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連れて行かれるようです

現在、大掃除の合間に書きまくってます。

( ノ;_ _)ノ

「それは『誇り』です」

「ほ……誇り?」


カタリーナの言葉に『こてん』と音を立てて首を傾げるリリー。


「そう誇り、プライドでも何でも良いわ。貴族はね、普通の人から見たらどうでも良い事でも全力を尽くすモノ。例えば今回の社交界もそう」


カタリーナはハンカチを取り出すと、そっとリリー涙を拭き取る。擦らないよう上から軽く押さえる様にしながら。


「社交界は、貴族達が情報交換する場所でもあり、自らの力量を知らしめる場でもあるの」


リリーの鼻にハンカチを当てると「はい、鼻を拭き取るわよ」と優しい声を掛ける。その言葉に真っ赤になりながらも


「あの……その……自分で出来ます……から」


っと、ハンカチを受け取ろうとするが


「いいから、はい鼻を噛んで」


ダンス練習の時と違い、まるで幼子に優しい声を掛ける様にカタリーナが囁く。


真っ赤な顔で鼻を噛み、その汚れたハンカチを「洗って返します」と伝えるリリーに構わずポケットに仕舞う。


「今回の社交界でどれだけの予算が動いたか分かるかしら?」


リリーは少し考えて『ふるふる』と左右に首を振る。恐らくとんでもない金額なのだろうが、それこそ想像が出来ないでいる。


「ふふふ、そうね……一般的な家族なら数百年は遊んで暮らせる程度かしら」


カタリーナの言葉に唖然とする。

四人家族が一月暮らすのに必要な金額は、おおよそ銀貨四~五枚、もちろん贅沢をしなければの話だが……

それを遊んで暮らせる金額となればどれ程なのか……


「ね、貴族って下らないでしょ?でもね、彼らはそれくらいしなけらばならないの、それが貴族だから」

「……」

「そんな貴族は他者の失敗をとても喜ぶの……特に盛大な予算を使った貴族に対しては……ね」


『びくっ』


思わずリリーの肩が跳ね上がる。貴族の失敗……つまりリリーがやってしまった事は……


「気付いてるかもしれないけど、何人かの貴族はリリーさんの失敗を聞いて嬉々として噂を流してると思うわ」

「あの……私……」


リリーの失敗……そう、よりにもよって王子相手に粗相をした事を……スカートの裾を掴んでた手を白くなる程握り締める。

そんなリリーをカタリーナが抱き締め


「大丈夫」


っと、背中をポンポンと軽く叩きながら落ち着かせようとする。


「私もね、初めての社交界でとんでもない粗相をしたの」

「か……カタリーナ様が……ですか?」

「えぇ、そうよ」


リリーが顔を上げると、とても楽しそうな顔をしたカタリーナが微笑んでいた。


「初めてのダンスで、相手の足を踏んだの」

「へっ?あ……足を?」

「えぇそうよ、しかも相手の方は骨まで折れてしまって」


口許に手をやり『クスクス』と小さく笑う。普段の輪としたカタリーナとは大違いであった。


「相手の方は騎士伯のご子息でね、最後まで我慢しながら踊って下さったのよ、ふふふ……男の子って馬鹿よね」

「カタリーナ様……」


その当時を思い出したのか、まるで少女の様な笑顔を見せる。


「しかもね~リリーちゃん、その騎士伯の男の子がカタリーナ様の旦那様なのよ~」

「ふ……フリーデ様?!」


カタリーナの後ろから、フリーデが笑みを浮かべながら近づいて来る。


「カタリーナ様ったらその時の事が原因でダンス練習を毎日やられる様になったの。今ではこの国一番の達人になる程に」

「エマ様まで……何故?!」


気が付けばリリーはカタリーナ達三人に囲まれて居た。


「もちろんリリーが心配だったからよ」


そう言うと優しくリリーの頭を撫でるエマ。


「んも~本当~に心配したのよリリーちゃん?」


相変わらず、間延びした話し方をしてくるフリーデ。


「あの……ごめんなさい……ご迷惑をお掛けしました」

「ふふふ、さてリリーさんも見つかった事ですし行きましょうか」

「えっ?」


行くって何処へ?そんな表情をするリリーに向かってカタリーナはニッコリ笑い


「本当の貴族って言うのはね、失敗を成功に変える事が出来る人達の事を言うのよ」


そう言いながらリリーの手を引き部屋を出ると、外では五人のメイドが待機していた。

彼女達の顔を見てリリーの顔がひきつる。何しろ、朝の準備時に散々リリーの身体をイジくりまわしたメイド達だったのだから。


冷や汗をかくリリーを見て、一番若いメイドが『ニヤリ』と笑った……ような気がした。



ーーー

会場では既に、貴族の子供達による社交界デビューの挨拶が始まっていた。

二階からフロアーへと続く階段をゆっくり降り、途中三メートル程の幅のデッキで優雅に挨拶を行い、自分の名とそれぞれが考えた口上を唱えてから一階へと降りてくる手順になっていた。

一階の階段近くでは、オルボア領主のバルトルトが降りて来た若い貴族達の個人的挨拶を受ける為待機している。その後はそれぞれ保護者の元へと赴き、今回参加している貴族への挨拶回りとなるのだが……


バルトルトの近くで様子を伺っていたベッティーナに、執事のデニスが近づき耳打ちをする。


「そう……リリーちゃんは見つかったのね」


口許を扇子で隠しながら、ホッとした表情を浮かべる。そんなベッティーナにデニスは


「カタリーナ様から伝言を預かっております」

「あら、何かしら?」

「はい、『リリー様のお色直しが暫く掛かってしまうのと、登場時の口上はこちらで考える』との事でした」

「そう……」


ベッティーナは顎に手を当て少し考えるが、顔をあげると


「カタリーナ様に『期待して待ってます』と伝えてくれるかしら?」

「はい、かしこまりました」


一礼をして静かに下がるデニス、それを見どけると正面に身体を向ける。

目の前では三人目の若い貴族が挨拶を終えた所だった。



ーーー

カールは少し焦っていた。っと言うのも、ベッティーナが『何も仕掛けてこない』からだ。

今まで集めた情報によると、例年であれば、早い段階で何かしらの動きを見せてくる筈なのだが……


『どうなってる?女狐め……何故動かん?』


さらに焦る原因がある、「弟のクルトが貴賓室で何かをしてしまった」と言う噂だった。

カールの周囲でヒソヒソ話をする貴族達が、聞こえるか聞こえないかの声音で喋る為、正確な内容は分からないが……


『まさか、それが原因で女狐が予定変更した……とか?』


カールとしては、女狐事ベッティーナが何かしらの余興を行った所に因縁を付け、この催しを台無しにするのが目的だった。

国内有数の貴族の催し、それにケチを付ける事になれば、例え王であっても表に出ざる負えなくなる。


カールはただ、自分の父である現国王に泥を被せたい『だけ』で動いていた。

それは、親の愛情を知らない子供が構って貰おうと必になっている様でもあった。

;´・ω・)ノシ{年末って大変ですよね~

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