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第1章 6話ー人の形をした鬼ー


「ふああああ、眠い…」


 慣れない時間に無理やり体を起こしたレオは、大きなあくびとともに本音をこぼした。


 すると下の階にあるリビングから、 ガシャン! と何やら大きな音が聞こえていたので、

(母さんが皿でも割ったのか…?)

 とレオは安易な考えとともに、下の階へと足を早めた。


 「大丈夫?母さん」

 とキッチンに顔を覗かせてみると、そこには倒れたレオの母親と、二人の男が立っていた。


「っ母さん!!??誰だお前ら!!」


 レオは、その男達に怒りの声をあげた。

すると、黒い服で身を包み、赤く長い髪をなびかせ、何やら怪しい雰囲気を感じさせる二人の男は、ゆっくりとレオの方へと振り返った。


そしてその男達の額には二本の白く先が滲むように赤く染まった鬼のそれを髪から覗かせていた。


「角…?角ってまさか…」


 と、レオは後ずさり、目を泳がせた。それとともに胸の底から、あの時の記憶が浮き上がってくる気がした。


「あら、やっぱりいたんですね!おはようございます!」


 まるで朝近所の人に挨拶するような親近感を覚えさせる話し方に、レオは人の見た目をしたそれに身を震わせる。

 そして必死に、両手で両腕を強くさすり、「落ち着け…落ち着け…」と自分に言い聞かせるように小さくなんども唱えた。


「復讐の相手にそんなに身を震わせて…その状態では、鬼人族わたしたちを全員ぶっ飛ばすなんて、夢のまた夢ですね!」

 

 赤い髪を揺らしながら、可笑しそうにその鬼は笑った。

そして、隣にいた同じく長い赤髪で、横髪を綺麗に揃えている気難しそうな鬼もレオを見下すように


「こんな腰抜け野郎ごときに、私たちをぶっ飛ばすなんて不可能に決まっているだろう。フッ、笑わせる。」


と強く言い捨てた。

 

 その言葉が頭にきたレオは、吹っ切れたかのように近くにあったナイフを手に取り、レオを 腰抜け野郎 と呼んだ鬼の首をめがけ、


「俺を舐めるんじゃねえええ!!この…横髪ぱっつん野郎があああ!!!」


と、怒りに勢いを任せて、そう叫んだ。


 だが、 横髪ぱっつん野郎 とレオに呼ばれた鬼は、簡単に包丁の勢いを止め、手の力だけでナイフを砕いてしまった。


「誰が横髪ぱっつん野郎だ……!」


 と、その鬼(横髪ぱっつん野郎)は喉の奥から響くような声とともにレオの前髪を掴み、上の方へガッと引っ張ると苛立ちに溢れた瞳で、強くレオを睨んだ。

 

 だが、レオも怯むことなく、「フゥーッ、フゥーッ」と強く噛み合わせた歯の隙間から荒い息を漏らしながら、目だけで強い怒りを感じさせるように相手(横髪ぱっつん野郎)を睨みつける。


 その様子を横で見ていた鬼は、笑いをこらえきれなくなったのか、お腹に手を置き溢れたように大きな声で笑った。


「ぷっ!あはははははっ!!ちょっすみません!我慢してたんですけどね!あはは!横髪ぱっつん野郎って!それ私も超共感!!」


 お腹を抱えて笑っている鬼に、レオの前髪をつかんでいた鬼(横髪ぱっつん野郎)は、レオを投げ飛ばすと


「笑うな…!この横髪はな、この間、鬼姫きき様に可愛らしいとお褒めの言葉をいただいた素的すてきな横髪なのだ!

 この横髪を侮辱するということは、鬼姫様を侮辱するのと同じことなのだぞ!!」


 と、大きな声で怒りを噛み砕くような声で、そういった。


 その言葉を聞いたレオは、2つ理解した。1つ目は、鬼姫ききが鬼であるということと。(多分)

2つ目は、その鬼(鬼姫)はセンスが悪いということ。


「ごめんって!羅鬼らきは相変わらずに鬼姫きき様にぞっこんだね!」


 と、羅鬼(横髪ぱっつん野郎)という鬼に鬼姫が褒めた横髪をバカにしたからという理由で叱咤された鬼は、面白そう笑いながらそういうと、投げ飛ばされたレオの方に顔を向けこういった。


「すみませんねー!この子なんか変なところで曲がってて!別に喧嘩しにきたわけじゃないですけどねー。」


 そう言われたレオは、その鬼を睨みつけてこう返した。


「じゃあ何しにきたんだよ!殺される前に殺しにきたのか!!」


 その返しに鬼は目を丸くさせ、あはははは!!と、さっきよりも倍ぐらいの大きさで笑いごえをあげ「違いますよ!」と大きく顔の前で否定するように手を振った。


「ただ私は一度見て置きたかったんです。君とはこれから長〜い付き合いでしょうからね!」


 そう言いながら、投げ飛ばされて床にお尻をつけていたレオに手を差し出し、その手をレオは「いらねえ。」と振り払った。そして自分の力で立ち上がり、はっきりとこう言った。


「いいや、違う。」


 その言葉に鬼は、「なんで、そう思うのですか?」と面白そうに問いかけた。

その問いにレオは、鬼の方へ指をさし弓を射るようにこう言った。


「次お前らと会った時に、俺がお前らをぶっ飛ばすからだ!!!」


 レオはそう言い終えると、手を下ろし、鬼を強く睨みつけた。

レオのその態度に「私この子好きかもですねー。」と小さく呟くと、


わたしたちを見た時あんなに怖がってた君が、次あった時に私達をぶっとばせるとは到底思えませんがー…。


まあ、期待しておきます☆」


 とウインクしながら、羅鬼らきの腕を引っ張り「ではでは〜!」と言い残すと次の瞬間に鬼達は消えてしまった。



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