辺境の地での出来事だったようです
ぐぬぬ……もう少し書き込みたかったですが
(;´д`){時間切れです
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ゴブリン討伐が成された五日後の昼、聖王国の外れにある辺境の村に、商人の馬車が到着していた。
当初予定よりも二日も早い到着だった。
五台の馬車が、所狭しと広場に並べられていた。
それぞれの馬車から、木箱が下ろされて行く。
その全てが中古の武器や防具だ。
この辺境の地、百人にも満たない場所では多過ぎる武装。
それでも商人達は、せっせと運び出す。
それもそのはず、これ等の商品は、新品価格で取引される予定だからだ。
状態から、三分の一程度の価値の代物が三倍になるとあっては、商人達も気合いが入るってものだ。
ーーー
そんな商人達を横目に、アベル達は、少し離れた場所でノンビリと過ごす。
「やっと終わりかぁ……長かったぁ……」
そう呟くリーダーに、仲間達の冷たい目線が集中する。
『やっとアベルの『リリーちゃん地獄』から解放される』
仲間の心の中は一つになっていた。
そんな中、遠目に見えていた別の冒険者達が、何やら揉めているのが見えた。
「あれは、ウィルスさん達かな?」
揉めていたのは、アベル達より二つ年上の先輩パーティーだ。
彼らは、目の前にいる村人と何やら言い合いをしていた。
「喧嘩か?」
「でも、確かこの村ってウィルスさん達の担当だよな?」
アベルの仲間達が言う通り、この村の特産品を運搬している商人達を護衛しているのは、この先輩パーティーだった。
「どうするアベル、止めに行くか?」
仲間の戦士グルガルに言われ、顎に手を当てて考えていると、言い争いをしていた村人が此方に向かって走って来る。
「とうやら、止める必要は無くなった様だ」
そうして、目の前に来た村人に目線を向ける。
顔は……何処にでもある普通の顔だが、その窪んだ目だけは『ギラギラ』としていた。
「……何か用か?」
アベルの前に出て来たグルガルが、高い目線から睨み付けながら聞く。
他の冒険者とトラブルを起こした人間だ、警戒しない訳がない。
他のメンバーも、何時でも武器を出せる様に構えている。
そんなアベル達の前で、村人……村長の息子ジミーは、両手を上げて悪意が無い事をアピール。
「頼みたい事があるんだが」
ニヤリと口角を上げ話し出す。
彼の話は単純だった……っと言うよりも、道中に聞いた噂話そのものだった。
ただ、彼の証言が所々妙な所があったのだが……
「行方不明の妻?」
「ああ、最愛の、可憐な妻を取り返して欲しいんだ」
何とも不可解な話だ。
道中で聞いた『とある孫娘が拐われた』と言う部分は同じだが、その拐われた孫娘は、目の前の彼『ジミーの妻』だと言う。
アベルは、思わず仲間達と顔を見合わせてしまう。
しかも彼は、ここにいる冒険者達に『妻奪還』を依頼したいとまで言いだしている。
だが……
「悪いが、ギルドを通さない依頼は、簡単に受けられないんだ」
アベルがそう言って断ると、ジミーの態度が豹変した。
「くそう、お前らもか!!何故だ!!俺の妻を何故助けてくれない!!何故!!」
唾を飛ばしながらも喚くジミーを驚いた顔で見る。
冒険者への依頼は、ギルドを通すのが筋だ……が、その内容に納得が行けば、事後処理で申請を受け付ける事は出来る。
ただしこの場合、申請が受理されるまで、冒険者ギルドのサポートは一切受ける事が出来なくなる。
勝手に受ける事へのリスクが高過ぎるのだ。
『なるほど、先輩達はこれで言い合ってたのか』
思い起こせば、彼らはジミーを宥めようとしていた様にも見えた。
アベル達もどうにかして宥めようとしたその時だった。
『がしゃり』と足元で金属の鳴る音が響く。
全員の目が集中するそこには皮袋があり、その半開きの口からは、大きな王国金貨が姿を表していた。
全員の目が点になる、当然だ。
王国金貨と言えば、こんな辺境でお目見え出来る様な物ではない。
都市部であっても、貴族ぐらいしか持ち歩く事は無い。
それが数枚……いや、袋の大きさから数十枚はあるかもしれない。
ジミーを見ると、『狂喜に満ちた笑み』を浮かべていた。
「金ならある、どうだ?探してくれないか?」
その言葉を聞いた瞬間、『ごくり』と誰かの喉が鳴る音が聞こえた気がした。
確かに、これだけの金貨があれば、報酬としては破格だ……だが
「すまないが断る」
アベルは真っ直ぐな目をジミーに向け、断りの言葉を出す。
ジミーの顔がグニャリと歪む。
「何故だ!!金だぞ?金貨だ!!お前ら冒険者なら、この価値が」
「分かった上での事だ。僕達冒険者は、金の多さだけで仕事を選んでいる訳じゃない」
静かに言われ、唇を噛み締めるジミー。
やがて、ノロノロと金貨の袋を拾うと、その場を離れて行く。
十分に離れた所で『はぁ~』っと、大きなため息をつく。
「やるじゃんリーダー」
「ひゅ~、カッコいい~」
「勿体なかったんじゃないか?」
「うっ……うるさい!!」
ニヤニヤした顔の仲間達に囲まれたアベルだったが、何となく顔を赤くしながらも反論する。
仲間達も、久しぶりに見た『カッコつけのアベル』の姿に、誰とも無く笑みを浮かべていた。
ーーー
広場とは逆の場所、大きな物置小屋の裏で、ジミーは壁へと袋を叩き付けていた。
「くそう、あいつ等……何が金の多さじゃないだ!!賎しい冒険者の分際で!!」
苛立たし顔をしながらも、壁に向けて何度も何度も袋を叩き付ける。
ジミーからしてみれば、冒険者など『金で言う事を聞く程度の存在』としか考えていなかった。
見下していた存在、それが冒険者だった……
「いやいや、お困りの様ですね?」
「?!」
そう声を掛けられ、肩を震わせる。
いつの間に居たのか、そこには商人が一人、立っていた。
父である村長が呼び寄せた商人の一人……だったはず。
だが、笑みを張り付かせた顔は、まるで作り物だ。
「あぁ、そんなに警戒しないで。私は貴方にとって良い提案を持ってきただけですよ?」
「良い提案?」
ピクリと眉を動かすと、目線を商人に向ける。
それを満足そうに見ていた商人は、ゆっくりと頭を下げ、わざとらしい挨拶をする。
「私の名はワイズ、商人ギルド……に入り込んでいる暗殺ギルドの手の者です」
「?!」
その内容にジミーは驚愕の顔を見せる。
暗殺ギルド、盗賊ギルドに並ぶ闇の組織、決して表には出て来ないとされているバスだった。
そんな組織を名乗る人間が目の前にいる?!
ジミーは混乱していた……っと同時に、これはチャンスだとも思っていた。
リリーをその手に入れる為。
「俺の目的は分かっているな?」
「えぇ、もちろん」
お互い顔を見合わせてニヤリと笑う。
「貴方の奥方様、確実に手元へと送りますよ?」
ジミーの心へと染み込む様に、その言葉が吸い込まれて行く。
そして、何の躊躇いも無く、金貨の入った袋を預ける。
「契約成立」
暗殺ギルドを名乗る商人の言葉が、何処か遠くから聞こえてくる。
「リリーを俺の元へ連れて来い、それと黒い鎧姿の大男を……殺せ」
焦点の合わない目をしながらジミーは呟く。
目の前に居る商人の右指先が、怪しい光を出して居る事にも気付かず、ただ立ち尽くしていた。
この日、リリーと黒騎士の情報が、似顔絵付きで裏世界へと拡散されていった。
申し訳ありませんが、九月中頃まで私用により、書き込みが出来ません。
ω・`)ノシ{暫くお待ち下さい