練習していた様です
全然進まない日常回。
(;´д`){どうしてこうなったし……
リリーが目を覚ましてから三日が立った。
その本人はと言うと……
「リリー様、その調子です。はい、あんよは上手、あんよは上手」
「み……ミラーナ……その掛け声は……止めて……」
震える足で一歩一歩、部屋の中をゆっくり歩いている所だった。
ーーー
カタリーナの追及の後、医者の診察を受け
「ふむふむ、やはり若いせいか回復が早いですな」
っとの一言がかかり、食事の解禁と運動をする事が決まってしまった。
食事に関しては、アフィレス家の料理人が、じっくり一日煮込んだ野菜スープを運び入れてくれた。
一口飲むと、たっぷりと溶け込んだ野菜エキスの旨味に、思わず涙を流したリリーだった。
その後は医者からの『適度な運動をして体力を回復させる様に』を実践する為、まずは手を持ち上げる所から始めたのだった。
お昼に、スープにパンを削り入れた『リゾットモドキ』を食べ、少しずつ体力を戻しつつ身体を動かす。
夕方には、汗だくになりながらも長椅子にグッタリとする。
そんなリリーを ミラーナと先輩メイドであるレンカが浴槽へと運んで行く。
身体の自由が利かないリリーは、浴槽の中で身体を強張らせるのだったが、ベッティーナ家のメイドと違いカタリーナ家のメイドは、事細かく身体を磨く様な事はしなかった。
言い方は悪いが『乱雑』とでも言うべきか、ささっと洗い流す感じであった。
乱雑であっても、しっかり汚れを落としてもらい、ゆったりと湯船に浸かる。
風呂から上がると、全身を拭き上げられドレスアップ。
カタリーナ達と一緒に夕食を取った後、就寝となる。
これが、この三日間のリリーの毎日の日課になった。
朝起きて朝食、医者の診察後、手を動かす訓練として、編み物と字を書く練習。
昼に軽食を食べ、一休みしてから歩行練習。
夕方、風呂に入り身体を洗い流すと夕食を食べ就寝。
ちなみに、朝と昼はカタリーナ達も忙しい為一緒には食べないのだが、夕食だけはどうしても一緒に食べたいと、カタリーナからのお願いだった。
ーーー
広い部屋を既に何往復したか分からないが、額に汗を浮かべながらリリーは椅子にペタリと座り込む。
「お水をどうぞ」
丁度良いタイミングで、ミラーナがコップを差し出す。
「はぁはぁ……あり……がとう……ミラーナ……はぁ」
震える手でコップを受けとると、ゆっくりと口へと運ぶ。
適度に冷した水が、喉の奥へと流れて行く。
この三日間で、立って歩く事まで出来る様になったのは、実の所『若い』と言う事だけではなく、スキル『再生』が上手く発動しだしたからでもある。
ーーー
この世界のスキルは、本人の意識に関係してくる。
当たり前の事だが、『気を失えば、どんなスキルも発動しない』のである。
オマケに、リリーが十日間も寝込んでしまったのは、スキルと魔力を併合して使うやり方のせいでもあった。
通常スキルは、無意識の領域で使われている。
しかしリリーの場合、それを自分の血を媒介に、他者の身体を『自分の身体の一部』と誤認させ、魔力で無理やり繋げるやり方をしていたのだ。
どれだけ大きな魔力持つ者であっても、消費は激しい。
決められた量しか入っていないガソリンタンクに、常時全開で動くエンジンを取り付けた様なモノだ、
どれだけ大きくても、いずれは空になる。
リリーの場合、オルボアの街を出る前から魔力を垂れ流していたのだった。
結果、一日と持たずに魔力切れを起こし、回復まで十日間も寝込む羽目になったのだ。
そして今、魔力が回復した事により目が覚め、再生スキルが発動し始め、歩ける様になったのだった。
とは言うものの、衰えた筋力だけはどうにもならず、地道に鍛えるしかないのだが……
ーーー
一休みしている部屋に、『コンコン』と扉をノックする音が聞こえる。
誰が来たのかと顔を見合わせるリリーとミラーナの前で、ゆっくりと扉が開いて行き、そこには……
「やぁ、頑張ってる様だね」
やけに『爽やか』な笑顔を張り付けた男性、アフィレス家現当主にしてカタリーナの夫、ジークレスト・アフィレスが立っていたのだった。
次回もヨロシクお願いします。
;´・ω・)ノシ{できるだけ早く書き上げる予定です