装備品ですか?
今回、ショートコメディっぽくしようとしたのですが……
;´・ω・){どうしてこうなった?!
ーとある宿屋ではー
リリーは、目の前に並べられている食事にくぎ付けだった。
時間がたって少し水分を吸ったパンをフライパンで軽く焼き、表面をカリカリに仕上げている。
そしてパンの横には、厚みのあるベーコンが二枚、新鮮な野菜を一緒に添えて皿の上に載っている。
スープは、小さく刻んだ玉ねぎの入ったコンソメスープ。
小皿に盛ってあるポテトサラダは、デボラ特製の一品だ。
この街で作られている普通のポテトサラダは、ジャガイモの粒がゴロゴロ残っているが、デボラの作るポテトサラダは、ほぼ粒の無い、完全ペースト状でまろやかな舌触りのするモノ、デボラの腕力で潰し込まれている。
さらに味付けに岩塩が振られている。
オルボアで流通している塩の殆どが岩塩だが、粒が大ききく辛味が強い代物だ。
それらをデボラの腕力で、細かく磨り潰す事で、滑らかな舌触りに合う塩加減となっていた。
リリーの大好物の一品だ。
ベッティーナの所で食べたポテトサラダも美味しかったが、味付けに黒コショウが使われており、塩とは違う辛さだ。
リリー的には、デボラの作るポテトサラダが最高だった。
一応、作り方を教えてもらったのだが……
「なんだいその腰は!!もっと力を入れるんだよ!!じゃないと、ジャガイモが美味しくならないよ!!」
ケーテと一緒に教わったのだが、二人とも作り終えた頃には息も絶え絶えの状態だった。
『ジャガイモを潰す役目は黒騎士さんにお願いしましょう』
薄れゆく意識の中で、そう思ったリリーだ。
そして今、リリーはスプーンで掬ったポテトサラダを堪能してる所だった。
ひと口掬って口に入れれば笑顔になる、それはもう、見てるデボラが嬉しそうな顔をする程、美味しそうに食べていた
「あらあら~、ご満悦ねぇ~」
そう言って、フラリとリリーの居るテーブルへと近寄って来たのは『神官見習いジルリオーネ』だった。
右手に持つコップからは果実の香りがする。
僅かに頬を赤くしたその表情は、蠱惑的で色気が漂う。
金髪の髪を掻き分けながら近寄るその姿を見た瞬間、リリーは後ろへと飛び退いていた。
その行動は一瞬だった。
素早くスプーンを置くと同時に椅子から立ち上がり、後ろへと重心を移動させる。
背もたれに背中が当たり、ゆっくりと倒れだすその動きに合わせて足をがに股にし、背もたれを跨ぐ様にする。
その状態から両手でテーブルの縁を押し、勢いを付ける。
そのまま後ろの壁へ背中をぶつけ、一瞬息が止まりそうになるが、その痛みを堪えて両胸をガードする様に左手で覆う。
そして右手をクロスさせる様に左手に絡ませ、股関の間へと降ろし、そのまま内股に右手首当たりから挟み込む。
そこまでガードを固めたリリーの姿に、その場の全員の視線が集中する。
「いやん、リリーちゃんったらガード硬いわ」
顎の下に指を這わせながら、妖艶な目を向けるジルリオーネ。
その視線を受けたリリーは「ぐるる」と小さな唸り声の様なモノを出す。
その姿はまるで
「「「「猫だ(ね)(だわ)(みたい)!!」」」」
それぞれが呟く。
一人だけ
「仲間にゃ!!」
っと、嬉しそうな声を上げている者もいたが……
カウンター席に座って居た二人組で、獣人族とエルフの女性だった。
彼女らは、この宿屋に泊まっている客ではなく、近くの安アパートに住む冒険者だ。
『ギルドからの仕事帰りに晩御飯を準備するのが面倒だ』との理由からデボラの宿屋へと寄ると、そのままご飯を食べて帰るのか日課だった。
そんな面々の見てる前で、リリーとジルリオーネは対峙していた。
「そんなに怖い顔しないで~、ちょっとお話したかっただけよ?」
「こ……来ないで……下さい!!」
笑みを浮かべながら近付くジルリオーネに対して、涙目になりながら壁を背にしてジリジリと横移動するリリー。
そんな二人の間に割り込む人影があった。
「いい加減になさい、ジルリオーネ」
「おやおや?何のつもりかな?ケーテちゃん?」
割り込んで来たのは修道士のケーテだった。
二人はかなり近い距離でにらみ会う。
「何のつもりも何も、嫌がる人に近寄るのはどうかと言ってるのよ?」
「あらあら、何をもって嫌がっていると言うのかしら?」
「どう見ても嫌がってるでしょ?それとも、北の神官様は、嫌がる人というモノがどういうモノか分からないのかしら?」
「あらあらまあまあ、西の女神に仕える修道士には、愛ある行動がその様に写るの?これはビックリ~」
そう言い出す二人の周りでは、何やら不穏な空気が渦巻きだす。
それに気付いた剣士のレオナ逹が、椅子やテーブルをケーテとジルリオーネから離して行く。
その行動に気付いたリリーも、同じ様にテーブルを動かそうとする……が、肝心のテーブルはびくともしない。
『何だか分からないけど、このままじゃ料理が~!!』
ポテトサラダの器を持って焦るリリーの後ろから黒い手が伸びてくる。
いつの間にか、リリーの後ろに黒騎士が立っていた。
そして、右手で椅子を 左手でテーブルを軽々と持ち上げ、壁際へと置く。
「あ……ありがとう……クロノ兄」
お礼を言うリリーの頭を軽く撫でる黒騎士。
しかし、リリー逹の目の前では攻撃ならぬ口撃が激しくなっていた。
「愛ある行動に縛りはないのよ?」
「貴女の愛とやらは、一方的だと言ってるのですわ」
いつの間にか、『愛とは何か』と言う話になっていた。
「こ……これは?!」
困惑顔のリリーだったが、次第に脱線していく会話に何とも言えない顔をする。
「アンタら……特にジルは何がしたかったんだい?」
「って、そんな事を言ってる場合じゃないのよ!
!」
デボラの声に『ハッ』と我に帰ったジルリオーネは、直ぐ様リリーを確認すると素早く近づき肩を掴む。
そして……
「リリーちゃん、ちょっと私の部屋に来てくれない?」
『ごん』
「いったぁ~い?!」
部屋へ来て宣言を聞いた瞬間、デボラの拳骨がジルリオーネの頭に炸裂していた。
「ジル、アンタねぇ……こんな時までそれかい?」
「ち……違うのよぉ~そうじゃないのぉ~」
頭を押さえながらも反論するジルリオーネ。
そんなジルリオーネを何とも言えない顔で見つめる面々。
「私は、リリーちゃんを守る為の装備を渡したくて言ったのよ」
「装備ったって……アンタら神官が使ってる様なモノで何があるってんだい?」
「貞操帯」
『『『ごん』』』
ジルリオーネが言った瞬間、デボラだけではなく、レオナ逹まで拳骨を落としていた。
「ちょっとぉ!!酷くない?」
「ジル、アンタって娘は……」
「何考えてるのよ!!」
「無いわ~、それは無いわ~」
「最低だな」
ジルリオーネの反論に、デボラ、ケーテ、レオナ、剣士のピーアと次々と罵声が飛ぶ。
肝心のリリーはと言うと……
「えっと……『てーそーたい』って……何ですか?」
そもそもの意味を知らずに居た。
「ふふふ、貞操帯ってのはねぇ~」
「子供に余計な事教えるんじゃないよ!!」
デボラから、さらに拳骨を食らうジルリオーネと、不思議顔のリリー。
デボラの宿屋は、何時も以上に騒がしい時が過ぎて行く。
ω・`)ノシ{次からゴブリン討伐戦です……今度こそ……