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特訓してました

ショートですがお付き合いをm(_ _;m

「親父……俺、領主様の所へ行ってくる!!」


昼前になると決まって息子の『ジミー』がやって来る。毎日毎日……あの『リリー』と言う娘を助けろと言いに……だが、今日はいつもと違うらしい。


「ジミー……お前、何言ってるのか分かってるのか?」

「あぁ……今、領主様は王都からオルボアに戻って来てるらしい、ならオルボアに行って直接」

「ジミー!!」


『バン』と机を叩いて立ち上がる村長、この十日間、息子とのやり取りで疲れた顔を歪ませながら


「何度も言うが、あのリリーと言う娘とお前は何の関係も無い、分かっているのか?他人なんだぞ?」

「違う、俺とリリーは相思相愛、将来を誓った間柄だ!!」


この馬鹿息子は……この十日間でさらに拍車を掛けて暴走し出した、次期後継者のハズの息子が……


「……村から出る事は許さん!!」

「親父!!」

「だが、お前が捜索依頼を出すと言うなら関与しない、好きにしろ!!」

「親父?!」


月に一度、この村に訪れる商人に依頼書を渡し、冒険者ギルドにでも頼み込めと譲歩案を出す。


「ありがとう親父、これでリリーが」

「ただし、お前の金で……だ、私や村の資金は出せん!!」


やりたければ自分の力だけでやれ、こう言えば如何に愚鈍な息子でも諦めると……そう思った村長だったが


「分かった」


一言言って下がるジミー。

実はこのジミー、隠れてそれなりの資金を持ってたりするのだが、それを知らぬは父ばかり。


そして、この依頼書がリリーと黒騎士を追いかけ回す代物になるのだった。



ーーー

西方最大の都市『オルボア』、今日も晴天


本格的なレッスンに入って三日立ちました……えっと……そろそろ弱音を吐いても良いですか?リリーです。


「はい、そこでクルッとターン」


ひぇぇぇぇ~ちょっと待って下さい、目が回ります……


「何ですリリーさん、まだ五セット目ですよ?」

「ままま……待って下さいカタリーナ様……ダンス三日目の初心者に……五セットは……」


三日前から本格的に依頼を受けたのですが……そのとたん何故かダンス三昧です。


「何を言ってるんですか、当日はこの程度では済みません!!」

「ひっ?!」


カタリーナ様、目付きが怖いです。


「あらあら、カタリーナ様ったら気合い入っちゃって」


ベッティーナ様、呑気に紅茶飲みながら見学中ですか?すみません、助けて下さい。


「カタリーナ様のスイッチが入っちゃったら、もうどうしようもないわ」


そ……そんなぁ~


「でもリリーったら、ちゃんと形になってきましたわね」


え……エマ様、三日も踊り続ければ多少はマシになりますって


「あらホント~、最初はどうなるかと思ってましたわ~流石はリリーちゃん」


相変わらす『のほほん』ですね、フリーデ様……でも助けてくれないのですね?


「う~ん、赤いドレスも良いですが、ピンクと言うのも捨てがたいですわね」


ハンナ様……その沢山のドレスは一体……いや、分かってはいるのですが……その……多過ぎませんか?


「はいリリーさん、休憩終わりです、さぁ、キビキビと踊りなさい!!」

「は……はぃぃ~」


部屋の中……かなり広いんですが、そこに響き渡るカタリーナ様の手拍子の音と私の荒い息、そしてベッティーナ様達ご婦人方の笑い声……


「どうして……こうなった……んでしょう?」


ちなみに黒騎士さんは、部屋の隅で直立不動です。



ーーー

生地の厚い地味なドレス姿……練習用のドレスですが……で大の字に倒れてしまいました。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

「はい今日はここまで、まぁ、何とか見れるようにはなりましたねリリーさん?」

「は……はいカタリーナ様……ありがとう……ございま……す」


もう体力も限界です……私、運動は苦手なんです。


「まぁリリーったら、若いのにもうダメなの?」

「エマ様……無理を……言わないで……下さい」


「「あらあら、まぁまぁ」」


ベッティーナ様とフリーデ様はにこやかな笑みですか?はぁぁ~


「お水をどうぞ、リリー様」

「ありがとう……ございます……デニスさん……あの……私はただの冒険者ですので……様付けは……いらないです」


デニスさんはベッティーナ様の執事さんです、凄く有能なんだそうで。


「いえいえ、我が主の御客様であればこの対応が普通ですよリリー様」

「は……はぁ……」


私は様付けされる程じゃないんですが……取り合えずお水美味しいです。



ーーー

薄暗くなってきたオルボアの街、その北側でも大きな屋敷の一室に黒い鎧が佇んでいた。

目の前には立派な天涯付きのベッド、その上には高級そうな薄い衣装を着たリリーが静かに寝息を立てていた。


ダンスの特訓後、普段着に着替えてベッティーナ達とお茶会をしていたリリーだったのだが、疲れがピークに達したのかテーブルの片隅で船を漕ぎ、そのまま『パタン』と倒れて込むように寝てしまった。


それを見たベッティーナが


「今夜は泊まって行きなさいな」


と言いだした。一応黒騎士が身振り手振りで帰る事を伝えようとしたのだが、


「明日は早朝からドレスの準備よ?リリーちゃん、起きれるかしら?」


っと言われれば断る事も出来ず、結局一晩泊まって行く事となった。


「まぁ、リリーちゃんのお泊まり会?良いわね~私も宜しいかしら?」

「えぇ、部屋ならすぐに準備できますわ、どうせなら皆様も如何かしら?」

「じゃあ私も」


っと、他の面々も泊まる事となり、部屋はご婦人方の女子会と変貌していた。


「デニス、リリーちゃんとクロノさんを部屋に案内してあげて頂戴」

「承りました」


ベッティーナに対し、胸に手を当て会釈をし


「ではコチラへ」


リリーをお姫様抱っこした黒騎士を案内して部屋を出て行く。リリー達が部屋を出て行ったのを確認し


「これで準備は整いましたわねベッティーナ様」


カタリーナが静かに呟く。


「そうですわね、長い1年でしたわ」


紅茶を一口飲み、溜め息をつく。


「正直、リリーちゃんを巻き込む事には胸が痛みますわ」

「そうですわね~」


顔は陰りがあるのに『のほほん』とした口調のせいで、余り深刻そうに見えないフリーデ。


「とは言え、後はあちらの出方次第ですわ」


白地のドレスに赤いリボンを縫い付けながらハンナが言う。手だけは別物のように動かしながら。


「すべてが終わったら、報酬に少し色をつけてあげれば良いのではないかしら?リリーは冒険者なのですし」


エマの一言に全員が笑う。


「そう……ですわね、冒険者でしたわ」

「ついつい忘れてましたわ」

「本当ですね」

「ふふふ、不思議な娘ですね、リリーちゃんは」


海千山千の貴族社会の中で揉まれて来た面々は、リリーの素朴さに自分達には無いモノを感じていたのかもしれない。


「それでも、明日は利用させてもらうわ、1年前のお返しに」


そう言ったベッティーナの横顔は、リリーの見た事の無い冷たい笑みを張り付けていた。

続きは月曜までに ;=ω=)ノシ

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