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遺跡からの脱出
「左腕、平気ですか?」
「使えないね。街に戻ったら本格的に治療を受けないとね」
雷光狼の初撃で半分近く斬られ焼かれた腕は持ち上がりすらしない。カタナも今は満足に振るえない。多少の術・念の強化と引き換えに怪物の誘引が起こるならデメリットがまさる、ということで少女の収納に入れてある。
今は片手で軽く扱える片手杖を右手にもち、広域探査をしながら遺跡からの脱出を目指している。
「風の精霊よ、穿ち抜け、穿牙」
風の精霊の加護持ち故に短い詠唱でも十分な威力を発揮できる。それに片手杖も長年使ってきた物だから手になじむ。
「漂う水よ、我が周りに、集い、命を待て、我が血に」
指先を軽く切り、いつでも攻撃・防御に使えるように水の玉を引き連れた少女が続く。
下級蜥蜴人、コボルト、ゴブリンなど、わらわらとやってくる怪物を風の散弾や水の槍などで迎撃する。
本来はそういった、いわゆる小物の怪物からも回収できる物はあるが今はひたすら外に出ることを優先した。
そうしてようやく、遺跡の外に出ることができた。
そこには明らかに略奪者と思しき3人がいた。




