門前でゴタゴタしてました
盆休みの書き込みです。
ω=)ノシ{何だかグダグダ回です
夕方を告げる教会の鐘の音が鳴り響く中、バストラ西門が大きな音を立てて閉まって行く。
左右にある四メートル程の高さの見張り台に、数人の兵士が登り、外周の警戒へと当たる姿が見えた。
そんな門の内側、右側にある警備詰所前に、大型の馬車が三台止まっている。
ディトラス商会の馬車だ。
彼らは、守備の兵士の検問を受けている所だ。
やれ『荷物は何か?』とか『何処から何処へと運ぶのか?』と事細かく聞かれる、そんな光景を見ながら現実逃避をしているリリーだったが、一際大きな声を聞き、ふっと我に返る。
「リリーは『私達』と一緒の宿に泊まる、だから、貴方は自分達の宿屋に行きなさい」
「だったら食事だけでも一緒にしようよ~ね?」
「食事も私達『だけ』で行く事になってる、貴方が入ってくる余地は無い」
『いつの間に宿泊から食事まで決まったのか』と、頭の隅っこで考えながら、言い合いを続ける二人を見る。
エルフのナルルスが、胸の前で腕を組みながら睨み付けている相手は、身長百六十、ヒョロリとした体格で、変わったも模様の入った胸当てを着け、ヘラヘラとした顔をこちらに向けていた。
彼の名はウィル、このバストラの街に向かう道中、他の冒険者達と違い何かと話し掛けてくれた青年だ。
何処にでもある平凡な顔で、何ら悪意を感じる事の無い人物なのだが、何故かエルフのナルルスと獣人族のポーリーナが、神経質な程警戒していたのだった。
道中でも休息時、ウィルがリリーの所に近寄って行けば直ぐにその進路を塞ぎ、今の様な口論を始めるのだ。
リリーにしてみれば『何故そこまで?』と疑問が浮かぶのだが……
「兎に角、リリー達は私達と一緒に行動するの!!そっちはそっちで仲良く行動すればいいわ!!」
獣人族のポーリーナが、語尾に『ニャ』を付ける事も忘れ、リリーを抱き抱えながら目の前の冒険者を睨む。
身長百七十あるポーリーナの放漫な胸がリリーの後頭部に『ポヨンポヨン』と当たり、複雑な顔をするのだった。
「おいウィル、いつまで遊んでやがル?移動するゾ、早く来イ」
大型馬車の方から、スキンヘッドの大男がこっちに向かって声をかける。
どうやら、持ち込んだ荷物の検査は終わったらしい。
「待ってくれよリーダー、この娘達に今夜の宿の件の話してた所なんだよ」
「あ~俺達はこのままディトラス商会に行くゾ。嬢ちゃん達には悪いが、そっちはそっちで宿屋を探してくれると嬉しいんだガ……一応、この街までの護衛って契約だったからナ」
そう言うとスキンヘッドの大男は、心底すまなそうな顔をこっちに向けて来る。
その顔を見て
「気にしないでいいわ。依頼終了証はもう貰ってるし」
と、無表情で答えるナルルス。
その無表情さに苦笑いをしながら、商会の馬車が街の中央に向かってゆっくりと進み出す。
「ほら、お仲間が行っちゃうわよ?」
「うわわ、リーダー待ってくれよ~」
そうポーリーナに言われ、こっちを何度もチラチラ見ながら、ウィルと呼ばれた小男が走り去って行く。
十分距離が離れてから、大きくため息を付くナルルスとポーリーナだったが、その疲れた姿にリリーが首を傾げる。
後から聞いた話だが、彼『ウィル』は、裏家業の情報屋、つまり暗殺ギルドか盗賊ギルドに繋がっている者らしいとの事だった。
何故分かったのか聞いた所、裏家業独特の臭いがしたとの事。
それを言ったのが、獣人族のポーリーナだっただけに、人間には分からない何かがあるのだとリリーは思ったのだった。
ちなみに、エルフであるナルルスはと言うと
「音を消して歩く姿が怪しい」
との事だった。
これもまた良く分からない所だとリリーは思うのだった。
こうして、ディトラス商会と別れたリリー達は、そのままバストラの冒険者ギルドへと、オルボアのギルドマスターからの依頼を終わらせる為に向かうのだった。