第41話 テスト終わりのボーリング
〇柊七緒視点〇
無事に国語のテストが終わると同時に全教科終了し、テストから解放されドッと疲れが襲ってくる。
まだ結果は分からないけど、自分なりに満足のいく出来だったと思う。
クラスの皆も疲れたり、あまり解けなくて項垂れている人もいれば、この後遊びに行こうという元気のある人もいた。
「テスト、来週返ってくるらしいよっ」
「あ、そうなんだ。早いね……」
先生達は生徒達が帰った後と土日も使って採点するのだろうか。大変なお仕事だ……。
「楽しみだねっ!」
「……そうだね」
七月さんに疲れを感じさせない弾けるような笑顔を向けられ、俺はこりゃ負けたかもなと苦笑する
俺は帰って溜まってるアニメでも見て夜は配信しようかなと思いながら帰り支度を始めた。
「それよりも、週末だし。時間あるしどっか遊びに行かない? テスト終わった打ち上げ的な?」
「え、俺誘われてるの?」
「え? 勿論。この前約束したカラオケ行っちゃう?」
「いや、もうちょっと歌上手くなってからって言ったじゃん。そんなに直ぐ歌上手くなんねぇよ」
「えー……けち。じゃボーリングとか行こ」
「まぁ別にいいけど」
「よし、決まりね!」
七月さんは声を弾ませ、目を輝かせながら渡辺さん達を誘いに行った。
「って事らしいけど、光来る?」
「いや、すまん。今日は無理だ」
光が近くまで来ていて会話は聞こえていたはずなので誘ってみたが断られてしまった。
きっとまた妹絡みだろう。
「そっか」
「じゃあな。楽しんで」
「あい、またな」
光と別れの挨拶をすると海が入れ替わりで話しかけてくる。
「テストどうだった?」
「いつもより好感触だよ」
「なんかちゃんと勉強してたよね。そういうイメージ無かったから意外」
「いや勉強はしたくないんだけど、七月さんとテストの点で勝負することになったからちょっと頑張ってみた」
「あーなるほどね? でも七月さんって頭いいんじゃなかったっけ?」
「そう、だから俺の一番得意な科目と七月さんの一番苦手な科目の点数で勝負ってことになってる」
「あー、ハンデね? カッコわる」
「いやあっちが提案してきたんだからな?! 俺は仕方なくやっただけで」
元々俺は勝負なんてする気は無かったのに、どうしてもというから受けたのにこの言われようは酷い。
「どーだか。全く、それで負けた方は勝った方の言う事聞くとかいうベタな展開じゃないよね?」
「え、よくわかったね」
「……は? エロ漫画の展開じゃん……」
「いやお前何言ってんの?」
ベタな展開ではあるだろうけど、エロ漫画に限った話じゃないだろ。
確かにエッチなお願いするっていう展開はあるかもしれないが、そんなことを現実でしてみろ。絶対に嫌われるに決まってるし、七月さんの友達とかにもそれがバレてクラス、学校中に広まって最悪退学なんてことになってしまうかもしれない。
「いやいや、あり得るかもしれないじゃん?!」
「そんな真剣な表情で言われても……」
これ以上この話を続けると、海がとんでもないド下ネタを言いそうな勢いだったので、俺は流石に話題を変える事に。
放課後とはいえ、まだ教室に残っている人は多いしな。
「海、この後暇?」
「ん? まぁ暇だけど何で?」
「七月さんに誘われてボーリング行くんだけど、海もどうかなって」
「え、えーと。光は帰ったから来ないよね?」
「うん、今日は無理って言ってた」
「他のメンバーは?」
「まだ分かんないけど、あそこにいるメンバーなんじゃないかな」
俺は顎を上げ七月さん達がいる方向を示しながら言うと海が「え? 他に男子は?」と恐る恐る尋ねて来た。
「……いないんじゃ?」
「…………」
海は少しの沈黙の後覚悟を決めたのか、拳に力を入れ顔を上げると「俺も行く」と口にした。
だがその目は不安そうで、覚悟を決めたとはいえ怖い事実は変わらない
。
俺はあまり効果は無いだろうと思いつつも励ましの言葉を投げかける。
「おっけい。大丈夫だって皆優しいから。俺もいるしね」
「うん、ありがとう」
まだ小野さんと桃沢さんと数える程しか交流はないが、日頃の七月さん達との絡みを見てても悪い人じゃないのは分かる。それにこの前図書室で席が無くて一緒に勉強することになった時も優しかったし大丈夫だろう。
今日を機に少しは改善されるといいんだけど……。
その後、七月さんに海も行くことに了承を得ると、皆で学校を出た。
メンバーは俺と海。そして、七月さん、桃沢さん、小野さんという感じになった。
え、てか海がいなかったら男俺一人だったってことか。あぶねぇ、気まずさで死ぬところだった。
「ありがとう海」
「んぇ?」
海は突然の感謝の言葉に理解が追い付いていなかったのかアホ面を晒してきた。
俺はそんな海になんのお礼か説明するのも恥ずかしいので「なんでもない」とはぐらかすように笑った。
女子達が先導して行ってくれるので俺達はその後ろから着いていくだけだった。たまに俺達にも質問を投げかけてくれたりして話題に困ることは無く、気まずい空気になることもなかった。
流石陽キャ集団……眩しい。
「ボーリングめっちゃ久しぶりに来たな」
「分かる」
ボーリングが出来る施設に到着すると、俺と海はキョロキョロと辺りを見渡す。
「なんか小学生の頃町内会みたいなのでボーリングした時以来かもしれん」
「あはは、なっつ! なんか俺もそんなのやった記憶あるわ。七緒よく覚えてたね」
「えー! 皆もそういうのあったんだね! 私もやった記憶ある!」
「あたしもあるな」
「うちもある! お菓子とかジュースとか貰えたやつ!!」
意外と皆の所も同じような感じだったんだなと思うと、一緒にはしていないのに共通の思い出があるなんて何か面白い。
受付の仕方が分からない俺と海は女子達に任せて他人がやっているボーリングを見ていた。
重いボールが床に落ち、少しの振動が伝わってくる。ゴロゴロと音を立てて勢いよくピンに当たると気持ちいい音が響き渡った。
そして楽しそうな声や悔しそうな声が聞こえてきてその場にいるだけでワクワクとした気持ちになれた。
受付が終わったので靴を貸し出して貰い、取り敢えず荷物も置くためにレーンに行く。
「海、大丈夫?」
「うん、今のところは何とか。そんなに話してないし、七緒いるから」
「ならよかった。キツくなったらいつでも言ってな」
「ありがとう」
小声でやり取りしつつ荷物を置き靴も履いていると、小野さんは一目散にボールを選びに行った。
テストの疲れを一切感じさせない小野さんに元気だなと素直に感心する。
「私もボール取りに行こっと、柊くんも一緒行こ?」
「あぁうんいいよ」
「どんくらいの重さなら持てるかなー」
「重い方がピンいっぱい倒れるって言うよね」
「ねー、でも重すぎたらそれ以前の問題だよねー」
あ、待って海一人にしちゃった。大丈夫かな……。




