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『最果て』の先、『終わり』を望む魔女  作者: まるまるくまぐま
一級魔導士フレデリカ
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怒り

「ッ!!キャァーー!!」

 完全に不意と隙を突かれた攻撃に、躱すことも守ることも出来ずフレデリカの身体が宙を舞う。

 フレデリカに直撃したのは炸裂魔法。爆発を伴う破壊力の高い攻撃魔法である。

 そんな魔法を放った人物、アデールは溜息を漏らした。

「参ったねぇ…今のでも決定打にならないとはねぇ…」

 タイミングは完璧だったし、威力だって正直殺すつもりで放った。

 しかし、アデールは自身の放った魔法がフレデリカに直撃した瞬間を見逃さなかった。

「展開の早さ…やっぱり別格だね、本物の天才は。」

 躱せない、防御魔法が間に合わない、そう察した瞬間、フレデリカは自信に硬化魔法を掛けた。

 勝つ為の魔法ではない、負けない為の魔法であった。


「やってくれたわね…いいわよ、アンタが殺す気でくるなら、こっちだって容赦しないわ…」

 ふふ…と笑うフレデリカの頬はピクピクと痙攣している。フレデリカの怒りが頂点に達していた。

「おやおや、おっかないねぇ…しかし、こんな婆さんを殺すより、自分の格好を心配した方がいいんじゃないかい?」

 そんなフレデリカにアデールは疲れた笑みで返す。

「は?…ッ〜〜!!」

 フレデリカは自分の現在の格好を確認すると、顔を真っ赤にしてしゃがみ込む。

「嫁入り前の娘っ子がする格好じゃないねぇ…」

 ククッと笑い、集団の中に再び姿を隠すアデール。

 炸裂魔法により、フレデリカがこの日の為に誂えた衣装はボロボロになり、破け裂けた箇所から素肌と下着が露わになっていた。

「殺す…殺してやる…」

 フレデリカは肌と下着を隠す様にしゃがみながら、怒りと羞恥に震える。

「殺す…あのババアも、この世で最も尊いフレデリカ様の肌を見た奴らも…全員殺してやる!!」

 魔法で創り出したローブで肌を隠し、立ち上がったフレデリカは、怒りに任せ、巨大な雷を落とした。





−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−




「片付けくらいしたらどうです?お師匠様…」

 脱ぎ散らかされた衣服と、崩れ落ちた積み上げられた書籍を呆れた様子で見下ろすセラフィマは溜息を漏らす。

「散らかしたのはヒルメだ…私は関係ない。」

 真っ裸でハンモックに揺られる師に、セラフィマは頭を押さえる。

「まず服を着てください!!ヒルメ!!アナタもよ!!」

 我関せずといった様子の師と、恍惚の表情を浮かべ伸びた妹弟子を怒鳴る。

「…ぁあ!!セラフィマ姉さんでしたか…すみません、すぐに片付けます…」

 艶っぽく熱を持った表情で崩れ落ちた書籍を、一糸纏わぬ姿のまま、魔法で片付けるヒルメ。

「お師匠様の情事に口を出す気はありませんが…もう少し節操をお持ちになられた方が良いと思いますよ…」

 不機嫌そうに師を睨んで言うセラフィマ。

「ヒルメの願いに答えただけだ。私は悪くない。」

 少しバツの悪そうに顔を書物で隠しながらそう答える。

「私の貞操を奪ったこと、忘れてませんよね?」

 怒りを顕に近付くセラフィマの行く手をヒルメが阻む。

「姉さん…お師匠様は私との愛を育んでお疲れです。今日はお引き取りを…」

 師は自分を選んだ。そう暗に伝える言葉で遮る妹弟子にセラフィマは氷の剣を握る。

「ヒルメ、私はアナタの様に色ボケしていないわ…この色狂いの大馬鹿師匠と、そんな大馬鹿に心酔する色ボケなんかどうでもいいわよ!!腹が立ってるのは、そんな大馬鹿に惚れた自分によ!!」

 姉弟子の一振りを、辛うじてヒルメは受ける。

 近接戦闘、牽いては剣での戦闘において自身に敵う者は存在しないと自惚れていた自分を恥じる程の一撃だった。

 ヒルメの鎖骨辺りの肌が切れ、血が薄っすらと滲む。

「姉さん…高みに近付かれましたね…」

 姉弟子であるセラフィマが、数百年前に決闘したあの時とは、別の次元に達しつつあるとヒルメは察しながらも、譲れない思いを手に白刃を振るう。

「自惚れはありませんよ、お師匠様は平等に愛して下さいます。でも、お師匠様を最も愛しているのは私です。」

 『極東の慈母』と『氷獄の魔女』。その相対が始まる寸前であった。


「騒々しい…私は眠いのだが?」

 邪魔をするつもりか?

 ハンモックに裸で揺られながらチラリと二人の最果ての魔女を見て淡々とした物言いで呟く様に言う。

「申し訳ありません、どうぞごゆっくりとお休みになられて下さい。」

 そんな師に薄手の毛布を掛けながら、ヒルメが頭を下げる。

「お師匠様、また、明日覗います。ご無礼をお許し下さい。」

 そう頭を下げ、ヒルメを一瞥し姿を消すセラフィマ。


「正直、面倒臭いから終わらせようかと思った。」

 そう呟き、静かに寝息を立てる師に、ヒルメは、『終わらせよう』と思ったのが自分たちだったのか、それと全てだったのか…

 それを訊ねることはせず、安らかな寝顔をウットリと見つめていた。 








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