勧誘されました
タイトル名を「漆黒の騎士は……」から「黒騎士は……」に変更しました。
え?理由?本文書いてて、漆黒なのか黒なのか「私自身」が分からなくなってきたので(汗)
冒険者仲間が言っていた。
慣れてくると、歩きながら寝る、立った状態で寝る、なんて事が出来る……らしい。
「僕には出来なかった……」
そんな器用な事出来る人間なんていない……っと思ってたら
『例の黒騎士が野営地を不眠不休で周囲警戒してる』
「ウソだろ……おい?!」
ちょっと、冒険者としての自信が無くなりそうだ。
ーーー
ゴブリンの襲撃から半日が経ち、『オルボア』の街までもう少しの所に来た。
街道を外れ、草原側へと馬車を進ませ、野営準備を始める。
森側に対して馬車を『く』の字に設置する。
こうすれば、森からの襲撃を馬車本体で防ぎつつ、回り込んできた敵を倒す戦法が使えるようになる……気休め程度だが
馬車と馬車の真ん中に石で釜戸を作り、鍋を置き水を入れる。
街までもう少しと言う事で、夕食はケチらず残りの食材を入れる。
食材を煮込みながら、アベルはリリーを探す……っと、馬車から少し離れた岩場に腰掛けていた。
『もしかして、夕食を遠慮してるのかな?』
そう思ったアベルは、一声掛けようとした……のだが
『ひゅっ!!』
軽い風切り音が聞こえたと思った瞬間、傍らにいた黒い騎士が姿を消していた。
「はぁ?!」
何の初動も無く消えたのだ、気配すらも察知出来ない。
突然の事に口をパクパクさせていると、こちらに気付いたリリーが微笑みながら歩いて来る。
両手一杯のキノコを持って。
「あの……これ、見つけて……来ました」
「あ……あぁ」
どうやら、例の黒い騎士にキノコ取りをお願いしたらしい。
リリーの手の中のキノコを確認すると、まぁ……非常に残念な事に、半分は食べられないモノが混じっていた。
「えっと……リリーちゃんは、これを食べてたのかい?」
まぁ……悪意が無いと思いたいが、もしもの事を考えて聞く、すると
「いえ、移動中は……火が使えなかったので……キノコの類いは食べて……なかったです」
どうやら、こちらの顔色を見て不安になったらしい。なので
「あ~リリーちゃん、このキノコだけど、コレとコレ、それとコレは毒があるんだ、だから、今後見つけても食べちゃダメだよ?」
「ど……毒?!」
真っ青な顔をしたリリー、どうやら本気で気付いてなかったようだ。
『流石に、毒がある食材はちゃんと教えてとかないと』
苦笑いをしながらアベルは、毒の無いキノコを一つ一つ丁寧に教えていく。冒険者なら初期に習う事なのだが……
「そう言えば、リリーちゃんやあの……黒い騎士さん?は、冒険者にならないのかい?」
「冒険者……ですか?」
「そうそう、旅途中で街に寄る際、冒険者として登録しておけば、出入りが楽になるよ」
そう、冒険者としてのメリットは、登録さえちゃんとしておけば、身元保証になると言う事である。勿論、デメリットもあるのだが……
「失礼だけど、リリーちゃん達は身元を保証するモノはあるのかい?」
旅をする際は、街や村などて『身元保証書』を発行してもらわなければならないのだが……
「身元……ですか?えっと……祖父からの手紙が……あります」
「手紙?」
貴族や軍関係者、宮廷魔術士など有名な人達が身元を保証する事はある、が、あくまでも『有名な人達』である。
無名な一般人が『誰々は無害です』と手紙で書いた所で無意味。
所謂、信用度と言うモノが違う訳で。
「リリーちゃんのお爺さんは有名な人だったのかい?例えば、軍属とか宮廷魔術士とか」
貴族は無いと思いたい所だけど……まさか、没落貴族?
「いえ……そんな話は聞いた事……無いです。ただ……」
「ただ?」
「お爺さん……祖父は、この手紙を持って行き冒険者になれと、そんな事を言ってました」
「ふむ」
顎に手を当てて考えて込む。手紙で冒険者になれと書いてあると言う事は、ギルドに何らかの伝があると言う事になる。っとなると……リリーちゃんのお爺さんさんは、其なりに有名な人と言う事に?
「……じゃあ、僕達と一緒にオルボアの街へ行って、冒険者登録しないかい?」
「え?」
どうやらリリーは、街の近くまで行ってお別れだと思っていたようだ、っとは言え、道中助けてもらった以上、彼女にも黒い騎士にもお礼をしなければと考えていたし、何より……
「今回のゴブリン襲撃の件は、ギルドに報告しないといけないんだ、で、当然、君達の事を報告しなければならない、たから、ついでに登録でもって思ったんだが」
アベル自身にも打算が無かった訳でもない。
旅先で素質ある人を見つけたら勧誘する、辺境の地では、数少ない人的資源確保に動く事も冒険者としての役目であったし、何より
「冒険者登録してもらうと、紹介料が貰えるんだよ」
とても良い笑顔でウインクするアベル、何故か真っ赤な顔になるリリー、その背後に直立不動で佇む両手一杯のキノコを持った黒い騎士、その光景を馬車の近くで見ているアベルの仲間達が心の中で叫ぶ。
『アベルー後ろ後ろ!!』
この話って、週1~2回更新のハズだったのに……何で毎日更新してるんでしょうか私?