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企んでるようです

短いですがお付き合いを

西方最大の都市『オルボア』、南北へと醜く伸びた形は長年の増設に次ぐ増設による結果だった。

上から見れば『瓢箪』のような形をした城壁、その北側は領主と上位の貴族が住む地域であった。


その北側の大きな舘の裏手では、三人の男女が椅子に腰掛け、目の前の景色を楽しんでいた。


「社交界までもう少しですわね、クリスタお姉様」


そう話し掛けたのは『ベッティーナ』であった。水色のドレスを着て、目の前の庭園を眺めている。

その向かいにいる優しげな顔立ちの女性、薄い緑のドレスを着、優雅に紅茶を飲みながら


「そうねベッティーナ、今回はどんな事をするのかしら?」


楽しそうな声音で聞く。その二人に


「はぁ……クリスタ、ベッティーナ、私としては普通の会を楽しみたいんだが……」


灰色がかった髪の男性が大袈裟に肩を竦める。


「あらあらアナタ、ベッティーナが参加するのに普通が良いだなんで、ふふふ」

「バルトルト様ったら、本当は楽しみにしてらっしゃるんでしょ?」


二人の女性にそう言われて、「やれやれ」と呟く。


その男性の名は『バルトルト』、このオルボアを中心とした地域の領主だ。代々この地を治めて来た一族であり、ベッティーナの姉クリスタの夫であった。

バルトルトは、紅茶を一口飲むと


「で、今回は前回よりは大人しい代物にしてくれるんだろうね?」


『ぎろり』と音が出そうな目をベッティーナに向けるが


「ふふふ、それは秘密ですわ」


意地の悪い笑顔を振り撒きながら唇の前に人差し指を置く。内緒と言いたいのだろう。

再度「やれやれ」と呟き頭を振る。


この地では成人を迎える貴族の子供が居ると、その年の領主主催の社交界で大人達相手に挨拶を行い、社交界デビューをさせる習わしがある。

今年はかなりの数の子供達が居るらしく、舘の方も準備で大忙しだった。ただ……


「去年の様な有り様だけは勘弁してくれよ、ベッティーナ」


去年の有り様、ベッティーナの遠縁に当たる男の子が貴族デビューと言う事で、ベッティーナが自ら手を掛けた結果、何と女装させて来たのであった、本人は『すぐにバレるだろう』と思いながら……

しかも、かなりの手間ヒマを掛けたせいで、同じ参加者の、女の子達よりも美人に仕上がるという結果に。

それに誰も気付かぬまま進み、中には「自分の孫の婚約者に」との申し出まで出てしまい、慌てて真相を話し開場を混乱させてしまったのである。

一部貴族からは「けしからん」との言葉が上がり、今年は直前に、性別検査をする話まで上がっている。

もちろん、全てを取り仕切るのは領主側なのだが……


「ベッティーナ……」

「あら、今年は大丈夫ですわ」


心底楽しそうな笑顔のベッティーナと、額に手を当てて渋い顔をするバルトルト、その後ろで老執事が


『旦那様、ファイトです』


っと、静かにエールを送っていた。



ーーー

「ねぇリリー、その……本当に大丈夫ですの?」

「えっ?大丈夫って……何が?」


自分の部屋へと戻ろうとしたリリーにケーテが声を掛けてくる。


「何ってその……指名の件で……」


胸の前で指をモジモジさせながら呟くケーテに


「私は大丈夫ですよ……ケーテさん」


リリーは満面の笑みで答える。

正直に言えば、向こうの勘違いだったとしても、今のリリーには『その依頼』を断る事が出来ない。


『やっと黒騎士さんを登録出来たんですから』


リリーだけであれば、最悪『商人ギルド』や『魔法ギルド』に再度登録し直すと言う手が使えるが……


『黒騎士さんだけじゃ無理よね~』


結果的に今回の件は引き受けるしか無い訳で、リリーには選択する権限すら無かった。ならば


「折角の仕事ですから……精一杯……頑張りたいと思うんです……それに」

「それに?」


ニッコリ笑うリリーと戸惑うケーテ


「今回、依頼料が……高いんです!!凄いんですよ!!」


拳を握りしめながら力説するリリー、それを『ちょっと』引いた目で見るケーテ、頬がピクピクと痙攣しているのだが


「なんと、一日……銀貨五枚……本番当日は……銀貨十枚ですよ?凄いんです……よ」

「あ……あぁ……そうですわね、凄いですわ」


言い淀むケーテ、確かに下位冒険者へのクエスト一覧を見れば、一日銀貨一枚が良い所だ。それ以上となれば、パーティを組んで挑む様な内容になってしまう。


「だから」

「?」

「ケーテさんは……気にしなくて良い……んですよ」

「?!」

「私は大丈夫……ですから」


そうやって笑うと自分の部屋の中へと入って行く。閉まった扉の前では『うつ向いたケーテ』が立ち竦んでいた。



ーーー

「あぁ~何やってんのよあの娘?!」


通路の角で隠れる様に見ていたレオナとその仲間達は、うつ向いてるケーテをそっと見てるだけだった。

元々、クエストを押し付けたと気にするケーテに


「そこまで言うなら、一言謝ってみたらどうだい?」


っと、発破を掛けたのだが……その結果が


「余計拗れたんじゃないの?」


魔法使いのエッバがそう呟くがレオナは


「う~ん、多分大丈夫じゃないかな?」


軽く返事を返す。


「根拠は?」

「無い」


相変わらす、このリーダーの無責任さは……っと、頭を抱えるエッバだった。

次は土曜までに仕上げます。

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