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新人騎士の受難です

今回は、少々グロい戦闘シーンがあります。


ω・`)ノシ{お気をつけを~

「敵襲!!」


リリー達がゲイルと合流した頃、オルボアから二キロ程場所にある小さな広場で襲撃があった。

ここは、リリー達のいる広場と同じ、旅人の休息場の一つだ。

ただ、広さはそれほどでもなく、半径百メートル程しかない。

そんな場所に、四つのテントが立っている。


その一つ、一番奥のテントから全身真っ白い鎧の兵士が飛び出して来た。

周囲を見渡すと、テント左側にある街道に向かって走り出す。

襲撃を伝えた『先輩騎士』が盾を構えて居たからだ。

自身も右手に剣、左手に盾を持ち、急いで駆けつけようとする。

ゴブリンだ、数は二十匹。


相手をする先輩騎士の動きは流石だ。

右手の剣は腰の辺りに構え、左手の盾でゴブリンの攻撃を全て受ける、いや、受けるだけではなく、弾き飛ばしている。

明らかに援軍を待つ為の戦い方だ。


そうしている間に、他のテントから飛び出して来た騎士達が合流して行く。

この小隊を率いる隊長と同じく先輩騎士達だ。

騎士に成ったばかりの俺を入れて六人の小隊、この街道沿いにゴブリンへの警戒の為に配置された部隊だ。


俺達以外にも複数の部隊が配備されている。

オルボアからオー・ルランまでで四部隊二十四人、さらにその西側に、十二部隊七十人程が配備されていた。

とは言え、西に向かっている部隊のほとんどが陣地も何もまだ無く、移動中なんだろうが……



ーーー

オルボア太守バルトルト様の命令により、騎士団の半分で街道守護を行う事に決定していた。

残り半分は、そのままオルボアを守る事になっている。


でも、俺達騎士団こそ『ゴブリン討伐』を行うべきだと思っている。

冒険者等と言う無法者を使うよりは……と、それは街道守護と言う任務を軽く扱ってる訳ではない。

自分達『騎士団』の武勇こそ、こんな時に使うべきだと……その言葉を聞いた隊長は


「まだまだ若いな、新人」


っと言って笑っていた……先輩達も笑っていたが、俺には分からない……何故冒険者を使うのか……



ーーー

そんな事を考えながら走っていると、街道側のテント近くに、何人かの人影を見つける。

従者の少年達だ。

確か、彼らは十歳になったばかりの者達だったハズだ。

騎士見習いから騎士に上がった俺にも、一人従者が付けられた。


従者とは、騎士見習いに上がる前の者達だ。

彼らの役割は、騎士の身の回りの世話役だ、だが、将来騎士になる身、今回の様な場合、連れて来られる。


勿論、戦力としてではない……が、自らの身を守る為に槍を持たされている。

従者成り立てと思われる若い彼らは、槍の持ち方も何も知らない、だから、テントの隅で震えながらも固まっているしかなかったのだろう。


そんな従者達の横をすり抜けようとした時『違和感』を感じた。

横目でチラッと見ただけなのに、何故かが引っ掛かる。

先輩達の所へ行かなければならないのに……足が止まる……何故?!

思わず振り替えると、従者達の驚きの顔が見える。

全員がこっちを見ていた、当然だろう、敵に向かっていたハズの騎士が自分達を見ているのだから。


俺に付けられた従者の顔も見えた。

青い顔をしながらこっちを見ている。

そう、こっちを見ている顔の数が『八つ』ある?!

従者の数は六人、そう思った瞬間、従者の方に向かって走り出す。

槍を手に慌てているが、そんな彼らを突飛ばしつつ奥へと突っ走る。

自分付きの従者を引き寄せながら剣を前に付きだす。


『げぎょ?!』


右手に鈍い振動と、肉を切り裂く感覚が伝わる。

付き出した剣にはゴブリンが刺さっていた。

そう、正面から来たゴブリン達とは別に、回り込んでいたゴブリンが居たのだった。


感じた違和感は『顔の数』、従者達の向こうから走り寄っていたゴブリンの顔が見えたからだ。

俺は、串刺しになったゴブリンから視線を外し、もう一匹を探す。

その瞬間、左手の盾に衝撃が来る。

一歩後ろに下がると、直ぐに腰を低くし、盾を持つ手に力を入れる。


もう一匹は、盾にしがみついていた。

先輩騎士達と違い、騎士に成り立ての俺の盾は小さい。

先輩達の使う盾は、カイトシールドと呼ばれている物で、大型鉄製な上かなり重い。

俺の使っているのは一回り小さいヒーターシールドだ。

枠部分は鉄製だが、本体は木製だ。


そのヒーターシールドの縁に、獣の爪が食い込んでいる……いや、枠を持っていると言うべきか?

恐らく、二匹同時に飛び掛かって来たのだろう。

そして、見えていた方が串刺しに、盾の影に居た方がしがみつく形になったのだろう。


だから俺は、右の剣で『しがみつく指』を切り落としてやろうとした……のだが、


「くそ、ゴブリンの死体が外れない?!」


口から胴体へと刺さってしまった剣は、何処か変な所……肋骨辺りの骨だろうか……に引っかかってしまったらしく、どうやっても外れなかった。

本来であれば剣を捨て、腰にある短剣を使うべきだったのだが、焦った俺はゴブリンのぶら下がった剣を振り回しながら、盾にしがみつくヤツを叩くという、情けない姿を晒してしまう。


「くそっ、くそっ、くそぉ~コイツ?!」


剣に刺さったゴブリンが重い!!思った様に動けない!!

俺は、冷静な判断が出来てなかったのだろう、その時


「グギギぃぃ~」

「?!」


盾の向こう側からゴブリンが顔を出していた。

俺の動きが鈍ったからか、しがみついた体制のまま、盾の縁から顔を出していた。

その目は俺を見ている。

濁った色、殺意と食欲を臭わせる目……


「ギぃぃ~」

「コイツ?!」


笑った、そのゴブリンは確かに笑ったのだ。

俺を食える、そう思ったのかもしれない。

背筋に寒気が走る、左手の力が緩み、盾を落としてしまう。

『ごとり』と言う音に気付いた時は遅かった。

俺の盾は地面に刺さり、そのまま倒れだす……張り付いているゴブリン側に、


「ギぃ?!」


勝ちを意識したゴブリンの驚愕の声が聞こえた気がした。

そのまま倒れた盾の下敷きになる。


「ギぃぃぃぃ~?!」


ゴブリンの叫び声が聞こえた瞬間、我に帰った俺は、盾の上に乗る。


『ごりっ』

「グギぃぃい~?!」


何かが折れる音が聞こえた、恐らく、『盾』とこの『騎士の鎧』の重さでゴブリンの骨が折れたのだろう。

だが、今の俺にはどうでもいい、ただ、このチャンスを生かしたいと思っただけだった。


「グギギギギギギ……」

「こ……コイツ!!」


盾から這い出されない様、さらに力を入れる。

騎士としての誇りも形も関係無い、ただゴブリンを潰す、それだけだった。

僅かに出て来たゴブリンの手が空を切る。

頭も出て来ている?!

焦りは焦りを呼び、どうすれば良いか分からない?!


「腰のナイフだ」


その声に反応して、腰のナイフを取り出すと、大きく振りかぶり落とす。

狙いはゴブリンの頭!!


『ごっ』

「ギギャアぁぁぁぁー?!」


ゴブリンが無茶苦茶に振るった爪が顔を掠める……が、関係無い、何度も何度も振り下ろす……


「もういい、そこまでだ」


肩を叩かれた、誰だ?!

振り返るとそこには隊長が居た。

戦いは終わっていた。

下を見ると、ナイフの刃先が刺さったゴブリンが絶命している。

何度も振るっている内に折れてた様だ。


ノロノロと立ち上がって周囲を確認する。

先輩達は、二十匹程のゴブリンを倒し、運んでいた。

広場の真ん中に掘っていた穴へと、ゴブリンの死体を落として行く。


『俺は……弱い……』


先輩達は、二十匹のゴブリンを倒し、楽々と後片付けをしている。

なのに俺は……


「酷い有り様だな、取り敢えず、裏の川へ行って洗い流して来い」

「ま……待って下さい、隊長!!」


たった二匹のゴブリンに苦戦した自分だけが身綺麗にするなどと……そう言いそうになった……が


「モンスターは怖かっただろ?」


隊長の言葉が心に刺さる。

何がゴブリン程度だ、何が『俺達騎士団の武勇』だ。

先輩達は強い、でも俺は……


「冒険者逹は、あんなのを相手にしているんだ」


隊長の言葉に驚く。

そうだ、俺がビビったゴブリン……いや、それ以外のバケモノとも殺りあっているんだ……冒険者は。


「人と殺り合うのも怖いもんだが、モンスターと殺り合うのはもっと怖いもんだ、それが分かっただろ?」

「……はい」

「なら良い、その気持ち、次に生かせ」

「…………はい」


そうだ、騎士見習いから騎士になったんだ、これからイヤでもこんな目に合うだろう。

だから、次は……次こそは……きっと


「まぁ、戦い方は兎も角、お前の動きは良いモノだったぞ」


そう言って隊長の指差す方を見ると、従者達が立っていた。


「助けていただいて、ありがとうございます」

「ありがとうございます」


思わず面食らってしまった。

六人の従者達にお礼を言われるとは思ってもいなかったからだ。


「お前が気付かなければ、コイツらは被害を受けていただろう、だから良くやった」


俺は先輩達の様に、かっこ良く振る舞う事は出来なかった、でもその代わり、誰かを救う事が出来た……のかもしれない。


「このゴブリン達の後始末は、僕達がやります」

「だから、騎士様は休んでいて下さい」

「騎士様」


彼らの……従者達の熱の籠った目に、思わず二歩下がってしまう。

後ろで「くっくっくっ」と隊長の笑う声が聞こえた気がした。


今までだったら「バカにするな』と騒いでたかもしれない。

でも、今は……今の気持ちなら……。

重たい身体を動かしながら川へと向かう。

鎧にこびりついたゴブリンの血を洗い流そう、顔も洗おう。


後ろから足音が聞こえる。

多分、俺付きの従者だろう。

着替えでも持って来てくれたのだろうか?それともタオルか?何にしても……


「助ける事が出来て……良かった」


新人騎士の足取りは重かったが、顔は晴れやかだった。


次は金曜日までに書き上げる……予定?


ω・)ノシ{自分を追い込む……

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