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護衛依頼

待ち合わせの場所へ向かうと、シルクスが待っていた。

馬車も二台並び、荷物の積み込みが行われている。

使用人達なのだろう、男性二人と女性二人の計四人が、それぞれに忙しく動いていた。


「おはよう、早いな。

こちらの支度はもう少しかかるよ。」

「おはようございます。

そうですか。

シルクスさんも行かれるのですか?」

「いや、私は防衛に回されているからな。

顔合わせと見送りに来たんだよ。」


俺とリアの顔を知っている人間がいないと、確かに困るか。

そこはさすがの気遣いだな。

今の内に同行者の情報を聞いておこう。


「ヘレナ様とその世話兼護衛の執事、使用人が男性二人に女性二人。

それに御者が二人に騎士が二人だな。

今荷を積み込んでいる幌馬車に使用人四人と君達二人が乗って先導する。

一人御者と一緒に前へ座って、警戒してくれ。

二台目の箱型馬車にヘレナ様と執事が乗って、騎士二人はそれぞれの騎馬でこちらの護衛につく。」

「なるほど。

了解しました。」


話していると、騎馬に乗った騎士二人がやって来た。

馬から下りて挨拶するが、何処か目付きが気に入らない。

侮るのも蔑むのも勝手にすれば良いが、リアをいやらしい目で見る事は許さんからな。

にこやかな笑顔は絶やさず、間に立つ。

それも自然に、ではなく露骨にだ。

騎士二人の目付きに剣呑なものが混じるが、口許の笑みは崩さないでいる。

これが護衛の騎士か。

嫌な予感しかしないな。


ヘレナ様が姿を現した。

執事を連れて、目付き鋭く、不機嫌そうな表情でさっさと箱型馬車に乗り込んでしまった。

白金の長い髪に青の瞳を持った、綺麗な女性ではある。

他は旅装束であるとか、低めのヒール込みで背は標準とか、その程度の事しかわからない。


「ヘレナ様は、ヒルトへ行くのを嫌がったのだそうだ。

ロンドバルド様が危険だからと一方的に決められてな。

だからヘレナ様は、今機嫌が悪い。

強気ではあるが、本来は優しい方だ。

よろしく頼む。」

「わかりました。

必ず送り届けます。」


支度は整った。

馬車は動き出し、南門へ向けて進み始める。

俺は御者の隣に座り、そのすぐ後ろにリアがいた。

強化は切らさぬようにかけ続ける。

何処から何が来るかわからないのだ、必要な事だ。

門を出て、いよいよ南へと、ヒルトへと馬車は走り出した。




使用人達は、気さくにリアへと話しかけていた。

リアも快く応じて、楽しそうに笑顔となっている。


「魔術師さん、綺麗ね!

それだけ美人だと、旅なんて大変じゃないの?

荒っぽい連中とか会うでしょ?」

「お師匠様が助けてくれますから。」

「あっちの子がお師匠様なのか。

若いのにすごいんだな。」

「そう言えばお師匠様。

お幾つなんですか?」

「さん・・・いえ、十五ですよ。」

「やっぱり私より若いんですね。」


倍だよ!

本当はその倍だよ!




そんな調子で、夜になる頃には半分程まで到達したいた。

翌日にはヒルトに着くだろう。

今日はここで野宿となった。

馬車さえあれば、風も防げる。

眠るに困る事は無さそうだ。

使用人が積んで来た薪を燃やし始めた。

すぐに焚き火の暖かい光が辺りを照らす。

そこで暖まっていると、執事を伴ってヘレナ様が顔を見せた。

意外に警戒せず、リアの隣に腰を下ろす。


「さっきは済まなかったわ。

まともな挨拶もしなかった。

今更だけど、ヘレナよ。

護衛を受けてくれてありがとう。

あと一日、頼むわね。」


俺とリアは驚いたが、笑って頷く。

灯りの加減かもしれないが、少し照れて赤面しているように見えた。

ふむ、これはこれで可愛らしいな。

それからはヘレナ様や使用人、御者達と会話を楽しみながらの夕食となった。

ヘレナ様は貴族らしからぬ親しさで皆と接していた。

その笑顔は優しく、声色は弾むようだ。

彼らは、いつもこうなのだろう。

強気だが、優しい。

シルクスの言葉を思い出した。


騎士二人の様子がどうにも気になっていた。

ヘレナ様へ向ける目が妙に鋭く、俺には見えるのだ。

リアを見る目はいやらしく、俺に対しては警戒のものだ。

明らかに企み事がある。

周辺もそうだが、あの二人も警戒が必要であるようだ。




夜の見張りは、騎士と俺達の四人で行う事となった。

二人で四時間ずつを見張る。

使用人達は幌馬車へ、ヘレナ様と執事は箱型馬車へ、それぞれ戻って行った。

見張りはまず俺達二人からと頼まれた。

どちらでも構わなかったので、大人しく従う。

騎士は火の周りで、横になって眠り始めた。

火を絶やさぬよう時折薪を入れ、突っつく。

焼ける音しか聞こえない静寂の中で、俺とリアは囁いて話をしていた。


(何にもありませんね。)

(これから、だと思いますよ。

油断は駄目ですからね。)

(はい、お師匠様。)


そうは言っても、気を張り続けていては疲れてしまう。

適度に喋りながら、四時間を過ごした。

二時間を過ぎた頃には、リアは睡魔と戦い始めてしまったが。


騎士二人に声をかけ、時間だと起こす。


「ああ、わかった。

交代しよう。

ゆっくり休んでくれ。」


俺達は幌馬車に入らせてもらう。

リアを寝かせて、俺は密かに外へ。

物陰から見張りを続行した。




一時間程して、騎士達は焚き火を消した。

俺は探索系スキル、野外と盗族を動員する。

すると気配と言うものが掴めるようになった。

数人が街道の先からこちらへ歩いて来るのが感覚で察知出来る。

騎士の二人は箱型馬車に向かうつもりのようだ。

俺はファイア・アローで焚き火に再度、火を点ける。

悠然と中央に歩み出し、掲げた手には青と黒の炎。


「第六階位、カオス・フレア。

地獄の業火で焼き殺されたいなら、好きにするが良い。」


大きく、泰然とした声が響いた。

街道の男達は盗賊のようだ。

武器を持ち出し、わめく。


「はったりだ!

やっちま・・・!」


盗賊達は荒れ狂う炎に巻かれ、断末魔を上げた。

広範囲に燃え盛る青と黒から逃れられた者はいない。

・・・火力上がったのか、火が青いんですよね。

骨も残らんかもしれんね。

馬のいななきが聞こえた。

箱型馬車の御者席に騎士がいる。

馬を走らせて、ヘレナ様を連れ去るつもりのようだ。

もう一人も自身の馬に跨り、走らせた。


「リアさん!

西に伏兵が三人います、任せますよ!」


慌てて起き出したリアに後を頼んで、俺は疾走する。

前を行く馬に追い付き、跳び上がって蹴り飛ばす。

吹き飛ぶように宙を舞い、騎士は大地に激突した。

駆け抜け様に踏み付け、そのまま馬車を追う。

御者席へまるで普通に乗り込むように上がれば、騎士は驚愕し、剣を抜こうとした。


「貴様、一体どうやってここまで!」


その柄頭を足で踏み付け、風を纏う手で顔を掴む。


「第二階位の魔法だが、頭を貫くくらいは容易い。

どうする?」

「参った!」


騎士は馬車を停め、俺の指示に従って引き返させた。

御者席と中を繋ぐ窓が開き、ヘレナ様が顔を見せる。


「終わったのね?

ありがとう。

あなた達がいてくれて良かった。

この恩は、後程しっかりと報いらせてもらうわ。」




戻れば、伏兵三人はきっちりリアが倒していた。

全身に火傷を負って、動く事も満足に出来ないような姿だ。

仕留めてしまわない辺りは、リアの優しさだろうか。

頭を撫でてその心と、手加減出来るまでに強くなった技量を称賛する。

こいつらは、せっかくなので生かしておいてやろう。


その後、騎士と伏兵の五人は武装解除してロープで縛り、馬車に繋いだ。

街道側の盗賊達はやはり誰も生きておらず、消し炭となってしまっていた。

やった本人すら盛大に引いたが、むしろヘレナ様一行の方が気にならない様子だった。


「この人達に捕まってたら、私達きっと酷い事されてたのよね。

それを思えば、これくらい当然の報いだわ!」


使用人の女性二人には、大層喜ばれた。

この世界にそういうの、あるの?


リアは複雑そうな表情だった。


「お師匠様がすごいのは知っていますし、尊敬しています。

ただ、いつになったら届くのかと思うと、遠過ぎて・・・。」


護符を手に入れてるからね。

これがある限りは難しいかと・・・何て、言えるわけないからなあ。


「一番近道を来てもらうために、魔術に特化してもらったんです。

大丈夫、道は通じてますよ。」

「頑張って背中、守れるようになりますからね。」


健気だな・・・、良い。

こんなに素敵なキャラ付けしといてあんな簡単に退場させようとは、シナリオ考えた奴はとんだ阿呆だな!

全くもって、勿体ない!




ヒルトに着くと、馬車はそのまま貴族達のエリアへ。

騎士達を市中引き回しの刑に処しながら、千刃城に程近いところで停まった。

そこには立派な屋敷が、かなりの敷地に広がっている。

これがそうなのか・・・。

中から使用人が出て来て、門を開けて馬車を中へと迎え入れた。

そこで全員が降りて、使用人達はそれぞれの仕事に向かった。

執事は私兵に命じて騎士達五人を連れて行かせている。

そしてヘレナ様は自ら、俺達を応接室まで案内した。


「改めて、本当にありがとう。

まずは報酬を。」


銀貨二十枚の入った布の袋をもらった。

生地のせいで既に銀貨何枚かしそうだな、この袋。


「そして、この指輪を。

二人共魔術を使うわよね。

一つしか無くて悪いのだけど、魔術師にとって役に立つ物だと聞いたわ。

これを受け取って頂戴。」


銀の輪に青い宝石の指輪だ。

特殊効果は魔力増加二。

単純にありがたい代物だ。

と言うわけで、リアに渡した。

何せ俺、これ以上上がらないからな。

これも言えないし、別の言葉で説得するけども。


「背中を任せられるようになるのでしょう?

その役に立ちますよ、これは。」


アイテムの力でも何でも、強くなれば良いじゃない。

高レベルの冒険者なんて、この比じゃないよ。


「素晴らしい報酬をありがとうございました。」

「良いのよ。

また何か頼みたい事が出来たら、お願いするかもしれないわ。

その時はよろしくね。」


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