運の悪さが積み重なって来ました
遅くなって申し訳ありません。
( へ;_ _)へ{体調を崩していました
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例えばの話だが……暗い裏路地で、争いあう人々が居たとしたら、普通の人々はどう反応するだろう。
恐らく、大抵の人か酔っぱらい等の喧嘩か、怪しい連中の小競り合いと思うだろう。
そう思われれば、後は市内を警備する者達の仕事になる。
『怪しい人達が裏路地に居る』
っと。
そうしてやって来た警備兵達が、裏路地を覗き込んで、発見したのが『三人』居たとしたらどうするだろうか?
まずは、しっかりと見て、どの様な者達か確認するハズだ。
そうして確認された者達だが……
一人は『黒い全身鎧の大男』、身長は二メートルを越え、裏路地の暗闇に溶け込むかの様な姿は、武器の類いを持っていない。
だとしても、百人の人々が見て、全員『怪しい人物』だと思い込んでしまうだろう。
そんな『大男』の目の前に、顔は普通……っと言うより、人々の中に混ざり込めば、一般的過ぎて誰も気付かない『平凡顔の小柄な人物』が血塗れで倒れていれば、これまた百人全員が『何らかの被害者』と思い込むだろう。
普通過ぎるからこそ、怪しいとは思われない。
そんな普通の人物の足元に、まるでしがみつくかの如く、『小さな女の子』が居ればどうだろうか?
身長は百六十にも満たない、どう見ても十歳以下にしか見えない女の子。
真っ赤なローブを纏い、不安そうに警備兵を見ている。
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それら全てをまとめると、大抵の人々が『怪しい鎧の大男が、小柄な人物と小さな女の子と対峙している』と思うのでは……っと。
実際、警備兵達は、それぞれアイコンタクトをすると二手に分かれて行動し出す。
リリー達の目の前に五人、後方に居た六人は、それぞれ大通りから左右に走り、リリー達の居る裏路地を中心に大きく迂回する様に走り出す。
反対方向等に逃げられない様に包囲する為だ。
その動きを確認すると、隊長格と見られる『三十代の男性』が前に出る。
「そこの怪しい大男、大人しく縛に付け」
っと言い、右手を挙げる。
それに合わせる様に、警備兵達が槍を全面につき出す。
その目標は、真っ直ぐ黒騎士へと向いていた。
「まっ、待って……下さい」
そうなるだろうと予想していたリリーが、大声を上げて警備兵を止めようと動く。
ウィルの足元から立ち上がり、黒騎士の前に飛び出す……つもりだったが、その足が膝から『がくり』と崩れる。
「?!」
リリー本人が忘れているが、その足の痺れは、まだまだ残ったままだった。
黒騎士とウィルの間を抜け様と動いた体は、ゆっくりと地面に向かって倒れて行く。
運の悪い事にその先には、黒騎士によって弾かれたナイフの破片が散らばっていたのだった。
無数の小さな破片がキラキラと反射する地面に向かって、リリーの体が近付いて行く。
「ひぃっ?!」
思わず手を出すが、リリーの細腕で自身を支えられるハズもない。
目を瞑り、来るであろう痛みに備えようと『ぎゅっ』と歯を食い縛る……が、頬に『チクリ』と僅かな痛みを感じただけでだった。
そっと目を開ければ、そこにはリリーを小脇に抱える様に立つ黒騎士の姿があった。
リリーが前に倒れ様とした瞬間、黒騎士が素早く動き、リリーの右脇へと腕を入れる。
そのまま上に持ち上げ様とした際、自身が踏みつけたナイフの破片が跳ね上がり、リリーの頬を小さくかすった事に気付かなかったのだが……ただし、その姿は警備兵達にとっては『別の姿』に見えていた。
即ち
「貴様、『幼い少女』を盾にする気か!!」
警備兵の隊長が、怒気を孕んだ叫び声を上げる。
その声に思わず
「はぁっ?」
っと間抜けな返事をしてしまったリリーだった。
しばらく何やら叫ぶ警備兵の隊長を眺めていたリリーだったが、見た目の誤解が『とんでもない誤解』へと変化したいる事に気付く。
目の前で槍を構える警備兵達も、大通りから覗き込む様にしながら見ていた一般人達も、全員の目が訴えていた。
『黒い鎧の大男を許さない』っと。
「ち……違……」
『違います、誤解です』と言おうとしたリリーだったが、次の瞬間、左頬を中心に口が痺れる。
『あれっ?』と思ってもその口は、全く反応しなくなっていた。
声を出そうとしているのに言葉にならない、そんな感覚だ。
実は、リリーの頬をかすったのは、ウィルのナイフの破片だった。
それもご丁寧にも『痺れ薬』の付いた部分だった。
破片だった為、脳まで麻痺する程では無かったが、左頬を中心に『口周り』と『舌』が痺れる程度だった。
その舌が思い通りに動かない為、出て来る言葉は『はう~』だの『ふほひひはん~』だの、訳のわからない事ばかりだ。
当然、警備兵に説明するなど無理な事で……
「おのれー、卑怯だそ貴様!!」
警備兵の隊長など、青筋を立てながらプルプルと怒りで震えるだけだった。
この時点でリリーは思った。
『あぁ……これ、もうダメなヤツだ』
……っと。
続きは早め……の予定です(汗)




