第六十一話:神の命、天使の監査
プホルスはまだベッドの上ではあったが饒舌になっていた。
久しぶりに集まって来たプホルスの「同志たち」とノーランやエドガーとの交流も深まっていった。
プホルスの同志の中には魔導技士としてエドガーと一緒に働いたことがある者もおり、再会を喜んでいた。
プホルスの同志たちの魔法使いは、今、大陸で進めている「民主主義国家の樹立」プランをノーランやエドガーに説明していた。
ノーランやエドガーは彼らの主張を熱心に聴いていた。
カイルには、プホルスの仲間たちの主張は「危うい理想論」に聞こえていた。
カイルの前世でも独裁者が倒された例はたくさん見てきた。
しかし、結局統制が取れなくなり余計にカオスになるケースの方が多かった。
チカラによる現状変更の後にはテロリストが暗躍するケースが多い。
早速プホルスが狙われた。
これは偶然ではない。
この大陸を狙っている勢力が存在する。
しかも、あの影の男の能力は異常だった。
全ての光を呑み込むほどの深い影。
ベルの結界を破って魔封石で出来たツルハシをプホルスに撃ち込み、人間離れした身体能力で、逃げた。
あの男はガリガリに痩せていて、小柄だった。
重いツルハシを人体を貫通させるレベルで振り回せる体力がありそうにはとても見えなかった。
そして、前を向いたまま、グレースの自動小銃の弾を避けながら後方への高速移動。
ひとことで言えば「この世の者ではない」と感じた。
あの男は「暗殺者」だ。
何の感情も感じなかった。
プホルスにツルハシを撃ち込むことに成功したことへの達成感や、その前の怒りなどの感情も一切発していない。
あの影の男はプホルスの命が助かったことを既に把握していると判断した方がいいだろう。
そして、必ずまた、プホルスの命を狙う。
それを防ぐにはどうしたらいい?
大陸の前途は多難だが、リーダーであるプホルスを失うと秩序も完全に失うことになる。
カイルは「思案顔」になっていた。
鼻と上唇の間にペンを挟み、天井を見上げていた。
東の島国のカルデラで、ウリアスとオルティスは「神の指令書」を見ていた。
その内容は
「神の定めた理から外れた契約をしている執行人がいる」
「この執行人の行為をやめさせ、即時に地獄に帰還させよ」
「神の指令書に執行人が従わない場合は実力行使を認める」
「執行人の名前はディアス」
「執行人の真の契約者はクローンワース三世」
「この指令書に書かれた業務は7日間以内に完了すること」
「期限内に指令書の内容を達成した場合は特別ボーナスを支給する」
「以上」
オルティスは前向きだった。
「特別ボーナスだってよ!」
ウリアスは冷静だった。
「なぜ特別ボーナス付きなのか?を考えろ」
オルティスはネガティブ思考のウリアスを横目にソワソワし始めた。
「早期達成でボーナスだぞ?やるしかないだろ?」
「お前は単純だな、難しい仕事だから特別ボーナスとかいう言葉で俺たちを釣っているのだ」
「執行人を見つけ出してこの指令書を見せて強制執行すりゃいいだけの話だろ?」
「堂々とルール違反をしてる執行人だぞ?我らが来ることも予測しているだろう、簡単に尻尾は出さん」
「お前は本当にネガティブ思考だな」
「お前が能天気過ぎるだけだ」




