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呆然としていました

予定を大幅オーバーです。

すみません。

その代わり、いつもより少し長めです(千文字ぐらい?)


( ノ;_ _)ノ

オルボアとオー・ルランの間には、森を切り開いて作った街道がある。

そして、街道途中には、いくつかの広場が存在していた。

草木の無い広場、それらは、街道を行き来する商人や旅人逹が作った休息場だった。


そんな内の一つ、半径五百メートル程の広場には、小さな竈跡があったりする。

そんな休息場に今、頑丈な柵と小さな小屋が五件建てられていた。

奥の方には馬が三頭程見える。

これは、非常時連絡用の馬だ。


頑丈な柵でグルリと囲まれたその場は、まるで軍の駐屯地の様な雰囲気だった。

柵の中で走り回る人達は、全員武装している。

柵の外では、槍を持った集団が周囲を警戒している。

広場中央には、物見櫓が建設中だった。


そんな中、巨大な馬車が『ガラガラ』と響く音を立てながら、次々と柵の中へと入って行く。


「早い到着だな」


小屋から出て馬車へと近づいて来る男が居た。

オルボアの冒険者ギルド長『ゲイル』だった。


「なんだゲイル、もう来てたのか?」


馬車から降りてきたベンノが、ゲイルの姿を見るなり言う。


「おう、朝一番に駆けつけたぞ」

「へぇ~」


完全武装したゲイルの姿に呆れ顔のベンノだったが、すぐに後ろの馬車へと指示を出す。


「全員、降りたら半瞬(30分)程休憩、装備の最終確認もしておけ。食事と水分補給も忘れるな」


馬車から降りてきた冒険者逹にそう言うが……反応は様々だ。

ベンノと一緒に降りてきた金級冒険者逹は、少しふらつきながらも、ベンノの言葉に頷く。

その後ろ、銀級冒険者逹の半分は、疲れた顔をしている。

青い顔をしている者もいた。

問題は銅級冒険者逹……馬車を降りるなり、森の方へと走り出し、草むらの中でしゃがみこむ。

何やら『水っぽい』音が聞こえる事から、吐いているのだろう。

一組を除いて……


「やっと着いたね……黒騎士さん」

「……」


黒騎士の肩の上に座って背筋を伸ばすリリーは、他者と違い、普段通りの顔色だった。


「ありえねぇ……」

「ホント……何々だよアイツら」


青い顔をした銅級の面々が、呆然と見る。


「おう、小娘と黒いのも来たな。よし、これで楽勝だ」


とても、ギルドマスターとは思えない表情をしながらリリー逹へと近づいて来る。


「うっ?!」


黒騎士の兜を『ひしっ』と掴んで恨めしい目を向けるリリー。

それを見ながら「くっくっく」と苦笑いするベンノ。


「ちっ、まだその態度かよ小娘」

「えらく嫌われたもんだなゲイル?」

「うるせぇよベンノ!!」


二人の掛け合いを見守る冒険者逹だったが、ベンノの「早く準備に取りかかれよ?」の言葉に、弾かれた様に動き出す。


柵の中に居た人達は、冒険者ギルドから派遣されたスタッフ逹だ。

彼らは、一部を覗いて元冒険者だった者逹だ。

その為、数日前からこの中継場所の確保と陣地作りに携わっていた。

柵の外を警戒しているのは、今回の討伐隊に参加出来なかった銀級と銅級逹だ。

よく見れば、酒場で『リリーに絡んでのされた』銅級冒険者も居た。

彼らは、恨みの籠った目をリリーと黒騎士に向けている。


そんな陣地内では、次々と荷物が運び込まれていく。

大きな木箱は食料の類いだろう。

ギルド職員と思われる面々が蓋を開けて中身を確認すると、それぞれの蓋に日付を書き付けていく。

野菜の類いは手前に置き、保存の効く干し肉類は奥に積み重ねて行く。

水瓶をいくつか置き、若い職員が往復している。

どうやら、小屋の近くに井戸を掘っておいたようだ。

陣地は徐々に強化されていく。


「すげぇ……でもやり過ぎだろ?」


周りを見渡したベンノだったが


「いやまだまだだ、最終的にはここに砦が作られる予定だ」

「マジかよ?!」


ゲイルの言葉にベンノが呆れた声を上げる。

曰く、討伐隊が失敗に終わった場合、周辺で警戒している騎士逹がここに終結する予定だとか。

逆に成功した場合でも、しばらくはここを中心として警戒する事になっている。


「どれ程の戦力を投入する気だよ?!」

「さぁな、ウワサでは本国の騎士団にまで応援要請したとも言ってたが」



ーーー

オルボアの騎士団は、王国内でも一番少ない。

肥沃な大地を持っていながら戦力となる騎士の数は、僅か二百足らず。

この数は、王国内でも下の方だ。


オルボア領主バルトルト、只でさえ『現国王の親友』という肩書きがある為、無用な戦力は、他の貴族達からの疑心暗鬼や嫉妬、妬みの元となってしまう。


その為の『冒険者ギルド』だった。

バルトルト自身が誘致し、色々な補助も与え、非常時の戦力とする。

もちろん、国家間の戦争にまでは巻き込むつもりはないのだが、今回の様な問題には、全力で協力要請を出来るようにしていた。



ーーー

ゲイルとベンノが中央にある小屋に近づいて行く。

他の小屋より一回り大きな小屋だ。


「小娘、何をしてやがる?」


振り返ったゲイルが、少し離れた位置に居るリリーへと声を掛ける。


「えっ?!」


何故呼ばれたのか判断つかないという顔をしたリリー。

そんなリリーに


「こっちだ、さっさと来やがれ」


っと、手招きする。

警戒した足取りで、ゲイルに近づく。

ゲイルはリリーを確認するまでもなく、小屋の中へと進んで行く。

開け放たれた扉の前で躊躇するリリーの背中をベンノが軽く押す。

押されたリリーは、心底イヤそうな顔をしながらも中へと進む。


そこは十人程の男達が居た。

酒場で会った冒険者にベンノの仲間逹全員居る。

流石に狭い、そう感じたのはリリーだけじゃないハズだ。


「全員集まったな?では、最終確認だ」


ゲイルの言葉に、小屋中央のテーブルの上の紙を見る。

それは、この周辺の地図だ。

正確では無いが、オルボア周辺の小さな村まで、大体の位置は書かれていた。


「現在位置はここだ」


そう言って指差した場所は、地図の中央付近、丸印がされている。

そこから指を滑らせて行き、バツ印の入っている場合を示す。


「目標の洞窟はここ、お前逹は真っ直ぐ南下してもらう。今回は『速度』が命だ」


ゲイルの言葉にリリー以外の全員が頷く。


「最短距離で一刻半(三時間)、途中の戦闘時間を考えても、夕方には洞窟前に到着出来るはずだ」


作戦はシンプルだ。

ゴブリンの巣である洞窟まで、最短距離を突き進む。

洞窟入り口のゴブリンを討伐後、土魔法で入り口を閉鎖、魔物の嫌う薬剤を洞窟内に投入し殲滅する予定だ。


薬剤と言っても、魔物避けに使われている『ユグリナ草』を使う。

ユグリナ草は、低級の魔物が嫌う臭いを出す草だが、人体には影響がない。

そのユグリナ草に火を着けると、臭いがキツくなり低位の魔物を弱らせる習性がある。

これを、出入口を封鎖した後、洞窟内に充満させる事で、ゴブリンを弱体化、一気に退治しようと言うのが大筋の作戦だった。

とは言え、洞窟は広く、隙間も多い。

十日間は、洞窟内にユグリナ草を焚く事になっている。

その後は、冒険者逹が洞窟内部に入り、地道に殲滅する事となる。

流石に食料の無い洞窟で、十日間も燻され弱体した後では、ゴブリンが生存している可能性は低くなるとギルド側はみている。

身体の弱い個体であれば、ユグリナ草だけで殺す事は出来るだろうが……


『どれ程策を練ろうとも、ゴブリン殲滅は出来ない』


とある『宮廷魔導師』が言った言葉だ。


過去に、国を挙げて大規模討伐をし、完全に消滅させたハズのゴブリンが、数年を持たず、数を戻した経歴がある。

だからこそ冒険者ギルドでは、定期的にゴブリンを駆除する様にしてきた。

今までの経験上、それこそが長期的地域安定に繋がってきたとされるからである。



ーーー

「前衛はベンノ、お前逹のチームだ、頼むぞ」

「任せろ」


ニヤリと笑い胸を軽く叩くベンノ。

さらにゲイルは、各自に配置を示していく。

そして、


「俺と……『黒いの』はベンノと一緒に前衛、真っ正面。後小娘、てめぇは後衛だ、しっかり守られとけ」


その言葉に場がざわつく。

正直、リリーに関しては回復役だと聞いている為、後衛だと言うのは分かる。

だが


「ギルマス、流石にそれは……」

「ゲイルさん、この新人には荷が重いんじゃ?」


金級のベンノ逹が前衛を勤める、その事に異論は無かったが、銅級の、しかも成り立ての新人に任せるなど……そう考える者が大半だったが……


「ふん、もう決定した事だ、反論は許さねぇ。文句があるなら力で示せ!!」


ぶっきらぼうで乱暴な言い種だが、これが十年近くギルドマスターをしてきたゲイルのやり方だ。

それが分かってる面々は、顔を歪ませ『運の無いヤツだな』とでも言いたげな表情を黒騎士に向けている。

彼らが反対していたのは、別に『でしゃばるな』と思ってる訳ではない。

単純に『成り立ての新人が可哀想』だと思っただけだ。


「てめぇら、他人の心配するより自分の心配してろ!!新人より先にケガの一つでもしたら恥ずかしいぞ?分かったらとっとと準備しやがれ!!」


ニヤリと不敵な笑みを向けながら冒険者逹を見回す。


『ふん、いい目だ、ビビってるヤツはいねぇか……ん?』


ゲイルの煽りに『睨み付け』て返す冒険者逹に対して、一人だけガクガクと震えてる者がいた。

リリーだ。


「な……なんで……こんな事に……」


半分魄の抜け落ちた様な顔をしながら、『数日前まではベッティーナ様の元で幸せだったな~』っと呆然とするリリーだった。

次こそ……早く上げる……たぶん……きっと……


ω・`)ノシ

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