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色々白状してしまったようです

遅くなって申し訳ありません。


( へ;_ _)へ

ーーー


「そう、そんな事があったの」


カタリーナの静かな声の響きに、リリーは『びくり』と肩を震わす。

あの後、『実は、ギルマスから後方要員として参加させられちゃって』と、笑いながら軽い感じで語ったのだが、


「あらおかしいわね、私の方に上がっている報告書には、そんな事は書いてなかったわ」


っと、あっさり切られ、その後も語る事全てにダメ出しを食らいつつ、結局最後には『ほぼ全て』を話す事になっていた。

ただし、『自分のスキルが、実は回復では無く再生』である事や、『黒騎士が、人では無く魔法生物』だと言う所は、しっかりとボカしたのだ。


『そこだけは言う訳にもいきませんし』


気が付けば一刻(約二時間)程経過していた。

疲れきったリリーは、ミラーナによってこっそりと背中側に入れられていたクッションに埋もれつつ、虚ろな目を天井に向けていた。


今やっていた事は、カタリーナ側が調べた情報が、何処まで合っているかを確認しただけだった。

その結果


「つまり、全ての原因は神聖教会ね」

「いやいやいや、待って下さい」


ぐったりしていた体を無理やり起こし、思わず反論する。

確かに、神聖教会側から『回復役』が一人も送られてこなかったのが原因だが……


「あの~、カタ……お義母様、その……教会が原因とか何とかって訳では無くてですね……その……」

「ええ、分かってるわリリーさん」


カタリーナがニッコリと笑い掛けてくる。

その笑顔を見て、ほっと一息つくリリーだったが


「魔法ギルドも原因だったわね」

「いやいやいや」


慌てて首を 横に小さく振るリリー。



ーーー

今回のゴブリン討伐で、冒険者ギルドは『教会』と『魔法ギルド』に対して、当初は罰則を与えようと動いていたのだが……


「残念な話だが、教会と魔法ギルドに対しては不問とする」


ゴブリン討伐直前の打ち合わせ、冒険者の一人が、参加者の中に回復役が一人も来ていない事に疑問を持ったのが始まりだった。

更に、魔法ギルドからの支援も無い事を告げられ、参加者全員が大激怒したのだった。


「お前らの言いたい事は分かってる……だがすまん」


そう言いながら頭を下げるギルドマスターに、それ以上文句を付ける訳にもいかず、不満だけが溜まっていった。


元々、冒険者ギルドに対しての魔法ギルド、そして教会は『協力関係』であって明確な仲間では無いというのが問題をややこしくしている。

教会にとって必要だったのは、他の場所への布教活動だ。

しかし、神官のみで辺境の地や他国に送り出す訳にも行かず、神殿を守る騎士や戦士団を一緒に派遣するには、数が圧倒的に足りてなかった。

そこで教会側は、冒険者へ回復役としての見習い神官を派遣する事で、彼らによる護衛を得ようと考えたのだった。


それと別の考えなのが『魔法ギルド』だ。

魔法ギルドは、魔法都市オードナルドにある魔法学院が、終了間際の学生達に実践経験を積ませる為に、冒険者ギルドを利用しているのだ。

実際に魔物に対して魔法を使い、他者との連携を学ぶには、冒険者ギルドはうってつけと言える。


それぞれが自己利益の関係の為、今回の様な大事になれば、途端切って来る関係性だ。

だからと言って冒険者ギルドが強気に出れば、彼らからの協力が受けられなくなる。

それだけではなく、特に教会による回復が受けられなくなるのは、死に繋がってしまう。


ギルド職員から、そう説得されたギルドマスターのゲイルは、それこそ血管が切れるんじゃないかという程の形相で我慢していたのだった。


そんな状況から、参加した冒険者達に対して『今回の件を無闇に広げない』様言われていたのだった。



ーーー

冷や汗をかきながらもカタリーナに懇願するリリー。


「あの……お願いです……教会とか魔法ギルドとか……その……悪く言うと……他の冒険者さん達に迷惑が」


必死に言うリリーを見ながら、カタリーナは一つため息をつく。


「大丈夫よ、貴女が思ってる様な事にはならないから」

「えっ?」


リリーとしては、ここで激昂したカタリーナが、間違っても教会や魔法ギルドに圧力をかけでもしたらと心配していたのだが……


「最近の教会のやり方に疑問を持つ人は多いのよ。そこに来て『不参加』の話。この街に住む人々にとっては他人事ではないでしょ?」

「あ……あの……その……」

「安心しなさい、既に彼らにとって最悪な噂が流れているから」

「……はい?」


キョトンとした顔を向けるリリーに、それは良い笑顔を向けるカタリーナ。

先程までの『顔は笑っているけど目は笑っていない』作り物の笑顔ではなく、本当の笑顔。


「あの……何をされたんですか?」


恐る恐る聞くリリーに対して放ったカタリーナのセリフは


「簡単よ。今回のゴブリン討伐、東の帝国側から来た『女性神官』が『住民を助ける為』命懸けで参加したって事にしてあげたのだから」


カタリーナの発言に、暫く思考が追い付かなかったリリーだったが、事の重要性に気付くと真っ青な顔になる。


早朝、住民に見られるとマズイと言われたリリーは、白のローブの上に顔が隠れる程のフードを被り、出来るだけ目立たない様に出発していた。

だが、いくらなんでも不安がっている市民が、そんな姿を見逃すハズもなく、顔を隠した女性が参加していると言う噂話が都市内を駆け巡る事となった。

カタリーナは、その噂を逆に利用し、『帝国側から来た神官』とすり替える事をしていた。


理由は『ゴブリン討伐に女性を参加させた』事に対する世間体。

罰則の類いは無いが、『オルボアが』その様な事をやったと吹聴されれば、これ幸いと『有る事無い事』騒ぐ者達が出て来る訳で。

それを最低限防ぐ為に、謎の神官を出す羽目になっていた。

偶然にも、フードから見え隠れする黒髪が、信憑性を高めた事になったのは皮肉とも言える。


更に言えば、リリーの持つスキルを世間に知らせるのは危ういと考え、カタリーナは全力を持って噂話を広めていた。


『リリーさんのスキルは、下手な貴族にバレれば確実に利用されるモノね……ん?バレれば?例の辺境伯の求婚……まさか?』

「あの……お義母様?」


リリーの声に、はっとなり我に帰ると一つ咳払いをし


「兎に角、貴女や冒険者ギルドへと迷惑が掛かる様な事にはならないようにするから、安心なさい」


今の自分はちゃんと笑えているだろうか、そんな事を考えながらリリーを見るカタリーナだった。

頑張って早めに次を……


ω・)ノシ{出す予定

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