通り抜ける。

扉すら無い、崩れかけた建物内部を突っ切る。

途中、住み着いてると思われる人々を視界の隅に捉えながらも走り抜ける。

玄関と思われる所から入り裏口へ、すぐに隣接する建物の裏口から入り、横に見える窓を越えたりと、出来るだけ道に出ない様に動く。


三階建ての建物、恐らく昔は宿屋か何かだったと思われる廃墟の一階。

何とか形を残しているカウンターの裏に、情報屋の男は身体を小さくして隠れていた。

スラム街に入ってからは『黒い鎧の男』の姿は見ていない、だが、警戒は怠らない。


『確か……もう少し南側に地下道への入り口があったはず』


このオルボアの街の地下には、下水道が完備されている。

元は遺跡の類いだったらしいが、探索後に新たな発見が無かった事から、ある程度整備し、地下の下水道として利用していた。

貴族や金持ちは、それそれの家から直接排水出来る様になっているが、一般の家では、地下へ流す為の処理場が、所々にある。

ここも、スラム街になる前は、一般人が住んでいた為、処理場がいくつか存在していた。

彼ら情報屋の様な『裏家業』の者達は、いざと言う時の逃走経路に、この地下道を使う事がある。

モンスターが住み着いている為、安全とは言い難い場所だが……


入り口側を警戒しながら、裏口に向かってゆっくりと後退りする。

物音一つ逃さない様集中しながら、逃げる経路を頭に思い浮かべて……そして


『とん』


と、背後が何かにぶつかる。


『壁?位置を間違えたか?いや、そんなハズは』


後退りする前に背後の確認はした、裏口の位置も確認した、下がる方向も把握した、なのに


「背後に硬い……これは?!」


ゆっくりと振り向く情報屋の目に写ったのは、自分の頭上へと拳を振り上げる『黒い鎧の男』の姿だった。



ーーー

埃っぽい建物の一角に、肉片が散乱していた。

床には赤黒い染みが広がりつつある。

それらを一瞥すると、黒騎士は、天井に向けて拳を振り上げる。

空気の塊が、脆くなった天井に当たり、大きなひび割れを起こして崩れてくると、肉片と赤黒い染みの上に落ちてくる。

スラム街に建物が崩れる音か響くが、住人は誰も出てこない、

この辺りの不法に住み着く住人にとって、捨てられた建物が崩れるなど、日常茶飯事だからだ。

裏手から、建物の半分が瓦礫の山となった廃墟を背に、黒騎士は動きだす。


彼の目的は、『リリーを守る』事。

その為、日頃からベッティーナ邸周辺を警戒し、怪しい動きをする者がいないか、調べていた。

黒騎士が情報屋を見つけたのは、ただの偶然だった。

ほんの一瞬、リリーが居る部屋に視線を向けた、それだけだった。

黒騎士は、気配も音も無く情報屋を尾行した。

そして、彼がリリーの事を調べている事を突き止める。

目的までは分からないが、『リリーを調べている』、動くにはそれだけで十分だ。

そして、おあつらえ向きにも人気の無い場所へ逃げ込んでくれた。

そして黒騎士は動き出す。

一切の躊躇も無く。

それが、『彼が命じられた使命』だから。

魔法生物でもある黒騎士が命じられた使命


『世界を敵に回しても、リリーを守れ』


彼は忠実に守る。

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