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登場してしまいました

かなり遅れて申し訳ありません。

( ノ;_ _)ノ

フロアー内ではざわめきが起こっていた。


一つはいきなり動き出した黒騎士。近くに居た人々は、飾りと思ってた黒騎士が動き出した事で、軽いパニック状態になっていた。


「皆様、落ち着いて下さい、その鎧は中に人が入っています、ご安心を」


人が入っているからと言って安心に繋がる事は無いのだが……数名の気絶者が出たが、パニックは最小で済んでいた。


パニックが収まりだすと、次は入室してきた二人に目線が集中する。


「カタリーナ・アフィレス騎士伯夫人?」

「元リーデンベルク家の方が何故表舞台に?」

「上位貴族の恥さらし」


会場内の誰かが呟く。

騎士伯夫人と呟いた人々は、20~30代の若い世代、元リーデンベルク家と呟いた人々は40代を中心とした世代、最後に恥さらしと呟いたのは50~60代の老人達だった。



ーーー

カタリーナ・フォン・リーデンベルク、元リーデンベルク公爵家の次女であったが、アフィレス家の長男と恋仲になり出奔。

当時の聖王国内では特に上位貴族からの批判が殺到した。


聖王国では上から「王」「大公」「公爵」「伯爵」「辺境伯」「騎士伯」「男爵」の順位付けがされている。

リーデンベルク家は公爵、過去には王妃を出した事もある名門であった。


そんなリーデンベルク家との繋がりを持とうと、各貴族に狙われたのが、長女ではなく次女であったカタリーナだった。

当時のカタリーナを知るベッティーナにすれば、それは酷い有り様。

まだ10歳にもなっていないカタリーナを廻り、貴族の醜い争いを見る羽目になる。


そうして心が冷えて行くカタリーナに対し、初めて家柄を見る事無く接したのが、アフィレス家だった。


「もっと明るく振る舞えよカタリーナ、美人が台無しだ」


カタリーナと同年代だったアフィレス家の長男は、騎士見習いになったばかりの男の子だった。

他の貴族と違い気さくに話し掛ける彼に対し、いつしかカタリーナは引かれていった。


しかしカタリーナは公爵、騎士伯のアフィレス家ではどうにもならない身分差の中、カタリーナは実力行使に移った。

父と母に絶縁宣言をし、家を飛び出したのだった。

普通であれば、絶対に無理な計画が通ってしまったのは、色々な偶然が重なった結果だった。


一週間後、街中で見つかり連れ戻されたカタリーナは、公爵家の者とは思えぬ程の格好だったと言われている。

実際は、冒険者として名を売り出し中だったデボラと一緒にクエストをしていたのだが……ちなみに、カタリーナには少しだけ魔法使いとしての才能があったらしく、下級冒険者として登録し、簡単なクエストをしていたのだった。


その貴族らしからぬ格好を見た両親が激怒、そのまま一般人に落とされ家族とは完全な絶縁状態へと突入した。


「私、一般人になりましたわ、これならアフィレス家も受け入れてもらえますかしら?」


そう言って門前へと訪れたカタリーナを見たアフィレス家の長男は、その豪気な言い様に関心し、自ら両親を説得して伴侶にしたのだった。


ちなみに、この話が市政に広く伝わり、今では大恋愛物の王道として、本に劇にと人気のコンテンツとなっていた。



ーーー

そんなカタリーナは、お茶会なども最低限の参加はしてても、決して目立った振舞いはしない様心掛けていた……ハズだった。


その彼女が、領主主催の社交界にてこんな振舞いをするなど、会場に居る誰もが予想つかない事だった。


領主へと一つ頭を下げ、会場の方へと体を向けると


「領主様、そして会場の皆様方、この様な事をして申し訳ありません。ですが、どうしても皆様方に伝えたき事がありましたの」


力強い声で会場全体へと響く様に話し掛ける。

そして一歩後ろへと下がると、リリーが前へと進んでくる。



ーーー

リリーがカタリーナに言われていた事、会場に入ったらカタリーナの動きに合わせて歩く。

カタリーナが一歩前に進めば同じだけ進む、その間は下を向き、決して周りに視線を移さない事。

そして……


『カタリーナ様が横に引いたら正面に領主様がおられるから次は……』


カタリーナの開けた間にリリーが進む、そして正面領主に対し、ゆっくりと『淑女の礼』をとる。


その姿勢の良さに周囲が注目する。

そして、同じ様にゆっくりと顔を上げ、そっと目を開ける。

漆黒の黒い瞳を見た領主が驚いた顔を見せる。その右隣に居た夫人も驚きの表情を見せるが、反対側に居たベッティーナが楽しげな顔を向けている。その顔は正しく「してやったり」と言うしか無い笑顔だった。


楽しげなベッティーナを『チラリ』と見た後、体を左側会場へと向ける。

そこには百人を越える貴族が居た。全員がリリーの一挙手一投足に注目している。

若手の人々は、その見た目、この西方では見られない黒髪黒目に目を取られる……が


「?!」


それぞれの方向から『悪意ある視線』が飛んでくる。

小さく聞こえる声は


「黒髪……悪魔……」

「汚れ……色」

「魔族……」


この街に来て二週間程になるリリーだったが、ここまで悪意ある視線と言葉を掛けられた事は無かった。

それは、この二十年程戦争が無かった事が理由なのだが……


この場に居る面々で、四十代の貴族は、戦争に直接関与してはいない。二十代~三十代になるともはや過去の話だ。しかし、五十代六十代は違う、年老いた男性は殺意ある目を女性は怨みの籠った目をそれぞれ向けて来る。

恐らく、彼等彼女等は何かしらの被害にあっていたのだろう。

街中でも年老いた人々がリリーから顔を背ける事は多々あったが、正面切っての悪意は初めてだった。


「リリーさん」


後ろから小さな声が聞こえる。

カタリーナの声で我に帰ったリリー、緊張していた手から力を抜き、深呼吸をする。


『大丈夫……カタリーナ様がそう言ってたから……』


ゆっくりと息を吸うと


「お初にお目にかかります、リリーと申します、この場に置ける無作法、誠に申し訳ありません」


ゆっくりと目線を下げ礼をする。



ーーー

リリーの挨拶、そして口上を後ろから見守りながら、カタリーナはゆっくりと周囲を確認する。


『十人……いえ、十一人って所かしら?』


リリーの口上が始まってからは、明らかな敵意を向ける者は減っていた。

それでも何人かは、まるで居殺すかの様な視線を向けている。


『彼方は確かブランドルク騎士伯、ご子息を先の戦争で失われたんでした、それ向こうはバトバレン男爵ね』


悪意ある視線を向けている者達は全員、身内を東の帝国との戦いで失った者達だった。


『その気持ちは分かるけど、当時、生まれていないリリーにその怒りを向けるのはお門違いだわ』


そっと溜め息を吐くカタリーナ、その瞬間


「その口上待った!!」


ホールに響く大きな声で待ったを掛けたのは、金色の髪にキツい目を宿した、現国王十番目の子、カール王子だった。

申し訳ありませんが、リアル都合により、こちらの更新を一週間に一回とさせていただきます。


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