プロローグ「光眼」
古来より、その瞳を有する者達は神の使いと讃えられていたと聞く。
だがその反面、悪魔の捨て子と畏怖されていたのも事実であった。
時には崇められ、時には畏れられ、時には忌み嫌われ、時には疎まれながらも、その瞳はいつも人々の中心で時代の行く末を左右してきた。
ある大文豪はその危険性に慄き、人類の癌と批判した。
ある政治家はその可能性に唇を歪め、世界の切り札と豪語した。
ある貴族はその優美さに歓喜し、生きた宝石と絶賛した。
この国リグレジアが周囲を壁に覆われ、要塞国家などと大袈裟に呼ばれるようになる遥か昔から存在するというその神秘の瞳は、名を「光眼」という。
神の異能を宿す光り輝く瞳。その色彩は一様でなく、瞳には赤く光るものから白く光るものまで様々あり、有力な説によると全部で九色実在するという。光眼はその色彩によって扱える能力が異なり、予知を可能とする瞳もあれば完全記憶能力をもつ瞳もあるらしい。
光眼を持つ者たちは光眼使いと呼ばれ、現在もリグレジアには多くの使い手がいる。いや、いたというべきか。数年前に国家が粛清政策を推し進め、多くの自由が奪われたが、光眼使いの存在もその際に規制され、国家権力の権化とも言うべき警邏に出頭を命ぜられたのだ。そして、警邏への入隊を拒んだ者は皆、処刑された。その影響でリグレジアには警邏隊に属するものを除き、ほとんどの光眼使いがいなくなってしまった。これが現在もなお国民の間で恐れられている『光眼狩り』である。
だが、警邏も万能ではない。そう、処刑された光眼使いはあくまで、ほとんど、であり、リグレジアにはまだ狩られていない光眼使いが潜んでいた。
その隠者の一人。
警邏から亡霊と呼ばれ恐れられているその少年。
若い仮面の復讐者は今宵もリグレジアの闇を駆けていく。
底知れぬ殺意と憎悪を胸に秘めて。
ただ、すべてを壊すために。
これは、
復讐に身を捧げる少年が「色々な意味」で少女に左右されてしまう話でもあり、
少年と少女が互いを救いあう話でもあります。
更新は頻繁にしていく予定です。
何卒よろしくお願いします。




