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神なき世界で悪魔にモテたので、ついでに人類救済します。  作者: ナナツメ蜜柑


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36/39

探す前から面倒事は埋まっている

 雪原宝探しのスタート地点は、すでに地獄だった。

 人、人、悪魔、その他よく分からない何か。

 統制という概念が存在していない。


「……参加者多すぎないか」

 ジルが淡々と呟いた。


「大盛況ですね……」

 アリシアが遠い目をする。


「主、掘る」

 ルナがしゃがみ込もうとする。


「まだ開始していない」

「先行有利」

「ルール違反だ」


 係員が台の上で必死に叫んでいた。

「えー、それでは雪原宝探しのルールを説明します! 危険行為は禁止! 殺しも禁止です!」

 ざわめきの中で、何人かの悪魔が露骨に残念そうな顔をした。


「紳士的に参りましょう」

 セレナが優雅に微笑む。


「宝は雪原のどこかに埋まっています! 途中のチェックポイントでヒントを得てください! 妨害は節度を持ってお願いします!」


「節度付き妨害ってなんだ」

 ジルが言った。

 誰も答えなかった。


「それでは――開始です!!」

 合図と同時に、世界が崩壊した。

 魔法が飛ぶ。

 雪が爆ぜる。

 誰かが吹き飛ぶ。


「想定内だ」

 ジルは一歩も動かずに言った。

「想定の基準がおかしいです!」


「主、行く」

 ルナが一直線に突っ込んだ。


「待て――」

 言い終わる前に、ルナは雪煙の中に消えた。


「追うしかありませんわね」

 セレナが歩き出す。

 なぜか周囲の参加者が道を開ける。


「……セレナだけ難易度が違いませんか?」

「気のせいだ」

 ジルはため息をついて走り出した。


 最初のチェックポイントは、すでに混沌としていた。

「ヒントはこちらでーす! 一列に――並ばないでください!」

 係員が矛盾した指示を出している。

 どうにか紙を一枚受け取る。


「"最も冷たい場所を探せ"」

 アリシアが読み上げた。

 全員、無言になる。


「ここ雪原だぞ」

 ジルが言った。

「全部冷たいです……」


「心が冷たい者の所だ!」

 近くの悪魔が叫んだ。

 なぜかジルに視線が集まる。

「違う意味で冷えてるな」


「主、こっち」

 ルナが指を差す。


「根拠は」

「勘」

「却下したいが他に案がない」

 ジルは短く息を吐いた。

「行くぞ」


 雪原を進む途中、横から声がかかった。

「待ちなさい!」


 いかにもガラの悪い悪魔の一団だった。

「宝は渡してもらうぞ」

「まだ見つけていない」

 ジルが即答する。


「関係あるか!」

 悪魔が前に出た瞬間、視線がセレナに向いた。

 動きが止まる。

「……あれ」

「……まさか」

「ごきげんよう」

 セレナが微笑む。


「ただの旅人ですわ」

 沈黙。

「……失礼しました」

 悪魔達は道を譲った。

「いいのかこれで」


 さらに進むと、今度は真面目そうな人間チームと鉢合わせた。

「情報交換を――」

 言いかけた瞬間、隣で激しい魔法の打ち合いをしていた悪魔チームが、まとめてこちらへ吹き飛んできた。


 雪煙が全てを飲み込む。

 真面目そうな人間チームが、跡形もなく消えた。

「……巻き添えにしてしまいました」

 アリシアが雪煙の向こうへ向かって深々と頭を下げた。

「申し訳ありません!」

「返事がないぞ」


「主、近い」

 ルナが足を止めた。


 周囲が妙に静かだった。

 さっきまでの喧騒が、嘘のように遠い。

「……空気が違うな」

 ジルが低く言う。


 足元の雪を踏むと、わずかに重い。

「これ……」

 アリシアが眉をひそめた。


「ただの景品じゃありませんよね」

 雪の下から、微かな圧が滲んでいる。

 触れれば分かる類のものだった。


「……そうですわね」

 セレナが珍しく静かに言う。

 その視線は、雪の一点を見ていた。

「私の、ですもの」


 次の瞬間。


「見つけたぞォォ!!」

 横から巨大な影が突っ込んできた。

 ゴーレムだった。

 雪を巻き上げながら腕を振り下ろす。

「邪魔だ!」


 地面が抉れ、何かが吹き飛ぶ。

「あ」

 ジルが短く声を漏らした。

 小さな箱が宙を舞い、雪の向こうへ消える。

 沈黙。


 アリシアがゆっくり振り向く。

 ジルがため息をつく。

「主、追う」

「言われなくてもそうする」


 再び、雪原に喧騒が戻る。

 宝は、確かにそこにあったはずだった。

 だが次の瞬間には、また雪の中に消えている。

 どうやらこの祭りは、見つけることよりも見失うことの方が得意らしい。

 そして――それは、今回も例外ではなさそうだった。

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