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勘違いされました

真面目な文の書き方忘れました(汗)

ここは西の果て、広大な森の中。

名も無い森の中を巨大な黒いモノが全力疾走していた。


その後方には、多数のかがり火が揺らめいている。

かがり火の持ち主達は、手に手に武器らしい物を持って、それなりの速度で進んでいた……か、徐々にその距離は離れだしている。


森の外は夜の闇。当然、木々が覆い繁る森の中はさらに暗い。

しかし、全力疾走するソレは、全く躊躇する事無く、右に左に、さらには木々の間に滑り込むように進んでいく。


木々の隙間から一瞬差し込んだ月明かりに照らされたのは、フルプレートの鎧姿だった。

全身を黒一色でまとめあげ、装飾も類いも無い武骨な作りの鎧。

そんな黒い鎧が、野性動物のような速度で森の中を疾走していた。


その黒い鎧の左肩の影がモゾモゾと動く。小さな女の子の顔が、暗闇の中うっすらと浮かび上がる。

年の頃は10を越えた感じの幼い少女、ここ西方では滅多に見られない黒髪に黒目、白いローブを着こみ、手には輝くミスリルロッドを持つ。

そして時折、後ろを振り替えっては溜め息を付く。


「なんでこんな事に……」


黒い鎧は放火の疑いで、少女は関係者或いは被害者として村人達から追われていた。



ーーー

少女の名は『リリー』、西方大陸の最果ての地で祖父と共に静かに暮らして来た。

物心ついた頃から父や母は無く、ただ祖父とだけ接していた。


祖父は高名な『魔導師』であった……らしい。

特に彼は、魔道具作製『エンチャント』能力が得意であった。

一般的な家庭用具、料理の為の火種を出したり洗浄の為の水を出したりする魔道具。

又、冒険者に対しては、攻撃力や防御力を上げる装備品作製などがあった。


彼女の祖父は、辺境で一般的な魔道具を作り、近隣の村々て売りさばき、その金で生活品を購入する、そんな生活を続けていた。


その祖父の元、魔導師としての修行を 当然孫娘のリリーも行っていたが……


「リリー……お前さん才能が無いのぅ」

「……」


リリーには魔導師としての才能が低かった。

道具に魔力を通しても上手く発動しなかったり、魔力を通す事が出来ても暴走したりと、ムラが有り過ぎた。

唯一祖父が認めたのは……


「魔力量『だけ』は豊富じゃのぉ」

「……」


リリーは魔力量が桁外れに多かった。祖父曰く


「ワシの十倍はあるかのぉ」


っと。だからこそ未熟なリリーでは、その桁外れの魔力を制御する事が出来なかった。


「ワシは小さなな火種を作れと言ったんじゃが」


彼の前に出ている炎は、まるでキャンプファイアであった。

着火用の魔道具を作ったハズが、何故か高火力な業火として再現されていた。


「リリーはまず、魔力を調整する事を覚えんとな」


飽きれた祖父の顔だけが、やけに鮮明に思い出される。

そんなある日、13歳になったリリーは、祖父からお使いを頼まれた。

東の果てまで行くお使いを……



ーーー

目の前は、家から東へ一時間程離れた所にある村。


「お爺さん……何で村の広場を転送先のポイントにしたんですか……」


祖父のテレポーターの魔法が発動した後、目を開ければ見慣れた広場、村人達がビックリしてこっちを見ています、当たり前です、いきなり人が現れたんですから。


彼女、『リリー』は空を見上げ遠い目をする。


この村には何度か来た事があった。

祖父の作った魔道具を売って、食料品や香辛料と交換したり……それなりに知り合いも居るハズであった。


『保存食とか売るってもらえるかな?』


ローブと一緒に持って来た銀貨の入った袋を確認し


『と……取り敢えず、フレンドリーに挨拶を……笑顔笑顔……』


微妙にコミュ症のリリー。


「あ……あの~こんにち……」

「大変だぁぁぁぁー火事だぁぁぁぁー!!」


なんで、このタイミングなんですか?!



ーーーーーー


最初に異変に気づいたのは、村長の息子であった。

村の中央の広場で昔馴染みと、やれ狩りの成果はどうか、やれ畑の調子はどうか、やれ何処其処の娘は可愛いか、と世間話をしていた。

そんな時、村の中央にある広場が光ったかと思うと、いきなり真っ黒い大男と白いローブを持った女の子が現れたのだから、そん場に居た全員、目を丸くして時が止まったかのように立っていた。


「あの娘は確か……」


村長の息子が『白いローブの女の子』に気づいた。


『月に一度、村へと買い物に来る『変わり者魔導師』の孫だったよな……相変わらず、見た目たけは可愛いよな~でも、もうちょっとこう……ボン・キュッ・ボンってメリハリを……』


本人が聞けば激怒しそうな事をニヤけた顔の軽薄そうな村長の息子、『ジミー』か心の中で呟く。

一度『見た目だけ』で、件の魔導師に「孫娘を嫁にくれ」と暴言を吐いて叩きのめされている。

そんな空気の読めない彼であったが……


『いやいや、そんな事より、隣の騎士みたいなのは何だ?二メートル越えの全身真っ黒の鎧で顔も完全に隠れてるなんて……』


空気は読めなくとも、雰囲気は察するらしい。

『怪しい』そう思い、何者かと声をかけようとした瞬間


「火事だぁぁぁぁ~!!」

「西の森だ!!」

「火の勢いが強いぞ!!」

「きゃぁぁぁぁ~」


小さな村を男共の怒声と女子供の悲鳴が遮った。



ーーー

村の西側では、すでに十人程の村人が集まっていた。

その真ん中にいた、メタボ体型の男性が


「皆、落ち着いて行動してくれ」


っと、大声を上げる。

彼は、この村の村長であった。騒ぎが起こると直ぐ様、村の西側に来て指示を出していた。


「男衆は、途中にある川に寄って水を汲み火元へ、女衆は空の桶を準備するんじゃ」

「村長、子供達はどうするんだぁ?」

「食糧庫に避難させい、あそこは土壁じゃ、もしもの事があっても大丈夫じゃろ」

「わかっただ」


その場に居た村人が一斉に行動しだす。

流石は辺境の村、ゴブリン等の魔物の襲撃もあるせいか、非常時の初動は早いものだった。

ただ……


「村長、広場に怪しいヤツが表れました」

「何だと?!」


こんな時に……歯ぎしりしていると


「その~ジミー坊っちゃんが対応しとるんですが」


報告に来た村人が言い難そうに答える。

実の息子ながら、狩りの腕も畑を耕す根性も無いどうしようもない子だが……


「分かった、手空きがいたら何人かそっちに行ってくれ」


村長としての役目を優先しながらも、一応は応援を出す事に決めた。



ーーー

村の広場では、何故か一触即発の事態へとなっていた。

ジミーとその仲間達が、リリーと黒い鎧の不審者を囲むように動いていた。


「お……おいデカ物、その娘を離せ!!」


へっぴり腰になりながらも、鍬を片手に威嚇する面々。

そして、お互いの顔に浮かんでいる表情は、それぞれ微妙な顔だった。


一つ目はジミー、彼は目の前の怪しい人物(黒い鎧)がリリーを拐かしてると思い込んでおり、ソレを助ける事で

『きゃージミー様ー素敵ー愛してるー結婚してー』

っとなるたろうと自分に都合の良い夢を見ている。

当然、顔は緩みっぱなしである……マヌケ顔に。


二つ目は村人達、ジミーの仲間が四人程その場に居た為、知らぬ間に包囲する結果となってしまったが……

『なんだよコイツ、デケぇ!!』

『怖ぇ、こんなのに勝てるのかよ?!』

『武器は……持ってないよな?な?な?』

『おい、飛び掛かるんなら早く行けよ、誰でもいいから!!』

四人とも、おっかなびっくり引け腰、顔は引きつった状態で斧や鍬を構えている。


三つ目はリリー、リリーにしてみれば、火事は祖父の仕業だし、自分達は旅支度したいだけで、大騒ぎする気も無いのだが……後、村長の息子……名前何と言ったっけ?……がニヤニヤしてるのが気にいらない。


そんな、微妙な三竦み状態を壊したのは、黒い鎧であった。

ただ一歩、前進しただけである。


「ひっ?!」


ジミーは変な声を出しながら、鍬をつき出した、黒い鎧の前に。

本人は当てるつもりも無かったのだが、鍬は真っ直ぐ兜に向かって行く。

黒い鎧の手が動いた次の瞬間、鍬の先が握り潰されていた。


「へぁ?」


ジミーの口から妙な声が出た。黒い鎧の手……籠手から生えてる鍬を見る。掌部分から鍬の歯が見える。まるで紙を握り潰すが如く。


「まっ……待って!!」


鍬を握り潰した瞬間『ヤバイ!!』っと判断したリリーが前に出る。彼女としては、一応知り合い……っと思われる人達の道具を壊して弁償など、只でさえお金の無い現在、願い下げ……っと、慌てたのだが、逆にその慌て具合が勘違いされ


「くっそー手を離せ!!」

「人質なんて卑怯だそ!!」

「あの慌て具合は脅されてるからか?!」

「お、お前、俺のリリーちゃんを脅してるのか?!」


勘違いされてる上に変な声が聞こえた気がしたが、この際それは置いといて


「取り敢えず話を……」


聞いてと言おうとした瞬間、


『だん』


リリーの体がフワリと浮く。

黒い鎧の左手に体を抱え込まれ、そのままジミーの図上を飛び越え、東側の出入り口へと走り出していた。


「へぁ?!」


今度はリリーの口からマヌケな声が響いていた。体か浮いたと思ったら次は顔に風を受けていたのだから。

全長二メートルの巨体が軽業師の如く、ジミーの頭上を飛び越えて走り出す。


「ま、待てぇぇぇー!!」


後ろから慌てた声が聞こえた気がした……が、今のリリーには『それ』所では無かった。


「あぁぁ~器物破損で逃走ってどうなのよ?!」


心配事は違う所だったらしい。


村の東側は、商人とのやり取りもある為、門が設置されていた。

そして、当然ながら門番も居た。皮鎧とショートソードの装備をした二人組。

その二人組が、門に向かって来るモノに気付く。


「おい、止まれ!!」


一人が両手を拡げて阻止しようとするが、黒いモノの速度は落ちない。そのさらに後ろから


「そいつを捕まえろ、人拐いだー!!」


ジミーが追いかけながら叫ぶ。

『人拐い?!』門番の二人がその言葉に緊張した顔をする。

確かに、近づいてくる黒いモノが子供っぽいモノを抱えているのが見え、二人は剣を構える。


「止まれ!!」


さらにさらに間の悪い事に、村長から応援として来た村人も、その場に集まってしまった。

前方に門番、左の建物からは数人の村人、後方からは妙な事を言ってたジミーと村人達、この状態でリリーは


「ちょっ、黒い鎧の……えっと……騎士さん?ねぇちょっと聞いてる?スピード落として、ねぇちょっとぉー?!」


自分を抱えて走る鎧に必死に叫ぶのだが……その必死さが勘違いを加速させ


「女の子が懇願してる?!」

「おい、そこの黒いの、貴様!!」

「大変だー誘拐だ!!」


その場の全員に『誘拐』と認識されてしまう。


「いや、違っ……」


否定の言葉は、再度の浮遊感に打ち消される。

黒い鎧は、門番の頭上をさっきよりも高く飛び越えていた。その場の全員が唖然としてる間に。


「ひぁやぁぁぁぁあ~?!」


リリーの叫び声がドップラー効果を残して行く。



ーーー

「やっと行きおったか」


小高い山の上から、老人が遠眼鏡を外し、袋へと仕舞う。

その眼下では、東へ向かう黒い影と、バラバラに追いかけだす村人の姿があった。


「少々面倒如になったようじゃが……多分大丈夫じゃろ」


岩がむき出しになった山裾を軽い足取りで進む、北へと。


「さてさて、リーンは何年位で到達するかのぉ~」


何とも楽しそうな笑みを浮かべながら、老人は進んで行く。

今週末までには続きを上げます。

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