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番外②.四馬鹿はまたもやらかす

四馬鹿による「ライト辺境伯令嬢の婚約破棄事件」から数か月後、城内では四馬鹿に対する不満が、静かに溜まっていた。


「あ~ぁ、やっと終わったぁ~」

「暴れ馬公爵が馬車の暴走で壊した、壁や謁見室のドアの修理ようやく一段落だな」

兵士の1人が疲れたというように肩を回すと、もう1人の兵士がため息をついた。

「公爵の暴走は不可抗力だし仕方ないけど、問題は四馬鹿だよなぁ。いつもはた迷惑な騒動起こしやがって、後始末はいつも公爵や俺達じゃないか」

「全くだ。俺達は壊れた壁やドアの修理で予定外の仕事、公爵は四馬鹿が放棄した書類仕事に追われてるっていうのに、聞いた話じゃ四馬鹿共、ヒステリー起こして、メイドや護衛達に八つ当たりしてるそうだ」

「それそれ。俺の彼女もぼやいてた。王妃に頼まれてお茶持っていったら「こんな安物カップじゃ飲む気になれないから、もういらないわよ!」って、カップを投げてつけてきたそうだ」

「公爵の指示で、庶民用の木のカップに替えてもらっといて良かったなぁ~。お陰で割れずに済んだ」

「そうそう。割れてたら俺の彼女怪我してたところだ」

そこまで話したところで、2人の兵士は深くため息をついた。

「はぁ~。あの四馬鹿殴りてぇ…」

「俺はどっかに行ってほしいよ…」

兵士達はその後も愚痴りながら、その場を後にした。



「あぁ~今日の四馬鹿の当番、私だぁ。行きたくない~」

「貴方も災難ねぇ」

新米メイドが嘆いていると、同僚のメイドに同情された。

「昨日の子は、王妃にティーカップを投げつけられたって。幸い怪我はなかったようだけど」

「ヒステリー声聞くだけで、嫌になるぅ」

「あの四馬鹿、お茶に毒でも盛ってやろうかしら」

担当のメイドが頭を抱えると、別の同僚が毒づいた。

「気持ちはわかるけどマズイわよ。それより早く行かないと、ますますヒステリーが酷くなるわよ」

「そうね…行ってくるわ」

結局同僚にせかされて、新米メイドがトボトボと歩いて行った。



その頃アイリーンは、四馬鹿が放棄している書類仕事を、代わりにこなしていた。

「全く…何で私がバカ王夫妻の仕事を、代わりにやらなきゃならないのよ!」

怒りながらも目を通して、王印を押していく。

「それはやはり、唯一四馬鹿を黙らせられる人物だと、全貴族から認められているからでしょう」

それを執事兼婚約者のエリックが受け取っては、次の書類の山を持ってくる。

流れ仕事の間も、会話は止まらない。

「そうだとしても私はいち外交官で、どんなに馬鹿でも、本来は国王夫妻の仕事なんだけど?」

「代理を務めるべき宰相も、揃ってバカですからねぇ。前国王はまだマシだったし、側近も優秀でしたから何とかなりましたが…。身分派閥を乗り越えて全貴族に、『こいつらに政務を任せたら、国が滅んで権力争いどころじゃない』と、一致団結させるなんて、ある意味才能ですよ」

「そんなのが国のトップだなんて、世も末だわ」

「だから頑張って下さい、あと少しで一段落です」

「頑張ってるわよ、もう二日も寝てないんだもの………あ~~終わったぁ」

「お疲れ様です」

終わった途端、糸が切れたようにアイリーンが、椅子の背もたれにもたれかかる。

エリックが机の上の書類を、決裁済みと弾いたものに分けて片付けると、離れたところにあるテーブルにお茶と菓子を用意した。

「休憩も必要でしょう。二日も寝てないのですから、仮眠を…といいたいところですが、そうすると今夜も徹夜になってしまうので、これで乗り切って下さい」

エリックの発言に、アイリーンがうんざりした顔になる。

「…………あと、どれくらい残ってるの?」

「あと4分の1ほどです」

エリックの発言に、アイリーンがため息をつく。

「思ったよりは多くないけど、日付が変わるまでに寝られるか微妙ね………」

「私も頑張りますから」

エリックの発言に、アイリーンが一瞥すると「貴方も休みなさい」と言って、自分の向かいの席を指す。

「公爵様?」

「今は休憩なのでしょう?なら貴方も執事はお休みで、今は婚約者よ」

エリックは目を見開くと「そうですね」と微笑んで、追加のお茶を用意した。


「ところで馬鹿共は、どうしてる?」

落ち着いたところで、アイリーンが聞いてくる。

「部屋に籠りながら、たびたび使用人や護衛に八つ当たりをしているようです。そのせいで四馬鹿の評判は最悪です。皆かなり不満が溜まっているようです」

「それは問題ね…」

「はい。このままでは、ストライキや闇討ちが起きるかと」

「馬鹿共が闇討ちされても自業自得だけど、処罰しないわけにはいかないから、実行犯が気の毒だわ。それにストライキも困るわ…ただでさえ仕事が溜まってるのに」

「そうですね…」

「………ねぇ、こんなのはどう?」

アイリーンが小声で提案すると、エリックが困惑した顔になった。

「良い案だとは思いますが…そう都合よく、機会が訪れるとは思えませんが…」

困惑顔のエリックに、アイリーンは言った。

「すぐ来るわよ、あの4人の事だもの」



その頃、四馬鹿達は周囲の苦労と、自分達の評判も知らず、国王の部屋で悪態をついていた。

「くそう、あの暴れ馬め。どうしてくれよう」

「お姉様ってば酷いわ…ちょっと婚約破棄を申し付けたくらいで」

「そうだそうだ!」

バカ王がアイリーンへ悪態をつくと、王妃のエイミーと騎士団長のビルが賛同する。

「これからも、あの女に頭を押さえつけられるなんて、真っ平だ!サイラス、何とかならないのか!?」

バカ王が宰相のサイラスに目を向けると、エイミーとビルも目を向ける。

「…………あまりやりたくありませんが、ミラー公爵の弱みを握ってみてはどうでしょう?」

「「「名案だ!!!!」」」

3人は賛成した。

「ただ…確実にミラー公爵の怒りを買いますよ?下手をしたら命に係わるかも…」

サイラスの不安を、ジェームズが笑顔で打ち消す。

「大丈夫だ!弱みさえ握ってしまえば、こちらのものだ。はっはっは!」

「この時間なら、お姉様は執務をしている筈よ。今がチャンスだわ!」

「そうとなれば善は急げだ!」

「大丈夫かなぁ…」



こうして四馬鹿はさらなる騒動を起こすべく、公爵が滞在している客室へと向かった。


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