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その頃の……2

遅くなり申し訳ありません。


(へ;_ _)へ

ー辺境の冒険者達はー


オルボア領西、広大な森の中、少し開けた場所で五台の馬車が所狭しと並べられていた。

その馬車の横では、馬車の持ち主と思われる人達が、焚き火をしながら食事の用意をしている。

彼らは、今回だけ一緒に行動している商人達だ。


そんな彼らから少し離れた場所、商人達を守る様な位置に、武装した一団がいる、護衛役の冒険者達だ。

彼らも、焚き火を囲む様にしながら周囲の警戒をしている。


「後七日か……」


革鎧を着込み腰に剣を下げた状態で、指折り数えてガックリと肩を落とすのは冒険者のアベルだ。


「アベルうるさい……」


目の前で、鍋に水を張り火にかけていた……何故か、鉄の胸鎧にエプロンを着けた……戦士が飽きれた声で言う。


「やっと溜め息つかなくなったと思ったら……」

「な……なんだよグルガル、別に帰る日が何時か心配したって良いだろ?」

「……そうじゃない」


グルガルと呼ばれた戦士、アベルのバーティーで前衛を勤める重装備の彼は、塩を一掴みして鍋に入れる。

武骨な見た目とは裏腹に、彼は料理が得意だ。


「じゃあ一体何だよ?」

「何度も言ってるだろ?あの娘の事は忘れるべきだって」


オルボアの街を出て六日、ゴブリンと森林狼の襲撃に会う事数回。

流石に護衛する冒険者の数が多いせいか、大事になる事も無く、全体としては順調と言って良かった。

商売の方も順調で、今日までに周った村四ヶ所では何の問題もなく進んでいた。

ただ、各村にオルボア領主からの伝令が伝えられていたらしく、ゴブリン進行の話で持ちきりだった。

さらに、そのオルボアから来たと言う事で、各村の住人から「オルボアはどうなっている?」「この村は大丈夫か?」等、様々な質問が来て辟易する事となった。


そんな中でも、オルボアへ帰る事を楽しみにしているアベルの態度に仲間だけではなく、他の冒険者達からも何とも言えない顔を向けられる事となる。


そんな現状にウンザリした顔をしながら鍋をかき混ぜていると


「おっ、良い匂いだな?」


陽気な声が聞こえてくる。

声の方を見ると、一人の冒険者が軽く手を振りながら此方に向かって来る。

確か……最後尾の護衛についてるパーティーの?

アベルが彼の顔を見て記憶を探る。

出発前に軽く挨拶をした程度だが、顔は覚えていた。

そんな彼、最後尾のパーティーの警戒担当ハンターが一人でこっちに来た理由が分からない。


「あ~そんなに警戒すんなって。何もしねぇよ」


どうやら顔に出ていたらしい。

自分の顔を押さえたアベルが「すまない」と一言謝罪の言葉を出す。


「いや、いいって事よ。それより……だ、チョイと話があって来たんだ」


飄々とした感じで近づくと、鍋の近くに座り込む。


「お~すっげぇ~美味そうだな?」

「……食うか?」

「いや、それは悪いから良いよ」


味付けをしていたグルガルの言葉に、笑いながら断りを入れる。

どうやら飯を貰いに来た訳では無いらしい。


「この先の村の話は聞いてるかい?」

「この先?」


そう切り出した所に、丁度森の中に罠を設置して来た仲間が帰って来た。


その内の一人、同じハンターが目線を合わせる。

その一瞬、二人のハンターはアベル達が気付かない早さで合図を出し合う。

『盗賊ギルド』の符丁、指の動き『だけ』、僅か一秒程度。


二人の顔色が変わった事は気付いたが、『何があった』とは聞かない。

それが『冒険者の掟』であり、相手が『盗賊ギルド』であっても適用される。

二人のハンターが目線を外すと、何時もの雰囲気に変わる。


「それで、僕達に何の御用で?」

「あぁ、それなんだが……この先の村の事は何処まで知ってるだい?」


この先?

アベルだけではなく、全員の顔が疑問に固まる。

その表情を見て


「あ~その顔だと何も知らなかった様だな」


そう言うと、『ズィー』と名乗ったハンターは苦笑いをする。

彼の話はこうだ。


今回、こんな状態化で急きょ商人が出る事になった理由、それが、今から行く辺境の小さな村からの要望だった。

ズィー達の所の商人が、毎月行っている小さな村。

この聖王国で、一番西にあるのではないかと言われている村は今、ある問題を抱えていた。


「襲撃?」

「あぁ、詳しい日付は分からんが、西の端、小さな村が襲われた……らしい」

「らしい?」


なんとも煮え切らない発言に、アベルから疑問の声が上がる。


「あぁ、そうなんだよ。だから困っててな」


ズィーは肩を竦めて答える。

実の所、アベル達も疑問に思ってた事があった。

辺境の地は『自給自足』がモットー、だから商隊が頻繁に訪れる事も少ない。

だから今回、西の村々に五台もの馬車が出るのが異常とも言える……のだが、


「これから周わる村々は全部、武器と防具の注文なんだよ」

「辺境の地で武器と防具?」

「あぁ……粉臭いだろ?」


そう言って「ニヤリ」と笑いかけるズィー。


「確か……聖王国法では、辺境の地での武装は制限があった様な?」


グルガルが鍋の下から薪を掻き出しつつ聞いてくる。


聖王国だけではなく、各地方の村や町で『大量の武装』を買うには許可がいる。

それは『地方から国家転覆を狙う輩が出ないとは限らない』との考え方のせいなのだが……


「だから、この商隊なのさ」

「?」

「……なるほど、数を揃えたいが為の商人達か」


疑問顔のアベル達の中、一人だけ納得顔の魔法使いだった。


「つまり、この五台の馬車に『大量の武装を分散させた』って訳だ」


その言葉に全員の視線が魔法使いに集まる。

その裏に潜む可能性……


「アンタ……ズィーだっけ?が、此方に来たのはその件か……で、何故俺達の所に来たんだ?見て分かると思うが、俺達は何も知らされてないぜ?」


グルガルの質問に


「その様だな。まぁ、それならそれで良かったよ」


先程までの笑み……作り笑いでは無く、本心から「ホッ」とした顔をするズィー。


『なるほど、盗賊ギルドに関してるハズのハンターが、この大量の武装運搬に関わっているか……かま掛けに来たって訳だ……って事は、彼を動かしたのは……オルボア領主か王国?』


自分達の仲間であるハンターを見ながら、そう結論付けるアベル。

そして、さっきの符丁もその件を知る為のモノだろう。


「俺の知る限りだと、被害に合ったのは老魔道具師一人だそうだ。何でも辺境で『孫娘』と悠々自適な生活をしてた所、『黒い鎧を着た大男』に襲われた……らしい」

「「「「ん?」」」」


今出て来た『いくつかのキーワード』にアベル達が反応する。


「どうした?何か知ってる事でも?」

「あ~いや、その孫娘の名前は分からないかい?」


アベルの頭の中では『よく知る少女』の顔がチラチラと浮かんでたのだが……


「すまんが、そこまでの情報は無いんだ。ただ、その孫娘は拐われた……らしい」

「また『らしい』かよ」


グルガルのウンザリした言葉が周囲に響く。


「まぁ、俺らにも詳しい事は届いてないからな。兎に角だ、この先の村で何か起こるかもしれねぇが、出来るだけ気を付けろって言いたかったんだよ」


そう言うと、音も立てずに立ち上がったズィーは、アベル達に手を振りながら自分の仲間が居る馬車へと向かって行く。


「なぁ……その孫娘って……」

「いや違うんじゃないかな?」

「でも、黒い鎧の……」

「「「「……」」」」


アベルだけでは無く、仲間達も、つい最近関わってしまった『黒髪の少女』と『黒い騎士』を想像し、何とも言えない顔になる。

そして、西の森は真っ暗闇へと落ちて行く。

今週中にもう一つ、ショート話を書く……予定。


ω・`)ノシ{がんばりますから……見捨てないで?

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