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第五十九話:命の援軍

グレースが淡い桜色の球体を見ていると、ポーン、ポーン、と跳ねて、拠点の前で止まった。


淡い桜色の球体がスッと消え失せ、中からハンナとシェルビーが出てきた。


彼女たちは魔法使いなので、カイルの様に目を回してはいない。


ベッツ、ハンナ、シェルビーが駆け寄ってきた。


ハンナが落ち着いた声で言う。


「グレースさん、プホルスさんはどこ?」


グレースはハンナの迫力に気圧された。


「こっちよ」


ハンナはベッツの肩を抱いている。


シェルビーもベッツの腰に手を添えていた。


三人は、プホルスのベッドの周りを囲んだ。


ベッツは、瀕死のプホルスを見てショックを受けていた。


ハンナがベッツに声をかける。


「みんなで、プホルスさんを助けるのよ」


「さあ、ベッツちゃんも」


シェルビーもベッツの目を見ながら頷いている。


シェルビーが手をかざした瞬間、淡いベージュの光がカアっと周りを明るく照らした。


院長が眼を見張る。


「あなた、そのチカラ…」


ハンナ、ベッツも治癒魔法を展開した。


院長、グレース、ベルに加えて、シェルビー、ハンナ、ベッツも加わった。


六人の女性魔法使いたちの治癒魔法がプホルスのカラダを包み込む。


その頃、別室ではエドガーが頭を抱えていた。


「私は治癒魔法を使えない…」


「弟が、死にそうだというのに…」


エドガーは、泣いていた。


ノーランはエドガーに寄り添っている。


カイルには、どうすることも出来なかった。


しかし、プホルスのベッド脇からシェルビーが放ったエネルギー体の強さに驚いていた。


治癒魔法の権威である院長が放っているエネルギー体と遜色無い。


いや、凌駕していた。


カイルの「神の目」は、シェルビーが加わってからのプホルスの肉体の変化を捉えていた。


今にも消え入りそうなプホルスの命の炎がやや持ち直した様に見えた。


とにかく、プホルスには生きて欲しい。


治癒魔法による治療は、一晩中続いた。




プホルスの拠点に、朝日が差し込んでいた。


平和な、朝日だった。


カイルは、別室のプホルスのカラダからエネルギーを感じた様な気がした。


そっと、プホルスのベッド脇に歩いていく。


六人の女性魔法使いたちはプホルスに手をかざしたままだ。


カイルはプホルスの顔を見た。


真っ青に血の気が引いていた頬に、薄っすらと赤みが戻ってきていた。


院長は、カイルの方を見て微笑んだ。


「奇跡ね」


カイルは、六人の女性魔法使いたちをひとりづつ見つめた。


プホルスのカラダからエネルギー体が出ている。


まだまだ弱い波動だが、消え入りそうだった状態からは脱している。


カイルは、院長と女性魔法使いたちに一礼した。


別室に戻ったカイルは、エドガーの肩に手を置いた。


「エドガーさん、プホルスさんは大丈夫」


エドガーは、眼を見開いて涙を流していた。


ノーランは、安堵のため息をついていた。


その後も治癒魔法による治療を受け続けたプホルスは、昼前に目覚めた。


薄っすらと目を開くと、焦点が合わないのか、しばらく目をパチパチさせていた。


「プホルス!」


ベルとベッツが同時に叫んだ。


「ベッツじゃねえか…」


「なんでこんなとこにいるんだ?」


ベルとベッツは涙でぐしゃぐしゃの顔でプホルスの手を握っていた。


プホルスは、徐々に視力を取り戻したのか、周りを見渡し始めた。


「ハンナ…ハンナだよな?」


「エドガーの娘だ…」


「はい、おじさん」


そう言って、ハンナもプホルスの手に触れた。


ハンナも泣いていた。


みんな、泣いていた。


「こっちの可愛らしいお嬢ちゃんは誰だい?」


「私は、シェルビーです、初めまして」


「ロサーナの子かい?」


「そうです、ロサーナの魔法使いの民です」


「そうか…おじさん、昔、ロサーナの魔法使いの民に酷いことしちまったんだ」


「ずーっと、それを悔やんでた」


「ごめんな、シェルビーちゃん」


シェルビーは、黙って首を横に振った。


プホルスは、グレースに目を向けた。


「グレース、お前も俺を助けてくれたんだな」


「ありがとう」


「30年前のことも詫びたい」


「すまなかった」


グレースは、窓から外の景色を見ていた。




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