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神の如き宇宙人は何もしない~ただ売るだけ~  作者: 苺一会
第四部「戦争・決着・そして締め」第八章「豪州合衆国との戦争」

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閑話「先生が足りない 1870年」

 第四部、豪州との戦争中 大阪にて。

 

 戦争が始まって二年目の秋、大阪の大学統合校から教師が六人いなくなった。

 三人は徴兵された。二人は軍の技術顧問になった。一人は病気だった。


 残った学生は三十二人だった。授業をする教師がいなかった。

 学生の一人、村田誠一郎が言い出した。

「俺たちでやろう」


 誰も最初は賛成しなかった。

「先生でもないのに教えられるか」と一人が言った。


「先生がいないんだから仕方ない」と誠一郎は言った。「得意な科目を持ち回りでやる。俺は蒸気工学をやる。熱力学が得意な奴は誰だ」

「俺だけど」と一人が手を上げた。


「じゃあ頼む。材料工学は」

「……俺が一番ましかも」


「数学は」

「それは藤本だろ」


「藤本、やれるか」

「……やる」と藤本が言った。


 翌朝から授業が始まった。

 最初はひどかった。


 誠一郎が黒板の前に立って蒸気工学を説明し始めたが、三分で別の学生に突っ込まれた。

「そこ違う。圧力と温度の関係、逆じゃないか」


「……そうか?」

「そうだ。教科書の四十二ページ見ろ」


「……本当だ。訂正する」

 藤本の数学は逆に分かりやすすぎた。

「ここ、なんでこうなるんですか」と後輩が聞いた。


「なんでって……そういうものだから」

「そういうものだからじゃ分かりません」


「……じゃあ、ゆっくり分解してみる」

 藤本が黒板に書きながら考えた。考えながら書いた。書きながら自分でも気づいた。

「あ、ここはこういう意味か」と藤本は言った。「俺も分かってなかったかもしれない」

 後輩が笑った。藤本も笑った。


 三ヶ月後、本来の教師の一人が戻ってきた。


 授業を見学して、黙っていた。

 終わった後、誠一郎に言った。


「お前ら、俺が教えていた時より理解している」

「先生が怒るかと思いました」


「怒らない」と教師は言った。「ただ、一つだけ聞く」

「何でしょう?」


「藤本の数学の説明、あれはどこで覚えた」

「自分で考えました」と藤本が言った。


「教科書にない説明だ」

「教科書に書いてある方法が分かりにくかったので、別の方法を考えました」


「……論文にしろ」と教師は言った。

「え」


「それは新しい説明方法だ。書いて残せ」

 藤本は論文を書いた。

 三年後、その論文は大学統合校の標準教材になった。


 その年の帳簿に、佑は書いた。



【1870年・記録】

 大阪・大学統合校より報告。

 教師不足のため、学生が授業を自主運営。

 三ヶ月後、元の教師が「理解度が上がっている」と評価。


 藤本某の数学説明、論文化の予定。


備考:教えることが、一番よく学ぶ方法らしい。

   これは売っていない。

   人間が自分で見つけた。


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