ドレスアップしてました
短いですがお付き合い下さい。
( へ;_ _)へ
外は夕暮れ時、浴槽から上がり、身体をミラーナ達に拭き取られながら、リリーはため息をつく。
ジークレストが出て行った後、カタリーナの見てる前で、歩行訓練を続ける事となった。
ミラーナが『あんよは上手』と声を掛ける度に、カタリーナの笑顔がリリーの心に突き刺さる。
『お願いですからそんな目で見ないで下さい』
顔を真っ赤にしながら歩くリリーを微笑ましく見守るカタリーナ。
結局、夕方になるまでカタリーナ付きのまま歩く練習をする羽目になる。
お風呂で汗を流すと、裸のまま衣装部屋へと連れて行かれる。
これもまた、リリーにとっては恥ずかしい事だ。
衣装部屋に入ると、ミラーナ達が素早く用意を始める。
下着と肌着を着せ、見た事のある白いドレスを広げる。
リリーが、社交界で着るハズだったドレスだ。
社交界でのクルト王子とのドタバタで、汚れたり破れたりしていたのだが、貴族御用達針子でもあるハンナが
「汚れもほつれも全て直しておいたわ」
と言いながら、リリーへとプレゼントして来たのだった。
生地は高級な上、スカート部分には重し用の宝石が下げられており、どう見ても高価な代物だ。
『それを貰うなんて』と言ったのだが……
『宝石は等級の低い安物よ?それにこのドレス、リリーちゃんサイズだから、他の娘には合わないのよね』
「うっ……」
ハンナにそう言われてしまい、迷った挙げ句、貰ってしまったのだった。
そのドレスに袖を通し、髪の毛を整えてもらう。
腰に縫い付けられていたリボンは取り払らわれ、腰帯の様な大きなリボンを巻き付けられている。
このリボンは六色有り、日替わりで巻き替える様になっている。
最初の赤以外の色は、ベッティーナ達からのプレゼントだ。
「ハンナ様がドレスを贈るなら私達も」
と言い出したせいなのだが……
「リリーお嬢様、今夜は青色でどうでしょう?」
「……お任せします」
ミラーナに力無く答えるリリー。
着飾られる事に慣れていないリリーだが、貴族の屋敷での食事となれば仕方がない事。
そんな諦め顔で着付けされていく。
ーーー
着付けが終わったリリーは、ゆっくりとした足取りで部屋を出る。
場所は一階、今のリリーには、かなり遠い場所だ。
途中で壁に寄りかかって休息しながら、目的の場所へと到着する。
大きなテーブルを前に、ミラーナが案内しようとするが
「私は……こっちで」
入り口左手の下座に当たる椅子へと座る。
「リリー様、そちらは」
「お願い……ミラーナ……」
そう懇願されてはミラーナも強くは言えず、リリーの後ろ側へと下がって行く。
暫くして部屋に入って来たのは、ジークレストとカタリーナだ。
部屋に入ると奥の方に座るリリーへと目を向ける。
「リリー、何故そんな所にいるのかしら?」
目覚めた日から、カタリーナはリリーの事を『さん付け』しなくなった。
それは、アフィレス夫人として接しなければならない為だ。
事前にリリーにそう伝えていたのだが、リリーにしてみれば『元々さん付けして欲しくなかった』訳で、断る理由もなかったのだが……
「いえ……その……私はここで」
「こちらにいらっしゃい」
手招きするカタリーナの指差す所は上座近く。
本来なら、次期当主や前当主等、地位のある人が座る位置だ。
「そんな……私はここで」
「リリー」
笑顔だが、有無を言わさないと目で語るカタリーナに負け、リリーはゆっくりと席を替える。
チラリと見れば、右手側上座にはジークレスト、リリーの目の前にはカタリーナと、胃の痛くなる配置だ。
「うぅ……」
思わずお腹を押さえてしまうが
「そんなに緊張しなくても良いのよ?」
そんなリリーの様子に、カタリーナが優しく問いかけるが
『無理です、だって……』
ジークレストが笑顔でリリーを見ている……その目の奥の光は、何とも言えない色をしている……気がするのだが
「ジーク、貴方が威圧するからリリーが怖がっているわ」
「ヒドイ言い様だなカタリーナ、私は何もしていないぞ?」
軽口を言い合う二人だが、当事者たるリリーには冷や汗モノだった。
『早く動ける様になって此処から出ないと……』
テーブルの下で『ぎゅっ』と拳を握り締め、改めて思い直すリリーだった。
年末進行により仕事が満杯です。
もう片方のショート話を先に終わらせる為、こっちが止まり気味ですが、出来る限り早めに出して行く予定です。