生まれ変わって幸せです
少し短めの最終話です
結局、レニシアンナはまだ牢屋の中にいる。今の所は消えていなくならないようだ。彼女は王城に無断で何度も侵入し、王族に対して不敬を働いたとして極刑は免れないだろう。
「本人の自白がとれた。経産婦だったよ、レニシアンナ。年齢は34才…」
「ええっ!」
リディ様が審議官の報告書を読み終えると私に渡してくれた。経産婦…つまり一度は子供を産んでいるのだ。どこで?誰の子供?と思うけど…前世のノクタリウス陛下の時は逆に産まれていなくて揉めていたというし、どうなっているのだろう。
「つまり前世の俺に会う前にどこかで婚姻していて…子供もいて恐らく旦那もいたんだろう。とんだババアだな」
「そんなおばさんにコロッと騙されたっ…と、お疲れ様です」
「……」
リディ様はまた睨んでくる。フンッ…真実でしょう?何か?
「…で、結局はレニシアンナ魔物疑惑はどうなったのですか?」
「それは…良く分からん。本人はそんなモノじゃない人間だとは言っているらしい。その過去に戻る不可思議な力はじーさんに貰ったとか何とか云っているが、これも良く分からん」
「結局、良く分からないことだらけじゃないですか~」
今も引き続き尋問を繰り返しているけど、よく分からないことを喚いているので埒があかないと、元帥閣下が先日愚痴っておられた。
今、ちょっと口喧嘩しているけれど私とリディ様は来週には婚姻式を迎える予定だ。
そうそう、二ヶ月前に婚姻されたノクタリウス殿下とリナファーシェ様は…もうお腹に御子がいるのよね!
はあぁぁ~良かった。前世の自分では叶わないことだったけれど、リナファーシェ様が幸せでいてくれて本当に良かったわ。
最近気が緩むとすぐ涙が零れそうになって……やだもう年かしら?
「何だ?眠いのか…昨夜は頑張りすぎたかな?」
…またすぐいやらしいこと言ってぇ。婚姻まで後一か月を切った辺りでリディ様は私に
「もう我慢できない!砦を壊す!」
と、寝所で言い放ったのだ。…やめてよ、私の前世から続くログリディアン様に対する崇高な尊敬と憧れをぶち壊すのはっ?!あなたは大人しく格好いいままでいてくれたらいいのよっ!
その日から毎晩だ…毎晩。翌日に疲れるのだけは嫌だと言ったら、手加減はしてくれている…と思う。世の中の基準が分からないので、これが普通だと思いたい。
まあ仲が悪いより、良い方がこれからの婚姻生活や家族が増えた時の為にいいことに決まっている。私の理想はフロブレン家の両親だ。子供ももう大きいのに未だにイチャイチャしているし、愛を囁き合っている。人前でベタベタしろ…とは言わないが、出来ればあんな風に…。
「レアンナ…どうした?」
新緑色の瞳が私の顔を覗き込んでいる。はあぁぁ…格好いい。どうしてこんなに格好いいのか。
そう実は、リディ様…ノクタリウス元陛下には内緒にしているのだが、前世の初恋の人は……ログリディアン様なのよぉぉ!でもレアンナと婚姻していたし、そこはすっぱり諦めていたけど…前世から今世に引き続いて見た目がすごくすごーーーーく好みなのよぉぉ!
いけない…脳内とはいえ取り乱してしまったわ…。
ん?と言いながら私の顔を覗き込んで来る、好みの顔の美丈夫婚約者。勿論性格も…つまりは改心なさった元ノクタリウス陛下も…心根も良いのよね。つまりは全て良いのよぉぉ…!
いけない、また取り乱してしまった。
「リディ様のせいで疲れが出ていたのかもしれませんね…」
私が悪戯っぽくそう微笑みながらリディ様を見ると、リディ様は耳を赤くして執務室の天井を怖い顔で睨んでいる。あれは照れと戦っていらっしゃるのね?
その後、お昼休憩を取ろうとリディ様と食堂に向かっていると、近衛のマネケス副隊長と元帥閣下が急ぎ足でこちらに近付いて来るのが見えた。
嫌な予感がする。廊下の隅に移動して元帥閣下達を手招きすると閣下達は素早く移動して来た。
「あの魔物のレニシアンナが牢屋から消えたそうだ」
「!」
「案ずるな。今まで取り調べていた審議官や軍医の話によると、不可思議な移動能力は持ってはいるが、力は非力。特出した身体能力も無い…という判断だ。次にどこかに現れても、恐れることは無い。速やかに捕まえてしまえばいい」
そう元帥閣下に聞かされて、驚きはしたが同時に安堵した。確かに今まででも急に現れて驚きはしたが特に暴れたり人外な動きをされたことはない。
★ ☆ ★
あれからレニシアンナは現れることは無い。無事に婚姻式も済んで、静かに時間は過ぎている。
私はそれからリディ様との間に男の子2人と女の子2人を産んで、日々仕事と子育てに奮闘中だ。
リディ様とはもうお互いに30才を越えたけれど、相変わらず愛情は衰えること無く子供達の前でも熱い口づけを受ける事もあるし、愛を囁かれることも多い。子供達ももう慣れっこだろう。またやってる!といつも言われる。
それでも時々、目の端に黒色の何かが映ると一瞬心臓が跳ねる事もあるが…その驚きも最近ではあまりなくなった。
「お母様~お茶にしない?」
空を見上げていた私に室内から声がかかった。
末娘のパシミラが今日はお菓子を作ってくれている。長女の子供…つまりは孫を膝に乗せて目尻を下げている元陛下、今はただの優しいおじいちゃんになったログリディアン様の姿にほっこりしながら、長女や婿、長男とその婚約者、そして次男…皆が座るテラスのテーブルに足を向けた。
FIN
お読み頂きましてありがとうございました。
ざまぁの定義とタイムリープの定義が理解していない
のに突っ走って書き殴ってしまいました。