進撃中の様です
遅れてすみません、後半を色々書き直してました。
(´・ω・`){良い台詞回しが浮かびません
ーーー
「前方から三匹!!」
その叫び声は木の上から上がって来た。
数秒後、前方の茂みから『茶色い物体』が飛び出してくる。
ベンノは、それをしっかり確認すると、左手に持っていた剣を振り上げる。
二メートルはある両手剣、それを軽々と上段に構えて両手を添え、一息に振り下ろす。
後方で見ていた銀級冒険者の目の前で、ゆっくりと持ち上げられた剣が、瞬き一つの間に一筋の線になって地面スレスレで止まっていた。
空中には、真っ二つになったゴブリンが「ひゅっ」と、声無き悲鳴を上げながら落下していく。
両断されたゴブリンが地面に落ちる前に、右手首に力を入れて捻り、剣を掬い上げる様に動かす。
右側をすり抜けようとしたゴブリンの側頭葉に、吸い込まれる様に剣が動く。
そして『べちゃべちゃり』と二つの湿った音が聞こえてくる。
一つは空中で真っ二つにされたゴブリン、もう一つは頭を横半分に切り取られたゴブリンの体が、地面へぶつかる音だ。
右側から正面へと向けようとした剣の腹に、『カカカカカン』と乾いた音を立てて、何かが当たる。
「ん?」
思わず視線を左に向けると、そこには『首から上が完全に無くなった』ゴブリンの胴体が、フラリと前に倒れようとしていた。
その頭部があったと思われる所には、黒い鉄の塊がピタリと止まっている。
ゆっくり視線を上げると、それは黒い脛当てであった。
ローキックの様姿勢て止まっていたのは、リリーの相棒『黒騎士』だ。
三匹のゴブリンの内の一匹、ベンノの左側を抜けようとした個体が、視覚の外側から来た『黒騎士のひざ脛当て部のローキック』で、頭部を蹴られ、破裂したのだった。
ベンノの剣の腹に連続であたったのは、バラバラに砕けた『ゴブリンの頭蓋骨』だ。
それを横目で確認すると
「うへぇ~えげつないね~黒い兄ちゃん」
言葉とは裏腹に、ニヤリとした顔を向けるベンノ。
正面から来る敵は居ない……そう判断すると、肩から力を抜き、周囲を見渡す。
丁度そのタイミングで、左の森から飛び出してきたゴブリンに、二本の細い剣が放たれる所だった。
ーーー
すく後ろにいた弓使いが、
「前方、もうすぐ」
っと、出る瞬間を示した瞬間、ダラリと垂れ下がっていた左右の剣が、まるで鞭の様にしなりながら動く。
木の間から全力で駆け抜けようとしたゴブリンの手足が、空中でスライスされる。
驚きに目を見開くゴブリンの目に写ったのは、白く糸を引く剣筋だった。
駆け抜ける勢いのまま、前方へとバラバラになった肉片を撒き散らすゴブリンを『するり』と避け、剣士は二本の剣を鞘に収める。
そこまで見たベンノ、今度は視線を右側に移す。
そこには槍を構えた戦士が、まるで石像の様にジッとしていた。
「右斜めにゴブリン、数二匹……三、二」
左側の弓使いと同じく、ゴブリン接近を知らせる声。
カウントを数え、さらに細かく……そして
「一」
『ガサリ』と足元の草が鳴った瞬間、腰だめに構えた槍が放たれる。
木々の間を小さな影が通ったと思った瞬間、『ボボン』と音が響き渡る。
顔半分を吹き飛ばされたゴブリンが、ヨロヨロと歩き出て来ると、そのままバタリと倒れる。
戦士の持つ槍によって頭部を貫かれた様だ。
「どうやら、今度の襲撃『は』余裕だったようだな?」
「最初のがイレギュラー過ぎたんだよ」
左右の状況を確認したベンノが、余裕を持って剣を背中の鞘に収める。
右側の槍の戦士が不機嫌そうに答える。
森に入ってすぐの襲撃、しかも百匹近い数が、十匹ずつ休む間も無く攻撃してくる。
確かに油断もあったのだろう。
だからこそ、本陣とも言える後衛にまでゴブリンが押し寄せる羽目になった。
襲撃後、ベンノを中心に、直ぐ様陣形を変更する。
変更と言っても形状は変えず、それぞれの距離を縮めただけだ。
先ほどまで、前後左右を五~六メートル程開けていたのだが、予想以上にゴブリンが素早く隙間をすり抜けると言う事で、半分の三メートル程に縮小。
それと同時に、先頭を任せていた弓使い達をベンノ達前衛の近くに配置。
索敵範囲は縮まったが、各自との連携速度は上がる事になる。
ーーー
弓使い達の索敵範囲に動くモノが居ない事を確認していると
「はい……並んで……下さい」
後方から小さな声が聞こえてくる。
ベンノが首を向けると、冒険者達が列を成して並んでいた。
「はい……干し肉とお水……です」
「おう、ありがとうよ嬢ちゃん」
厳つい顔をした戦士が、ニッコリ笑って少女から食料を貰っていた。
「次の方……」
「俺は水だけでいいや」
「は……はい」
次々と出る注文に合わせて、リリーが木箱から荷物を取り出していく。
ゴブリンの襲撃が一段落すると、ほぼ全員がリリーの元へと向かう。
理由は二つ、一つは補給、食料に水分、傷薬といった物。
もう1つは、それらを受け取りに……行くと言う名目でリリーに近付く冒険者達。
特に、年齢の高い者程嬉しそうに寄っていく。
「おい、ウチのギルドは、こんなにロリコンが多かったのか?」
ベンノの傍に寄って来たゲイルが、呆れ顔で聞いてくる。
「いや、あれはどちらかと言うと、親子のふれあいって所だな」
「あぁ?親子?」
リリーを囲む冒険者達に、怪訝な表情を向けるゲイル。
そんなゲイルの顔を見て苦笑いしながら答えるベンノ。
「あ~例えば……だ。今食料を受け取った戦士グランは娘が居るんだが、昔、娘に『大きくなったらパパと一緒に冒険するの~』なんて言われてたらしい」
「おいベンノ……」
ベンノが少し裏声で……恐らく娘のモノマネだろ……そんなセリフを言うと、長い付き合いのゲイルでも嫌になる訳で。
「他にも……えっと、あそこに居るズールは、可愛がってた娘が『これからの時代は金持ちよね~冒険者なんてダメ』とか言いながら、どっかの商人と付き合ってるらしい」
「ベンノ……」
「その後ろに並んでるビドルは、娘に『お父さん臭い、ゾンビみたいだから近寄らないで』って」
「おい」
いくら『性格の悪いゲイル』であっても、そこまで各個人の家庭内容に踏み込む気は毛頭無く……むしろ
「アイツらも苦労してんだな……」
ちょっとだけ、哀れな目を向けてしまう。
「まぁ、そんな連中だからこそ、あの嬢ちゃんを可愛がっちまうって事だ」
「娘の様に思っちまうってヤツか?」
「少し違う……かな?強いて言うなら『理想の娘像』?」
「余計にダメダメじゃねぇか!!」
額に手を当てて盛大にため息をつく。
「馬鹿小娘を連れて来るんじゃなかった……」
「もう遅いぞ」
ベンノの言葉に、さらに深いため息をつく。
正直、『硬派なギルド』を目指していただけに、自分の中の理想と現実にぐったりとしてしまうゲイルだった。
ーオマケー
ゲイル「所で、馬鹿小娘の斜め後ろに居る連中もアレなのか?」
ベンノ「アレ?」
ゲイル「あ~、娘がどうのとか言うヤツだ。ただ、年齢的に若過ぎる様な気がしたからな」
ベンノ「あぁ~お嬢ちゃんの後ろの、怪しい動きをしてる連中か?」
ゲイル「……まぁ、そうだな(怪しい動き?)」
ベンノ「アレは違う、アレは『純粋にお嬢ちゃんに恋してる連中』だ」
ゲイル「余計ダメな連中じゃねぇか!!」
ベンノ「安心しろ、アイツらは『お嬢ちゃん見守り隊』ってヤツらしい」
ゲイル「ただのロリコンじゃねぇか!!安心する所が一つも無ぇよ!!」
そろそろ巻いて行く予定です。
ω・`)ノシ{じゃないと全然進まないですし……