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追いかけられてました

少々間が開きました、すみません。


( へ;_ _)へ{続きです

ーーー

バストラ南部には、いくつかの森が存在していた。

大きさは半径一キロから、大きい物で五キロ程度、平坦な土地にポツリポツリと姿を残している。

それというのも数百年程前は、この周辺は巨大な森の一部だった。

タルピッポ山の北側裾野に広がる大きな森、それが遠く離れたバストラ南部の平原部分まで覆っていたのだった。

しかし、聖王国内での木材の需要が増え、それに合わせるかの様に伐採してきた結果、バストラ南部の森は、小さな森が点在する場所へと変貌した。


そんな森の間を南方へと伸びる道のお陰で、バストラは商人が行き来する街へと変化していった。

そんな小さな森だか、街道に近いと言う性質上、犯罪者やモンスターの温床になり易い。

何処から途もなく移り住む盗賊の類いや、ダルピッポ山辺りから流れ着いたと思われる森林狼やゴブリン等、小さい森と言えど危険な場所もある。


そんな場所故、各森の近くには、バストラから派遣された兵士が常駐する砦が存在する。

もしも、盗賊や魔物に襲われたとしても、砦に救援を求める事も出来る。

更に、各砦からも毎日街道を警戒する兵士が出回っている。

完全では無いが、ある程度の安全性は保たれている。


そんな街道近くの少し大きめな森の中で、彼ら的には壮大な追いかけっこが発生していた。



ーーー


「そっちに行ったぞ、追い込め!!」

「そっちってどっちだよ!?」

「馬鹿、こっちに槍を振り回すんじゃない!!」

「おい、突破されたぞ!!」


森の中、そんな声が響く。

ガサガサと音を立てて動く真っ白い鎧を着た者達の間を黒い影が駆け抜ける。

黒い影は、白い鎧達とは違い、音らしい音を立てる事無く走り抜けていく。

木と木の間を悠々と抜け、下に生える草の塊を飛び越える。

たまに触れる葉っぱが『カサッ』と乾いた音を立てるが、周りでガサガサと立てる大きな音に消されていく。


「ふぎっ!!ぐっ!?あだっ!!」


黒い影が跳び跳ねる度に、その胸の中からくぐもった小さな声が聞こえてくる。


『なんで、こう、なるの、よ!!』


揺れ動く体を荷物の中で丸くし、何とか衝撃を押さえようと奮闘しているのはリリーだった。



ーーー

バストラから逃げ出して五日目、南方にある森の中を隠れながら進む黒騎士の肩に乗るリリーは『さて、どうやってバストラに戻ろうかしら?』と、軽く考えていた。

彼女としては、今回の事は『ちょっとした誤解』と言う感じだったので、バストラの門でその辺りを説明すれば何とか出来るんじゃないかな~などと、リリーはお気軽に考えていた。


初日に逃走した際、黒騎士が全力疾走した為、かなり南方へと来てましたのだが、そこから東へ行った場合、アフィレス家からの書状が使えない。


アフィレス家からの書状は、魔法都市オードナルドの東側にある国境都市から出る為の聖王国の印がされていた、国境都市の名前付きで。

つまり、このまま近くの国境に向かっても、この書状では抜ける事が出来ない、それどころか、この書状を何処で手に入れたのかと、ややこしい話になってしまう。


正式な書状だけに、指定された場所以外での使用は大問題に発展してしまう。

つまりは、偽装か盗みか……だ。


その為、面倒だが一度バストラに戻るか、現在地から北東にある魔法都市に向かうかしなければならない。

食料は十分にある、水は街道沿いに川が流れている為問題無い。

さて、どちらにしようかとリリーが考えている間に、黒騎士が北へと『勝手に』歩き出していたのだった。


黒騎士が自分の言う事を聞かない事は重々承知のリリーとしては、ただため息を付きながら進むしかないのだった。


昼間は街道近くを走り抜け、夜になると手頃な森の中に入り休む。


そんな事を繰り返しつつ三日目、暫くはゆっくりと街道を歩いていた黒騎士だったが、何を思ったかリリーを鎧の中に押し込めると、一息に東側へと走り出す。


「ど、どうしたの黒騎士さん?」


リリーの慌てた声を多数の馬蹄がかき消す。

チラリと左後方を確認した黒騎士が見たのは、なだらかな丘から飛び出す様に走る騎馬隊だった。



ーーー

二人一組で進行方向へと出していた斥候からの知らせを聞いた騎士団長は、直ぐ様指示を出す。


「カルン、四人連れて先行しろ。目的は足止めだ、いいな?」

「はい、ドレル騎士団長」


そう答えると、カルンと呼ばれた青年が、後ろにいた四人の騎馬と一緒に走り出す。

それまで、馬の体力消耗を押さえた走りでは無い、全力疾走だ。


「キース、ジョン、それぞれ五人つれて左右に展開、目標を包囲」

「了解」

「分かりました騎士団長」


目付きの悪い青年と、色白の気弱そうな青年が、それぞれ四人の騎馬を連れて左右に走り出す。


「後続の輜重隊はその場で待機、周囲の警戒を怠るな」


そう伝えると、返事を待つ事無く馬の腹を蹴る。

騎士団長と呼ばれた鷲鼻の中年男性は、残りの騎士達と共に走り出す。

目標は『バストラの街で大暴れしたとされる黒い鎧の大男』


「さて、相手はどう出るか……」


小声でそう呟くドレル。

バストラ領主の元、私設の騎士団長をする彼ドレルは、元は聖王国の騎士団の、とある小隊の副隊長をしていた人物だ。

しかし、既に四十も半ばを越え、体力的にも辛くなった為、騎士団を脱退、生まれ故郷で余生を過ごそうと思っていた所に、現バストラ領主からの誘いが訪れた。

曰く、『新たに雇った若手騎士達を指導して欲しい』と。

正直、私設と言えど騎士に関わるつもりは無かったのだが、最後にひよっ子共を一人前にするのも良いと考え、二年前から騎士団長に就任した。


今回の事も、『噂の黒騎士』なる者の捕獲よりも、部隊の行軍練習のつもりで行っていたのだった。

それが、予想外にも目標発見となり、指示を出す事となる。


相手は馬も無く、ただ走るだけの存在となれば、その背後から騎馬隊で追いかけるだけで終わり……と、その時までは思っていた。



ーーー

カルンと呼ばれた青年騎士は焦っていた。


「くそっ、何で追い付けない!?相手は走ってるだけだぞ!!」


全力で疾走する騎馬隊が、飄々と走る大男に追い付けない、それどころか徐々に離されているのだ、驚きもするだろう。


「マズイぞカルン、このままだと、こっちの馬の方が先に潰れてしまう」


一緒に走っていた騎馬隊の一人が大声を上げるが、だからといって速度を落とす訳にもいかない。

歯を食い縛りながら、何か手がないかと考えていると


「カルン、あいつ、森の中に逃げ込む気だ!!」


仲間の一人にそう言われた先には、そこそこの大きさの森があった。

森の中では騎馬は使えない、だが


「いや、好都合だ。このまま森に追い込む」

「正気か?!」


ふとした思いつきを言葉にすると、斜め後ろにいた仲間が、焦った声を出す。

確かに、このまま森に入られてしまえば馬は使えない。


「森の中に入ってしまえば、ヤツの速度も下がる。このまま騎馬で追い付けないのなら、森の中で移動速度を落とさせた方がやり易い。ヤンは後続のドレル騎士団長に、森を迂回して先回りするよう伝えてくれ。それでこちらの意図が伝わるはずだ」


『要は兎狩りだ』とカルンが大声を上げる。

つまり、彼らカルンの部隊が、後方から黒騎士を追い、先回りした団長の部隊と挟み撃ちにすると言うのだ。

そんな行き当たりばったりなカルンの作戦が上手く行くとは思えないが、そんな事を言っている間に、黒騎士は森の中へと走り込む。

仕方なく、彼ら騎士団も森の手前で馬を降りると、各々武器を持ち走り込んで行く。


ヤンと呼ばれた騎士が一人で待つ所に、左右から回り込もうとしていた部隊と騎士団長の後続が近付き合流する。

そこでヤンがカルンからの話をすると、騎士団長は少し考えてから指示を出す。


左右の部隊はこのまま森の左右に別れて進ませる、と。

こうすれば、森の中で左右どちらかに進路を変えられても対応出来るとの考えからだ。

その後、カルン達が置いていった騎馬を引き連れながら先回りをする騎士達だった。

そして、森の中でのおいかけっこへと続く。


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