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薬が効いてきた様です

少し短いですがお付き合いを。


( ノ;_ _)ノ

時刻は夕方、窓から差し込む夕日に、部屋の中が赤く染まる。

窓際近くに備え付けられたベッドの上には、リリーが静かに寝ていた。

その傍らには、椅子に座ったカタリーナが、リリーの髪の毛を撫でていた。



ーーー

昼前、リリーが目を覚ました後、カタリーナが信頼する主治医に診察をお願いしていたのだが、その際


「奥様、これから診察をいたしますが、何があっても静かに見守る事。よろしいですね?」


と、前置きされていた。

何の事か分からず、その場は了承していたが……まさか、リリーの身体があんなになっていたとは思いも依らず。

只でさえ細い身体が、肋骨が浮き出る程痩せ細り、肌の艶も無く、乾いてガサガサだ。


本人も分かっているらしく、目を瞑り震えている。

メイド達の表情も暗い……が、


「ふむ、少々内臓が弱っている様ですが、まぁ若いんですし、食事を取れば大丈夫」


その一言で、室内の空気が変わる。

一安心と緩んだ雰囲気だ。

次に口の中を見ていたが、その後に出して来た薬を見て、思わず視線が固まってしまう。

カタリーナ自身、身に覚えのある薬、『千年樹の葉』と『森林蜂の蜜』だ。



ーーー

『千年樹の葉』は、その名の通り、千年生き抜いた『ナワトル』と呼ばれる木から取れる葉の事だ。

ナワトルは、西の森に生えているごく普通の木だが、千年を超える物は中々見つからない。

しかも、見つけたとしても、肝心の葉をその場で擂り潰し、新鮮な内に粉にしなければ、薬として役に立たない程、貴重な代物だ。

高位の冒険者に依頼して、やっと手に入る『それ』をお湯に溶かしていく。


そして、そのままでは苦くて飲めない汁に入れたのは、『森林蜂の蜜』だ。

『森林蜂の蜜』は、千年樹と同じく、西の森に生息している蜂だ。

体長一メートルの大きな蜂だが、他の蜂の名が付くモノとは違い、群れを作らない。

単独で森の中を飛び回り、さらに花の蜜では無く樹液を吸って生きている。

その樹液を体内に溜め込み、繁殖期になると、木の洞を樹液で満たし、卵を産み付けて増える。

その繁殖間際の蜜を集めた物が、最高の『森林蜂の蜜』となる。

早くに狩ると苦味のある蜜となり、遅過ぎると甘味の足りない酸化した蜜となる為、狩り時を見極めるのが大変な代物だ。


そんな大変な代物だからこそ、効果はバツグン……なのだが、当然両方とも費用も馬鹿高い。

貴族でも限られた者達しか使えない程だ。


カタリーナ自身は『元公爵』家の頃からお世話になっていた薬の為、あまり深くは考えていなかった。

むしろ


『アレ、苦いのよね~』


っと、子供の頃の記憶を染々と思い出し、遠い目をしていた。

それを調合する主治医の事も含めて。



ーーー

主治医の『ブランターク』は、北方の公国出身であった。

カタリーナの実家である公爵家の圧力によって、専属主治医になったが、当初は公爵家に不満しか持っていなかった。

しかしカタリーナに対しては別であった。

初めて会った際、幼子でありながら『覇気の無い目』をするカタリーナに同情し、その心を癒し、さらに騎士伯であるアフィレス家との仲も取り持ったと言われている。


その後、カタリーナが公爵家を追い出されると、直ぐにその後を追い、騎士伯家の主治医になっている。

何故そこまでするのかと問い掛けると


「もちろん!カタリーナ様を愛してるからです」


と返答したと言われている。

それらは『カタリーナと騎士伯の愛』と題する演劇や物語の中で、美談として世間を賑わせた。


ただ、この話には『後日談』がある。

カタリーナが騎士伯と結婚した翌年、ブランタークも結婚している。

相手はカタリーナ付きの侍女で、男爵家の娘だった。

しかも、付き合って五年もの歳月が過ぎているとも言う。

どう言う事かとカタリーナが聞けば、ブランターク曰く


「カタリーナ様を『愛して』いますが、それは家族愛の様なもの、『恋人』としては妻を愛してます」


と、ハッキリ言い切っていた。

演劇等の物語としては美談の部分みで、それら本心は無かった事にされているのだが……



ーーー

主治医であるブランタークの用意した薬を三分の二程飲みきったリリーが、涙ながらに残りを飲もうとした時だった。

スプーンから垂れた薬が舌の上に乗せられる。

その瞬間、リリーは驚いた様に目を見開く。

その表情を見たブランタークは、嬉しそうな表情を見せる。


「どうやら薬が効いてきた様ですね。どうです、味を感じましたか?」


ブランタークの言葉に『こくり』と首を振る。

甘味が口の中に広がっていく。

それも、柔らかく暖かな味わい。

『はふ~』っと満足げな息を吐くリリーを見て、ブランタークは苦笑いをする。


「口の中の麻痺が治って来た様ですね。やはり若いだけあって回復が早い」


そう言うと、残りの薬を全部飲ませ、ゆっくりと寝る様に指示する。


「明日の朝、もう一度診察します。今日の所はお休み下さいお嬢様」


そう言うと、ブランタークは鞄を持って部屋を出て行く。

見送ったカタリーナがリリーの側に寄ってくると、そっとリリーの頭を撫でる。


「カタ……リーナ……様?」

「言いたい事は沢山あるのだけど、今はゆっくり休みなさい」


クッションに埋もれる様な姿勢になっていたリリーは、カタリーナの言葉に従い、ゆっくりと瞼を閉じる。

少しすると『スースー』と小さな寝息が聞こえて来る。

そうして、カタリーナはメイド達にそれぞれの仕事に戻る様に言うと、リリーの傍らにそっと付き添う。



ーーー

『コンコン』と扉を叩く音が響く。


「お入りなさい」


カタリーナがそう答えると、そっと開いた扉から顔を出してきたのは、短髪の男性だった。

身長は百八十程、がっちりとした体格、顔を見れば『如何にも騎士』と言った人物だ。


「どうだいカタリーナ、『最愛の娘』の様子は?」

「一度目を覚ましたわ。また明日の朝、ブランタークに見てもらう予定よジーク」

「そうか、それは良かった」


無骨な顔が笑顔に変わる。

ジークレスト・アフィレス、カタリーナの夫でアフィレス騎士伯の現当主。

騎士伯としては小さな領地を持つ、一地方の領主だ。

今回、カタリーナが社交界へと出る為、一緒にオルボアへと来ていた。


「それで、身体の方はどうなんだ?」


心配気味な顔をしながらも、カタリーナに聞く。


「少し弱っているらしいわ。でも、若いから直ぐに元気になるでしょうって」

「そうか」


心底ほっとした顔をする。

結婚してから変わらない顔、喜怒哀楽をハッキリと出す旦那様。


「ん?どうした?」

「いえ、貴方は変わらないわって思って」

「それは誉めてるのか、貶してるのか?」

「もちろん誉めてるのよ」


何とも言えない顔を向けながら、カタリーナを見るジークレスト。


「そうかい?だったら今度からは、解りやすく言ってくれよ」

「出来る限り努力するわ」


暫し見つめ合った二人は、クスクスと笑いだす。


「……っと言う訳らしいぞ、クロノ君」


ジークレストが後ろに話かけると、そこには完全に気配を消している黒騎士が立っていた。

中途半端な所で切ってしまいました、すみません。


(´・ω・)ノシ{出来るだけ早めに続きを……

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