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裏組織に話がいった様です

やっと、裏組織に話が……

ーーー

オルボア南東部、城壁に近い場所にある古びた建物。

周辺を同じ様な建物に囲まれ、細く汚い路地によって形成されている場所。

オルボア内でも貧困層が住む場所に近く、治安も悪い。

その建物の一角に、ローブ姿の者達が次々と入って行く。

入り口には武装した強面達が十人、周囲を鋭い目で警戒している。


扉を潜ると狭い通路が伸びている……が、入った者達は、真っ直ぐ行かず、左手にある扉を開け、中へと入って行く。

その部屋の中も、武装した四人組が部屋の四角に立っている。

部屋の中央には、ポッカリと空いた空間がある。

地下への入り口だ。

ローブ姿の者達は、迷う事無く地下へと降りて行く。


かなり深い位置にある『そこ』は、ちょっとしたバーの様になっていた。

暗い階段の先にある開けた空間、地上とは違う別世界。

ここは裏家業、『暗殺者ギルド』オルボア支部、その下っぱ達が情報交換、及び上役へと取り次ぎを行う場所だ。

上の建物は、周囲と建物を警戒する部下の住み家になっており、隠し通路から下がって来た此処が、彼らにとっての本拠地となる。


その一角で、フード部分を上げ、バーテンダーと話をしている人物がいた。

ぱっと見、何処にでも居そうな顔をした人物、『商人ギルドに潜り込んでいるメンバー』で、名を『ワイズ』、リリーを連れ帰る依頼をジミーから受けた男だ。

もちろん、ワイズと言う名は偽名だが、その彼は目の前に立つバーテンダー、この場所で上役との繋がりを付ける者に、今回得た情報を展開していた。


今回得た情報、辺境の村からの依頼で『拐われた妻』を連れ帰る事。

さらに拐ったとされる『黒い男』を始末する事の二つに関してだ。


その情報を聞いて、目の前のバーテンダーが上役へと上げるべきかを判断する……のだが


「拐われた妻……かい?その情報の信憑性は?」


グラスに酒を注ぐバーテンダーは、無表情で呟く。


「他の村人に聞いたが、そんな事実は無いそうです」


目の前の酒を一口飲むと、『ふぅ』と息を吐きながら、ワイズと呼ばれる商人が答える。

彼は、手付金として金貨二十枚を受け取っていた。

金貨の入った袋を前に、バーテンダーは考え込む。

事実の無い人物を連れ帰る。

そんな事はどうでも良い、問題なのは、そんな事に『金貨二十枚』なんて価値があるのか……だった。

これが貴族の類いであれば、何らかの価値があってと言えるのだが、片田舎の、それも聞いた事の無い程の村からとなれば、無意識にも警戒してしまう。


「それで、引き受けるのかい?」

「そのつもりですよ。何しろ小娘一人拐うだけで金貨二十枚、無事に連れ帰れば更に二十枚ですからね」


周囲で聞き耳を立てていた面々が、驚きの顔を向けてくる。

ここに居るメンバーは全員下っぱ、商人ギルドだけではなく、他のギルドにも潜入して情報を集めるのが役目だ。

更に、情報だけではなく、それぞれの仕事で稼いだ金を上納する役目もある。

謂わば、暗殺者ギルドの資金源稼ぎだ。

殺すだけでは組織運営は出来ない。

そんな中、金貨四十枚もの仕事となれば、全員の目の色も変わるというモノ。


「その連れ去ったとされる『黒い』のを殺せば、金貨十枚の追加、合計金貨五十枚、受けない手は無いでしょう?」


金貨五十枚と言えば、組織に半分上納した所で、十年は遊べる金額だ。

だからこそ、上に話を通すべきか、判断を仰いでいた。


「確かに、内容だけ聞けば美味しい話だが……恐らく上は興味を持たないだろう」


バーテンダーの答えに、話を聞いていた全員が聞き入る。

上が興味を持たない、つまりそれは


「下っぱの……私達だけでやっても問題無い……っと?」


上が興味を持たない内容であれば、下の者達が勝手に受ける事が出来る。

もちろんその場合、ギルドとしてのサポートは無い、これは全ギルド共通の事だ。

つまり、それぞれ個人の仕事扱いになり、手に入れた金は『全て自分の懐』へ。

ただし、その内容自体は連絡しておかないと、上の方から始末人が出て来てしまう。

組織とはそういうモノなのだから。


「一応、ベーター様には連絡しておきます。その返答次第で動いて下さい」


バーテンダーがそう言うと、ワイズはニヤニヤした笑顔で頷く。

連絡の義務は果たし、後は探し出すだけ、それで金貨が手に入るとなれば、彼の笑顔も頷ける。

そして、周囲に目を向けると、


「では、この仕事、一緒にやりたい人はいますか?」


同業者へと話を広げて行く。

周囲に居るのは同じ立場の者達、得手不得手はあるが、中には『人拐い』が得意な者も居る。

そんな者達と共にやる事で、成功率を上げる、後は受け取った金貨の配分のみ。

彼、ワイズの中では、既に上の許可は出るモノとして考えていた。

バーテンダーの言う通り、組織の上役的には旨味が少ない。

上の面々は、それこそ金貨数百から数千枚の仕事をしている。

だから、先に動く。

誰よりも早く、目標を見つけ出し拐う。


『ぐいっ』と残った酒を飲み干すと、詳しい情報を得ようとする者、協力しておこぼれを狙う者の相手をする。


狙うは『黒髪黒目』、名は『リリー』、『黒い大男』と一緒にいる、必ず生きて連れ帰る事。


この裏組織から流された情報により、リリーの周囲は慌ただしくなって行く。

少し駆け足気味になりました。


ω・`)ノシ

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