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回復させました

主人公がどんどん『おバカ』になって来てるような?

リリーは軽く人指し指を噛む。うっすらと血が浮き出て来た事を確認し、素早く気絶している冒険者達に近づくと、彼らの服に血で文字を書く。


「リリーちゃん、それは?」


アベルが聞いて来るのだが


「えっと……触媒って……言うんでしたっけ?お爺さんから習ったやり方……です」


触媒、魔道具を作る際、魔力の伝導率を上げる為に使う手法の1つである。

普通であれば、魔晶石の粉末を使うのだが……


「自分の血を使って大丈夫なのかい?」

「だ……大丈夫……です」


手早く5人の服や防具に文字を書くと、背中に背負っていたロッドを持つ。


「ほう」


ロッドを見ながら楽しそうに顎を撫でるベンノだったが


「では」


リリーの一言で目線をロッドから変更する。

1つ息を吸うと目を閉じ集中するリリー。そして数秒後、リリーを中心とした光のサークルが出来る。


「これは……ヒール?」

「いや違うな、ヒールの魔力光は白だ」


アベルの疑問にベンノが答える。


魔力には、多少の個人差はあっても、大体似た色をしている。火の魔法なら赤、水、氷なら青、その為、熟練者は対峙した相手の魔力光で来る魔法を予測し対抗魔法を唱えたりする。その逆に、偽の魔力光を作り上げて相手を翻弄するなど、魔力光はある意味、戦略の1つに数え上げられる程である。しかしリリーの放つ魔力光は……


「白……いや、無色?」


アベルが目を凝らしても見えるのはほぼ透明、窓から差し込む光によって、やっと形が分かるような代物だった。

その安定した状態から10秒程経った頃、ゆっくりと光のサークルが広がりだす……何故か全体に


「?!」

「おいおい、お嬢ちゃん?」


驚くジーンとベンノを他所にサークルは広がって行き、ブリッジしている5人を包み込み……さらに広がり


「お……おいおいおい?!」


様子を伺っていた他の冒険者も慌てだす。

その頃には、既にサークルの大きさは、建物全体を越えて幅広の道にまで達する程だった。


「リジェネイト」


リリーが気合を込めて呟く

そして、倒れていた5人の服が、一際強い光を放つと


「う……うぅぅ……?!」

「ぐっ?」


呻き声が聞こえ、体がブリッジ状態から倒れて行く。

変化はそれだけでは無く


「お……おい、これ?!」


酒場側に居た冒険者の一人が自分の腕を見ると、さっきまでそこに合ったハズの引っ掻き傷が、表面に薄い線を残すだけとなっていた。


彼はついさっき戻って来た冒険者で、森林狼に付けられた引っ掻き傷をどうしようかと悩んでいた所だった。

森林狼の爪は雑菌が多く、運が悪いと大事になってしまう、その為、聖職者の回復魔法を有料で受けるかどうかで悩んでいた。それが


「な……治ってやがる」

「俺の傷も徐々に回復してる?!」


彼の仲間で傷の深かった面々も、包帯の下の傷が少しずつ塞がって行くのを見て、目を丸くする。


ちなみに彼らは、リリー達が入って来た時に、黒騎士ではなくリリーだけを凝視していた面々なのだが……小さな声で『少女最高』だの『ロリータ・ノータッチ』だの聞こえた気がするが……それは別の話



ーーー

その頃、外では……


「何だかとっても調子が良いよ」

「おっ、お婆ちゃん?!」


ついさっきまで、杖をつきながら息も絶え絶えにヨロヨロと歩いていたお婆さんが、ギルドから漏れた透明な光に触れた途端、背筋を伸ばし、矍鑠とした動きで走り出す。その後ろを孫と思われる男性が必死に追いかけて行く。


「お婆ちゃん、待って~?!」


その向こうの通りでは……


「親方の骨が?!」

「屋根から落ちて出来た全身の骨折が治ってる??!」


大工と思われる男が、担架に乗せられ移動している最中、透明な光に触れ、唖然とした顔で起き上がっている。周りにいる弟子と思われる男達に「良かった」と言われながら。


そして、ギルド裏路地では……


「お……俺の指が……斬り取られた指が?!」


指先を鋭利な刃物で斬られたと思われる盗賊風の男が、徐々に治っていく自分の指を見ていた。男は貴族の懐から金をスリ取ろうとして失敗し、護衛に指を斬られながらも、命からがらギルド裏まで逃げて来たのだった。

そして、光に触れた途端の奇跡。


「ありがとう神様、これでもう一度『スリ』が出来る」

「何?スリだって?!」


すぐ近くの大通りから兵士がやってくる、どうやら騒ぎ過ぎた様だ。逃げ出す男と兵士が走って行く。



ーーー

そんな大通りでの騒ぎも何のそのと、ギルド内では……


「お嬢ちゃん、すげぇな~」

「何だいありゃ、回復魔法かい?」

「あんなの初めて見たぜ」


っと、冒険者に囲まれるリリーだった。


ちなみにブリッジしていた5人は、


「えへへ、もう食えねえよ~」

「うぇっへっへ~金だ金だ~」

「えへっえへっ姉ちゃん、良い胸してるじゃねぇか」


等々、だらしない顔で寝言を言ってたりする。


「起きないわね?」


ジーンは冷めた目で5人を眺めつつ聞いてくる。


「蹴り起こすか?」


ベンノが、何とも物騒な事を言う。


「あ……あの……ちょっと揺すれば……起きます……よ」


リリーが『蹴っちゃダメ』とばかりにフォローするのだが……


「そうか、この騒ぎの原因はてめぇか小娘?」


いつの間にかリリーは、頬に傷のある優男に抱えられていた。


「ギルドマスター?!」

「ジーン、お前もいつまで俺を待たせる気だ?」


微妙に殺気を放ちながら立つ男は、ギルドマスター『ゲイル』だった。

さて、ストック作りです。

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