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そんな話は聞いてませんでした

投稿が遅れて申し訳ありません。


( へ;_ _)へ

リリーは月明かりの差し込む部屋で、ベッドに横たわりながら、昼間の話を思い出す。


「八日後、私達は領地に戻る」


リリーの部屋に来たジークレストは、微笑みながらそう口にした。



ーーー

本来騎士伯は、領地を持たない者が多い。

それは、騎士伯と言うものが、この国では『戦いによって手柄を上げた者』にのみ贈られる称号だからだ。

城仕えの文官の場合、内政や外交で何かしらの手柄を立てると『男爵位』を授けられる。

この国の男爵位は一代限り。

騎士伯は三代まで受ける事が出来る。

三代目以降の騎士伯は、何か手柄を立てなければならないが、大体は、その時期に帝国との戦いが起こる為、現状維持となるのが普通だ。


アフィレス家は、先代当主ジークレストの父親の時代に辺境での『反乱軍との戦い』に参戦し、奇襲を受けた本隊を助けた功により、さらに三代後の騎士伯就任が決まっていた。


そのアフィレス家現当主ジークレストは、今回の社交界パーティー参加の為に、オルボアへと来ていた。

予定では既に領地へと戻っているハズだったのだが、ゴブリンの大発生によりオルボアから出る事が出来ずにいたのだった。

そして今、オルボアも落ち着きを取り戻した事により、それぞれの地域から来ていた貴族達か帰り始めたのだ。


アフィレス家の領地は、かなり小さいが、山裾に広がる大地と綺麗な水資源によって、それなりに発展している場所だった。

その領地から最近、帰還を促す手紙が毎日届いていた。

曰く『そろそろ帰って来てもらわないと、溜まった仕事の量が……』っと言う、部下からの懇願だった。


急ぎの内容に関しては、書類を早馬で送る等の手段を使っていたのだが、さすがに本人が直接と言う内容には対応仕切れず、結局早めの帰還をとなったのだった。


アフィレス家の領地は、オルボアの北、直線距離で三日程の位置だが、途中にある大きな森の為迂回をしなければならず、馬車での移動で一週間は掛かってしまうのだった。


ジークレストとしても、カタリーナの社交界参加の為に来ただけなので、早く帰りたい所なのだ。



ーーー

子供の様な笑顔を張り付けたまま


「既にカタリーナから聞いてると思うけど、彼女は君に一緒に来て欲しいと言ってるんだよ。もちろん、私としても反対はしないがね」


そう語るジークレストだが、その目の奥は笑っていない。

彼はまだ、リリーの事を知らずにいる。

リリーが起きて三日、こうして会話をするのは二回目となる。

アフィレス家の当主としては、何処の誰とも知らない人物を そう簡単に信じる訳にはいかなかった。


『カタリーナには悪いけど、残りの日々、君の監視は強化させてもらうよ』


そんな事を思っているとも知らず、リリーは顔を伏せているだけだった。

リリーの頭の中では、思考がグルグルと回っていた。

っと言うのも、アフィレス家の領地行きなど全然聞いて無かった事だからだ。

だからこそ、ジークレストの言葉に思考が追い付かず、唖然とするしかなかった。


『私がカタリーナ様と?えっ、何処へ行くの?話?何の?』


ジークレストの目の前でオロオロするしか無かったリリーだったが、その瞬間


「ジーク、こんな所で何をしてるのかしら?」

「ん、カタリーナ?」


ジークレストの後ろには、いつの間に来たのかカタリーナが立っていた。

その後ろには、初老の執事が控えており、ジークレストを睨み付けている。


「旦那様……」

「うっ、トータス、何故ここに?」

「それは此方のセリフです。急に執務室からいなくなられるから心配しましたよ」

「いや、それは……だな」


老執事が早足で近づくと、ジークレストの左腕をしっかり掴み、そして


「ま、待てトータ……いでででで!!」

「あの書類は『今日中』にサインしないとダメなモノだと、ハッキリ申したハズですが?」

「痛い、トータス折れる、それ以上捻られたら左手折れる!!」


その細腕にそれだけの力がある様には見えないが、トータスと呼ばれた老執事は、現役騎士でもあるジークレストの左腕を背中側に捻り上げていた。


「分かった、戻る!!話が終わったらすぐ戻るから」

「今すぐ戻って下さい」


ジークレストとトータスのやり取りを カタリーナはニヤニヤしながら見ているだけ。

その様子に思わず


「あの……執事さん……その……どうかその辺で……」


オロオロしながらも、トータスに懇願するリリー。

その姿に、一瞬唖然としたトータスだったが、


「旦那様……この様な少女を(たぶら)かすのはよろしい事とは言えませんが」

「お、お前は私を何だと思ってるんだ?!」


トータス自身、リリーの事は聞いていたが、この状況で、ジークレストを庇うとは思ってもいなかった。

だからこそ『誑かした』と思ったのだが


「あの……そのままだと……本当に手が折れてしまいますから……その……」


どうやら『本当に折れる』と思い、止めようとしているのだった。

少し考えたトータスは、『はぁ』と大きなため息を付き、ジークレストの左腕を離す。

肩を擦りながら立ち上がるジークレストに


「命拾いしましたね?」


っと、それはとても良い笑顔を向けてくる。

さっきまでのジークレストの『作り笑い』と違い、本心からの笑顔だった。


「はぁ……分かった分かった、さっさと戻るから」

「是非そうして下さい」


渋々と言ったジークレストは、ゆっくりと椅子から立ち上がると、リリーに向かって軽く手を振り


「助けてくれてありがとう、また夕食時に」


そう声を掛けて出て行く。

その後ろをトータスが影の様に付き従う。

トータスも、部屋を出る際にリリーへと深々と頭を下げていく。

そんな嵐の様なやり取りに、リリーは呆然とするしかなかった。

つ……次こそは早めに


ω・)ノシ

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