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カルロの姉①

お姉さんの名前ソフィア→ソニアに変えました。

よくある名前すぎたので。

今日はカルロのお姉さん、ソニアさんが牛たちの柵に電気を流す加工をしに来てくれる日だ。

ということで私はせめてものおもてなしとしてホットケーキの用意をしていた。


ソニアさんは王都でモンスター素材の加工屋に勤める人なのだが、お客さんからの指名(?)が多く、なかなか来られなかった。

加工屋に指名なんてものがあるのは初耳だが、それだけ腕利きということなのかと期待していた。

加工屋は職人の世界で、私もポンさんに連れられ一度だけ行ったがごついおじさんしか見かけなかったように思う。

珍しい女性職人とはいえ、見た目が良いだけで命を預ける武器防具を任せるとも思えないし、やっぱり腕がいいのかカルロに尋ねても「とりあえず会ってみろ」と言うばかりではっきり教えてくれなかった。


ホットケーキの生地を氷鳥の鱗を貼り付けた冷蔵庫に入れて寝かせる。

ソニアさんに出す為に作ったけれど自分でも食べるのがすごく楽しみだ。

お母さんが生きていた頃に作ってくれたホットケーキのレシピは大事に取ってあった。

やっとここまでたどり着けたと感慨深い。




「来たな」

目を瞑っていたカルロが、お姉さんの乗る馬の音を聞き付ける。

カルロは最近すっかりドッディの石を使いこなしている。畑作業をしているとき、カルロが遠くにいても呼べばすぐ来てくれるので助かる。



家の外で出迎えると、細身の女性が黒い馬に乗ってやってきた。


「こんにちは」

「こんにちは」


私は失礼じゃないように自制しつつ、驚いてしまう。カルロにそっくりだ。カルロをそのまま女性にしたみたいな、涼しげな水色の瞳、サラサラの金髪のクールな面立ちの美人だった。

だけど声が違う。カルロはザラついた低音だけど、ソニアさんは透き通るような声をしていた。


「ユリィちゃん、私のこと覚えてる?村にいたときはあんまり会わなかったわね」


「えっと…カルロにこんなお姉さんがいたなんて正直全然知らなかったです」


「私は村にいた頃から、家にこもって小さい金属の加工とかしてたから。カルロの種蒔き機も私が作ったのよ」


ソニアさんは微笑みを浮かべる。あれ…なんだろうこの感じ。今すぐ抱きつきたい。??

「柵はあっち」

カルロが無愛想に放牧地を指差す。

「あ、でもホットケーキが…」

「終わってからでいいだろ」


「すぐ終わると思うから、やっちゃいましょう」

優しいソニアさんの声を聞くと、私は高速で頷いていた。なんだろうこの人の声音。カルロと全然違う。もう汚い男の声なんて聞きたくない。???



「俺、あっちでトウモロコシの種蒔いてるから、まあ二人でゆっくり話せよ」

大きなため息をついてカルロが離れていく。


「じゃあ手伝ってくれる?ユリィちゃん」

「はい!!!ソニアさん」

「ソニアでいいのよ」

「ソニア…」

私は照れながら名前を呼ぶ。

「うふふ!かわいいわね」

ソニアが笑ってくれると私は頭がおかしくなっちゃいそうな幸福感に包まれる。

私は、完全にソニアに夢中になっていた。薄めの桜色の唇から紡がれる優しい声をずっと聞いていたい。



「ここなんですけど、その…牛は見えなくて、たまに舐めてくるけど害はないです」

私は一見、無牛の放牧地の柵を見てもらう。

ベルたちは知らない人が来たので透明になっているようだ。


「わかったわ。ところで、カルロから聞いたけど、相当危ないことをしたそうね?ダメよ、ちゃんと防具を着けなきゃ」

「は…はひ!!」

「色々持ってきたから、あとで採寸しましょうね」

「はい!」


私は催眠にかかったように返事をしてしまう。カルロが姉に頼ったのもわかった。

きっと、私のような防具をつけない愚か者は加工屋にも溢れているのだろう。

そうして怪我をしたり、命を落とす者もいたかもしれない。柔よく剛を制すとか、北風と太陽なんて言うけれど、ソニアの慈愛に満ちた雰囲気は愚か者を説得する為に磨かれたテクニックなのかもしれない。

なんて優しい人なんだろう。



ソニアが茶色の手提げカバンから、工具や線のようなものを取り出した。なんらかのモンスター素材を使った細いコードを手際よく柵板の隙間に横に通していく。見た目は完全に前世でも見た電気柵だ。


「簡単でがっかりしちゃった?これでも繋げる向きとか間違えると発火しちゃうから誰でもやっていいってわけじゃないのよ」


ソニアが美しい声で説明してくれる。電気なのでそういうのはあるのだろう。


「ここ、ネジネジがあるでしょ?」

黄色と黒の平たい紐を寄り合わせた箇所を細い指で示す。言い方がかわいい。

「電気を流したいときはこう、黄色を見えるように。一度止めたいときは黒を見えるようにしてね」


「すごい、良く出来てるんですね!こういうのってよく頼まれるんですか?」


「馬をたくさん飼ってるところには必要ね。触れるとぴりっとするだけでもあるとないとで脱走率が違うらしいわ」


「うちも、最近村の人から苦情が来てて…。ほんとに助かりました」


ここを定住の地としてくれたベルたちだが、動物は気まぐれなものだ。数頭がなぜか透明になって村人を味見しに行く。見えない牛に舐められて不気味だと村長経由でクレームが寄せられていた。


「…私もさっきからすごく舐められてるの」

ソニアのびしょびしょの手を見て、私はあわてて家に案内する。


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