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宿屋に到着しました

中途半端な内容になってしまいました、すまぬ。

ここは『オルボア』から南西へと広がる森、街に近い所では、人々が伐採をし、少し奥に入った所では、森の小動物を狩る狩人が活動していた。

そんな彼らの居る場所を見下ろすようにそびえ立つ山『ダルビッポ山』その中腹の洞窟に、巨大な物体が居た。

生臭い臭いに充満された洞窟、洞窟内を埋め尽くす程のゴブリン、その真ん中に巨大な物体、雌のオークが転がされて居た。手足を切り取られ、火か何かで傷口をふさいだ状態で。


ゴブリンは繁殖力が旺盛だが、1つ種としての問題があった。それは雌が生まれない事。

ゴブリンは、どれだけ繁殖しても、絶対に雄しか生まれない種であると言われている。

それに対しては、色々な学説がある、曰く


『雌が生まれると、生まれたばかりの赤子なのに繁殖しようと襲い殺す』

『他種族との繁殖で補える為、雄しか生まれない』


などの説である。

実際ゴブリンは、人種と呼ばれる生き物以外でも繁殖出来る事が判明している。

とあるゴブリンの集落を冒険者が潰した際、数頭の山羊を発見した、当初は食料ではないかと思われていたが、翌日、この山羊がゴブリンを産み落とした為、ゴブリンの繁殖力の大きさに国中が大騒ぎとなった。

現在では、定期的にゴブリンの駆除を各国が依頼するようにまでなった。

まぁ、駆け出し冒険者にとっては、手軽なクエとも言えるのだが……


そんなゴブリンが、自分達より上位に当たるオークの雌を手に入れている、オークは人間と違いゴブリンの繁殖力にも耐える身体を持っている。


ちなみに人間の女性の場合、一週間程で心が壊れ、二週間頃には身体も壊れてゴブリンの餌になっているとまで言われている。


洞窟内に居るゴブリンが百近く、一日に生まれる数が3~5匹と考えれば、この雌のオークは20日以上毎日ゴブリンを産み落としている事になる。


そして今、このタルビッポ山では、ゴブリンが異常な速度で増えるという異常事態になっていた。


『ゴロジデェェェ』


無駄に頑丈な雌のオークは、涙を流しながらゴブリンを睨み付け、いつか訪れる死を願っていた。



ーーー

オルボア都市南部地区、流れの冒険者や所得の低い者達が住む地区。

大通りから少し入った路地をアベル達と、黒騎士の肩に乗ったリリーが歩いていた。


「ギルドからだと、ここを抜けるのが早いんだよ」


振り向いて笑いかけるアベル、彼は今、リリー達をおすすめの宿へと案内している所だった。


ちなみに、ギルドを出る前に内部の酒場で食事を奢ってもらったリリーは


「お……美味しい」


っと、涙を滲ませながら出で来る料理を食べまくり、その場に居た他の冒険者や料理を作ってくれたスタッフにまで


『ここの料理で涙するなんて……どんな可哀想な生活をしてきだんだ』


っと、違う方向に勘違いされてしまい、沢山の料理を奢られ、残りは包んで手渡されるという、本人が恐縮する程の歓迎を受けてしまう。

ギルドから出る際など


「強く生きるんだぞ」


っと、色んな人に励まされ


『わ……私はそんなにダメな子に見えるんでしょうか……』


何故か心にダメージを受けた模様。



ーーー

「さぁ、ここだよ」


アベルの指し示す先にあったのは、表通りの建物と同じ、四階建ての建物だった。正面にある入り口から顔を覗かせ


「デボラの姉さん、居ますか?」


中に声をかける、すると


「はいはい、誰だい……って、アベル坊じゃないかい、久しぶりだね」

「姉さん、坊は止めて下さいよ」


出で来たのは、身長180センチの大柄な女性だった。年の頃は40歳位だろうか?目元のハッキリした顔立ちで、若い頃は美人だったのだろう。


「何言ってんだい、アンタなんか何時まで経っても坊だよ」

「いやいや姉さん、勘弁して下さい」


豪快に笑いながらアベルの肩をバシバシ叩くデボラ。


「このデホラ姉さんは、僕達が冒険者成り立ての頃からお世話になってるんだよ、冒険者としての心構えとか色々教えてくれたんだ」

「へ……へぇ……」


アベル達の後ろで茫然としているリリーを見て


「おや、お客さんかい?」


っと、デホラから声を掛けられ、上から下へとジロジロと見られる。


「あ……あの……」

「なんだい、埃まみれじゃないか、まずは風呂に入ってもらわないとね」


そう言うとリリーの手を引っ張り奥へと連れて行こうとするが……


「まっ……待って下さい……その……黒……クロノ兄が……」


そう言ってリリーの指し示す先に居るのは、立ち尽くす黒騎士だった。



ーーー

今回の冒険者登録の際、名前をちゃんと考えて『クロノ』で登録した。人名で『クロ』だけなら無理だったが、『クロノ』にした事で、何とか通す事が出来た。ただ、ジーンからは……


「まぁ……偽名で登録してる人は、それなりに居るんですけど」


っと、微妙な顔をされてしまったのだが。



ーーー

「う~ん、うちの宿は『女性専用』なんだけどね~」


デホラは数少ない女性戦士であった。その為、若い頃は冒険中の宿探しに苦労し、結果、引退後の今、女性専用の宿を運営し、女性冒険者へのサポートを考えていたりした。

実の所、王国内では既に3件もの宿を経営する『やり手経営者』だったりするのだが……


「アンタ等、兄妹かい?」

「えっと……そんな所……です」

「ふ~ん……」


リリーと黒騎士を交互に見ながら


「まぁ、兄妹なら良いかね、ただし、変な行為をウチの宿でやったら叩きのめすよ?」


歴戦の戦士らしい殺気を出して睨むデボラ、その殺気を正面から受けても微動だにしない黒騎士に


「へぇ~凄いね~アタシの『威嚇スキル』が効かないヤツは始めてだよ、気に入った」


『ニヤリ』と笑うと、黒騎士を手招きする、そして、入り口で『威嚇スキル』を食らってしまったアベル達に


「おっと、案内ありがとうよ、今度、飯でも奢ってやるよ」


と、手を振る。『威嚇スキル』は一般スキルの1つで、数多くの冒険者が持つ、デボラの場合は、スキルレベルが高過ぎて、一般以上の効果を表しているのだが……

身体の硬直が解け「はっ」となったアベルが


「リリーちゃん、暫くの間、僕達はこの先にある『猪の穴蔵亭』ってトコに宿泊してるから、何か困った事があったら来てね」

「は……はい、あの……ありがとうございます」


リリーのお礼の言葉を聞いたアベルは、それだけ言うと、先ほどの道を西へと歩いて行く。



ーーー

アベル達と別れたリリーは、デホラに連れられて建物の奥へと歩いて行く。

そこは建物の丁度真ん中、どうやら吹き抜けになっていたようだ。その吹き抜けの中央には、小さな木造の小屋が建っていた。


「さあここだ、入っておくれよ」


デホラに促されて小屋の中に入る、中は簡単な作りになっており、奥に水の張った石造りの浴槽があった。


「使い方は分かるかい?」

「えっと……ここの魔方陣に……魔力を流すんですよね?」


浴槽横に鉄製の箱が有る、その表面に魔方陣が書き込まれていた。


「あぁそうさ、良く知ってるね、コイツはこの街最新の浴槽なんだが」

「えっと……お爺……祖父が同じようなお風呂を……作ってましたので」

「へぇ~エンチャント能力者かい?いいね~便利で」


そう言うと、豪快な笑みをうかべるデボラ。


「魔力は少しだけで良いよ、もしダメだったらアタシに言いな、丁度良い温度に設定してやるよ」


ウィンクをすると手を振り去っていく。多分、仕事に戻ったのだろう。



ーーー

「少し……」


リリーは恐る恐る魔方陣へと、震える手を伸ばして行く……が


『ガシッ』

「?!」


横から伸びてきた黒い手に捕まってしまう。


「えっと……黒騎士……クロノ兄?」


表情も無い鎧兜の黒騎士は、自らの人差し指をリリーの前に出し、リリーの人差し指を指す。


「指?」


黒騎士は小さく頷くと、小屋を出て行く。


「えっと……もしかして、指先だけでやれって事……?」


黒騎士の良く分からない行動を自分なりに解釈し、ゆっくりと指先を魔方陣に近づけていく、すると……


『ボフッ』


魔方陣に触れるか触れないかの距離で、浴槽から音が響き渡り、小屋の中に水蒸気が発生して行く。


「こ……これって……成功したの?」


湯気の元へと手を伸ばすリリー、そして


「~~~?!」


盛大な叫び声を上げて小屋から飛び出す、どうやら熱過ぎたようだ。

浴槽からの音とリリーの叫び声を聞いたデボラが駆けつけ、中庭はちょっとした騒ぎとなった。


「熱い熱い熱い~り……リジュネ~」


地面を転がりながら、必死にスキルを発動するリリーだった。

次は土曜日までに仕上げる予定です。

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