表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/121

待機する事になってしまいました

プロットは早めに出来ていたハズなのに、中々文章に出来ず、こんな話になってしまいました。


;・ω・){どうしてこうなった?!

西方最大の都市オルボア。


二百年前は、人口百人にも満たない小さな砦だった。

周辺も木々に囲まれ、開拓しようと外に出れば、何処からともなくモンスターが現れる、そんな危険な場所だった。


そんな小さな砦とその周辺を領土として与えられたのは、当時、辺境伯に任命されたばかりの成り上がり貴族だった。

彼は、一族全員を連れて砦へと赴くと、周辺のモンスターを狩りだした。

一族でも特に剣に優れた者を中心とし、残った者達は伐採を請け負う。

そうして長い年月を掛けて、砦一帯を開拓していった。


いつしか砦は大きな村となり、町となり、現在の大都市へと変貌していく。

成り上がり貴族の土地として揶揄されてきた地は、いつしか王国一の穀倉地帯へとなった。


西側に広がる森林地帯、それを伐採、開拓したその一族こそ、オルボア領主『バルトルト』の祖先でもあった。


そうして拡大されたオルボアの街が、今ゴブリン大繁殖のウワサに混乱していた。


「百を越えるゴブリンが街に向かっている」

「西の外れの村が滅ぼされた」

「旅人が襲われ食い殺された」


等々、何処から出たのか不明のウワサが飛び交っている。


そこで、バルトルトは冒険者ギルドへと『西の森探索』を依頼して来た。

いきなり軍を動かすよりも、探索に慣れた冒険者を使う事で、国に対して無駄な緊張感を出さない配慮を心掛けたのだった。


ただし、万に一つ冒険者側が失敗する可能性も考慮し、何時でも軍を派遣出来る様に、国王へ「騎士団を中心とした軍の派遣」の書簡も提出していた。



ーーー

そんな緊張感のあるオルボア冒険者ギルド、入り口を入ると正面には五つのカウンターが合った。

入り口に近い所から「銅クラスの冒険者、初心者用受付」「銀クラスの冒険者用受付」「金クラス用受付」と並んでいる。


銅クラスの冒険者用の受付が三つと一番多く、銀と金が一つずつになっている。

大都市での配置だが、地方の小さな町や村になると、受付一つから二つで併用する所が多い。


王都程では無いが、冒険者の数もそれなりに多い為、カウンター数も同じく多かった。

もっとも、金用は使用頻度が少なく、銀用と併用される事が多いのだが……


そして、カウンターの前には、軽食用の食堂があった。

ここは、冒険に出る前の腹ごしらえと作戦会議をする為の場でもある。

食事は、パンと肉料理を中心とした物、酒はアルコールの少ない混ぜ物入りのエール、値段も低めに説定されている為、駆け出しから中堅までの冒険者が愛用する場でもある。


その食堂から奥へと続く出入り口を進むと、本格的な酒場へと変わる。

食事の内容はパンと肉料理とあまり変わらないが、値段が少し上がり、酒もエールだけではなく、ワイン等アルコール度数の高い物が出てくる様になる。


ここを利用するのは、クエストが終わり、それなりの報酬を受け取った事で気持ちが大きくなった者達だ。

彼らは、受け取った報酬を惜し気もなく酒へと注ぎ込む。

そうする事で、ギルド内にも、取引をする街にもお金が落ち、経済が動く。


街の住人は、基本冒険者を嫌う。

それは、彼らが傍若無人な人種に見えるからだ。

ただそれでも、彼らが居る事で街にお金が落ち、自分達の生活へも影響する事が分かっているので口を塞いでいるに過ぎない。


そんな冒険者ギルドでの食料と酒の取引量が一気に上がっていた。

取引をしている商人を中心にウワサが飛び交う。


「冒険者ギルドが何かをしそうだ」


と。

そのウワサが、ゴブリン大繁殖と合わさって、更なるウワサへと変貌していく。



ーーー

冒険者ギルドの酒場に「場違い」な者が居た。

艶の無い漆黒の鎧を着込んだ騎士と黒髪黒目の少女。

銅クラスの冒険者として、ある意味目立ってしまった『黒騎士』と『リリー』の二人だ。


リリーは目の前のジョッキをジッと見ている。

中に注がれているのは少量の蜂蜜の入ったミルクだ。

酒場側では無く、食堂側から貰って来た物だった。

何しろリリーは酒に弱い。

デホラの宿屋で倒れてからは、度数の低い酒であっても飲まない様心掛けていた。


『初めての二日酔いと言うのは地獄でしたから』


果実酒を飲んだ次の日、半日も頭痛に悩まされる事となった。

ケーテが『状態異常回復』魔法を掛けてくれたが……それ以来、リリーはお酒と名の付く物は口にしていない。


『あの後、レオナさんが何かにつけて飲まそうとするんですよね……』


心の中で呟くと「はぁっ」と溜め息をつく。

そして、チラッと視線を周囲に向ける。


酒場は人だらけだった。

百人は収用出来るスペースのある酒場だったが、昼間だと言うのに、そこには六十人以上の人が居た。


そのほぼ全員が二人を見ている。

一番奥のカウンター席には四人の冒険者が居た。

彼らの首には金色のプレートが見えている。

ベンノの率いるメンバーだ。

ベンノの話によると、二月前に金に昇格したばかりだと言う。

それまではベンノ一人だけが金クラスだった。

彼らの目線はリリーよりも黒騎士を見ている。

ジッと微動だにしない黒騎士を推し量る様な目で見ている。


そんな彼らから少し離れた所に居るのが、銀プレートを下げた一団。

リリーと黒騎士を半々が見ている。

その目は「不信」「警戒」「無視」だ。

彼ら中堅冒険者から見れば、リリー達は怪しい人物としか見れない。


駆け出しの小娘にフルプレートの鎧を音も無く着込む騎士、何処から見ても怪しいとしか言えない。

大半の中堅冒険者、「無視」を決め込んでいる者達は、リリー達の存在を認識しながらも『実力を見ていない内は評価しない』と言うスタンスだ。

逆に言えば、実力さえ認めさせれば、絡む事も侮る事も無いと言う事だった。


一番厄介なのは、リリーの側にいる銅色のプレートを見せている者達だ。

リリーの居るテーブルを囲む様に座る一団。

リリーの後ろのテーブルには五人、右側に六人、その斜め右側に六人の計十七名の冒険者達。


ここに居る冒険者達は、今回の探索の結果によっては、そのまま討伐隊へと加わる事になる。

その際の後続部隊として『銅クラスのベテラン』を中心に集められた。

しかし、今回に限っては戦闘能力を重視しており、結果、人間性は置き去りとなっている。

つまり……


「お~い酒だ~エール追加だ~!!」

「こっちも持って来い!!」

「早くしろよ!!」


リリーの右側の席の六人が怒鳴り散らす声が聞こえる。

リリー達を見ていた面々も、彼らの行いを見て眉を潜める。

今回集められた冒険者達には、酒場での待機を命じられていた。

その際、食事代は全てギルド持ちとなっている。

これは、討伐になる可能性と危険性、それらを考慮した結果の「飴と鞭」である。

どれだけ食べても飲んでも無料とくれば、いくらでもと思う者が出てもオカシくない。

しかし、彼らは何時引っ張り出されるか分からない現状、本来なら酒は嗜む程度にし、控えるべきなのだが……


リリーは右側の席の冒険者達をチラリと見て溜め息をつく。


テーブルの上に散乱した食べ物、周りに飛び散ったエールにワインの痕、大口を開けて下品に笑う男達、奥に居る人達と違い、全体的に汚い印象を与える風貌、その全てが「街の住人が嫌う冒険者像」そのものだった。


奥に居る人達は少々薄汚れた防具を着けているが、不潔な印象は与えない。

顔が良いとか整っていると言う意味ではなく、自然な振るまいが上品に見えるからだ。


そんな粗野な彼らだが、実力「だけ」はある。

能力「のみ」なら銀クラスなのだが、素行が悪過ぎる。

通常であれば呼ばれる事は無い彼らだが、今回は非常事態と言う事で、後続部隊として呼ばれている。

もし討伐となった場合、後続部隊は、前衛である金と中枢の銀から漏れたゴブリンを倒す役目を担う事になっていた。

だからこそ能力「のみ」でここに集める事となった……のだが


『どん』


ボーッとミルクの入ったジョッキを眺めていたリリーの前に、一回り大きなジョッキが置かれる。

驚いた顔を上げるとそこには、髭面の男が顔を近付けて来る。

口臭と体臭がとんでもなく臭い。


「ひぃっ?!」


思わず仰け反る様に後ろへ下がるリリー、髭面の

男は一言


「気に入らねぇ!!」


っと叫ぶ。

顔は赤を通り越して赤黒い、酒だけのせいでは無い様だ。


「気に入らねぇぞ小娘!!」


困惑した顔で男を見るリリー。

思わず


「はぁ?」


っと、生返事を返してしまう。

その答えに怒り顔になった男が、さらに顔を寄せて来ると、唾を撒き散らしながら怒鳴り散らす。


「何でてめぇみたいな小娘がここに居やがる?!大規模討伐だぞ?!てめぇの様な新人が参加して良い場所じゃねぇ!!ギルドポイント狙いか?!冗談じゃねぇ!!てめぇみたいな小娘が増えるだけでもポイントは減るんだよ!!分かってんのか小娘ぇー!!」


一息に言われて「ポカーン」とした顔を見せるリリー。


ギルドポイントとは、それぞれの依頼をクリアーする事で貰える物だ。

このポイントによって上のクラスへと昇格させる目安へとなっている。

ただし、実際の所、素行や依頼者からの評価も関係してくる為、クリアー数「だけ」でどうにかなるモノでもない。

例えば、薬草採取の様な依頼は何日かかっても一ポイントにしかならないが、モンスター討伐なら一回で十ポイントを越える場合もある。


そして今回の依頼は、討伐人数に対して割った数値が入る様だ。

彼らの様な銅から銀へと上がりたいと願う者達にとっては、一番の稼ぎ時だ。

そんな所に、新人のリリー達が来ればどうなるが……


「ふざけんなよ、ポイント狙いのガキなんぞ邪魔だ、さっさと帰れ!!」

『帰れるのなら帰ってます』


心の中でツッコミを入れるリリーだったが、どうやら色々と顔に出てしまった様だった。

髭面の男がプルプルと震えだす。

怒りのあまり、額の血管が大きく浮き出る。

その姿に『ヤバイ』と感じたが、既に遅かった。


「このガキゃー!!」


髭面の男の右手がリリーの首へと延びてくる。

その光景を見た瞬間、今まであった事を思い出す。


『色んな人に絡まれる➡リリーに手を上げる➡黒騎士が暴走➡相手大ケガ』


ハッとした顔で髭面の男を見る。


『このままじゃ、また黒騎士さんが暴走しちゃう?!』


次の瞬間、リリーは首筋に延びて来た男の小指を両手で握り絞め、外側へと押し込む。


『ぼきっ』


っと、鈍い音が酒場内に響き渡る。

ひと呼吸置いて


「ぎぁぁぁぁー俺の指がぁぁぁぁー?!」


男の小指があらぬ方へと曲がっていた。

完全に折れている。


「あっ……その……えっと……」


デボラとケーテに習った護身術、小指を掴んで捻る「だけ」で相手を無効化出来る……ハズが、逆にやり過ぎてしまい、折ってしまった。

それに慌てたリリーが男へと近寄ろうとするが、その前に


「んなっ?!」

「てめぇ?!」

「ガキがぁーやりやがったな?!」


男の仲間達が一斉に立ち上がる。

最早、話し合いは無理と言える状況だったが、リリーがそっちに目を向けると


『ごとっ、ごとっ、ごとっ、ごとっ、ごとっ』


五人の冒険者達がテーブルへと突っ伏して居た。

彼らの後ろに立つのは、右手を手刀の形にした黒騎士だった。

その黒騎士の姿を見たリリーは、頭を押さえながら


「あぁ~……やっぱり……」


結局、予想してた通りの光景に天井を見上げる。


そんなリリーとは別の視線があった。

金プレートの四人組は、黒騎士を見た後、顔を見合わせる。


「見えたか?」

「微かに」

「途中までは」

「初動は見えなかった」


銀プレートに至っては、何がどうなったのかさえ分からない顔をしていた。


暫くするとギルドの職員が数名やって来て、気絶している五人と小指を押さえて蹲る髭面の男を引き摺りながら去って行く。

ポケーっとした顔で見送ったリリーは、


「あの……私……の方……は?」


喧嘩両成敗がギルドの方針、なら自分と黒騎士も連れて行かれるハズだと思ったのだが……


放置されたリリーは、再度周囲を見渡す。

残された銅プレートの冒険者達はリリー達から距離を取り、銀プレートの冒険者達は、物珍しげな目でジロジロみてくる。

金プレートに至っては、警戒心の目を向けてくる。


『また目立ってしまいました?!』


黒騎士を目立せない様に考えて行動したつもりが、それ以上の注目を受けてしまい、頭を抱えるリリーだった。

次こそはもっと濃い内容にしたい……です。

ω・)ノシ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ