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第十六話:様々な魔法のチカラ

ノーランはコービンに、カイルはグレースに、それぞれ会うために王宮から寄越された馬車に乗り込む。


マリアは笑顔で、ハンナは仏頂面でそれを見送る。


前の席に座っているコービンは王宮に着くまで待てないのか、ノーランに話しかけている。


コービンの問いに、端的に、的確な答えを淡々と返していくノーランを見ながら、カイルは頼もしさを感じていた。


この国いちの鍛冶屋の息子として生まれたことは幸運だった。


今、カイルが脳内で描いているプランを実現するにはノーランの能力は必要不可欠だった。


馬車が王宮に到着した。


門番はコービンに敬礼し、門を開ける。


馬車が王宮に入っていく。


ノーランは周りを見渡して、ふぅむ、という顔をしていた。


カイルはノーランがどう感じているか手に取る様に分かった。


(意外に質素だな)


カイルは前世の記憶を取り戻しはしたが、遺伝子はノーランから受け継いでいる。


やはり「親子」なのだ。


馬車は、王宮のほぼ中央にある大きな建物に到着した。


入り口には、グレースが立っていた。


コービンは、ノーランを促して武器庫へ向かった。


グレースは、カイルに声をかけた。


「私たちも、行きましょう」


グレースは馬車に乗り込んできた。


馬車が再び王宮の門に向かって走り出した。


その時、カイルは「視線」を感じた。


隣の建物の2階の窓から、少女が顔を出し、両手を窓枠に置いてこちらを見ている。


カイルは「目の端」で少女の姿を捉えながら「神の目」の能力をフル回転させていた。


窓枠に置いた手の指には黒い魔封石で作られた指輪がはめられている。


それなのに、彼女のカラダからはあのエネルギーが溢れ出している。


(ハンナのエネルギー体に似てるな)


カイルは前を向いたまま、分析を終えていた。


その時、グレースが口を開いた。


「どんな風に見えた?あなたには」


「なぜ魔法使いが王宮にいるんですか?」


「大陸からの難民だそうよ」


「大陸から?」


「ええ、全身傷だらけで王宮の前にいた」


「なぜ大陸からの難民だって分かるんですか?」


「本人がそう言ってるのよ」


カイルは思案顔になった。


あのエネルギー体からは攻撃的な、或いは悪意の様なものは全く感じられなかった。


ハンナが自分に対して怒っている時のエネルギー体よりも、むしろ柔らかい。


しかし、かなり強力な効果があるはずの純度の高い魔封石を身に付けているのに、彼女のエネルギー体を抑え込めていない。


これは、どう判断すべきか?


「グレースさんは、どう思ってるんですか?」


「凄く良い子よ、看護師たちのアイドル」


「そういう意味ではなく」


「魔法使いとしては一級品ね」


「そうですね」


「そして、悪意も無い」


「僕もそう思います」


「だから怪しいのよ」


「プホルス側からのスパイですか?」


「それは分からないわ」


「あの子、どうするんですか?」


「どうしたもんかしらね」


「そんな、他人事みたいに」


「まあいろいろ試してみましょう」


「試す?」


「どれくらいのチカラか、とか」


「それは僕も興味あるなあ」


「貴方こそ他人事じゃない」



そうこう言っている内に、あの巨大な壁が見えてきた。


馬車は壁の中に入り、ハンターの元に向かう。


ハンターはカイルの顔を見ると満面の笑みになった。


「今日は、ここに居る皆が楽しみにしていたんだ」


「カイル、キミが来るのをな」


「じゃあ、行こうか」


馬車にハンターも乗り込み、街の中心部へ向かう。


そこには広大な公園、イベントスペースの様な広場があり、既に大勢の人が集まっていた。


その広場には、全体を見渡せる高さの演説スペースの様なものがあった。


ハンター、カイル、グレースはその演説スペースに向かう。


ハンターは、魔封石を外した。


そして、そこに集っている民に語りかけた。


「みんな、魔封石を外してくれ」


ハンターは普通に喋っているのに、低くて落ち着いたハンターの声が広場全体に行き渡る。


集まった人々は、指輪、ネックレス、ブレスレットなどの黒いアクセサリーを一斉に外した。


カイルは戦慄した。


凄まじいエネルギー体が、その広場を中心に膨れ上がった。


しかも、周りをタンクやシリンダーで封じ込めている訳ではない。


エネルギー体が「自律」して、そこに留まっている。


圧巻だった。


グレースは、微笑んでいた。


ハンターは、カイルに向き合った。


「どうだね?カイルくん」


「このチカラを活かしてくれんかね?」


「皆がそれを望んでいるのだ」


カイルは、ハンターに答えた。


「ええ、ハンターさん」


「皆さんの想いは必ずカタチにします」


「約束します」


「僕の想いを、皆さんに伝えて貰えませんか?」


ハンターはまた、低い声で民に語りかける。


「私たちはロサーナ王国の民として、北の脅威に立ち向かう」


「私たちを王宮も必要としているのだ」


広場を埋め尽くしているエネルギー体が、より一層凄まじい輝きを放った。


カイルの頭の中では、このエネルギー体を利用したある兵器の設計図が描かれつつあった。


それは、試験艦あすかの甲板に取り付けられた、前世のカイルが作り上げた「作品」によく似た構造だった。





御覧頂いた皆様に心より御礼申し上げます。

初回投稿から毎日投稿を続けておりますが、最終話まで毎日投稿で走り切るつもりです。

常時、原稿ストックを40本以上キープして公開を続けます。

「エタりません、完結までは。」

最終話までお付き合い頂けましたら幸いです。


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