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【後日談 ⑨ 】ミドリの魔王からの報告

 ミドリっす。皆様、お久しぶりっす。俺からは、地球を離れた後のことを、報告するっす。



 俺達は、灰王神が統べるトロモス星という星へ行ったっす。その星に到着すると、灰王神は、機械のような身体に化けたっす。


 トロモス星は、俺達と近い戦闘力を持つ種族が多いらしいっす。地球では科学が当たり前だったように、トロモス星では魔術が当たり前のように使われているっす。


 俺達のような呪術系は少なめで、赤髪の魔王や緑髪の魔王が使うような王道な魔術が一般的らしいっす。剣術はあまり進化してないらしく、そういう意味では、赤髪の魔王は無敵かもしれないっすね。


 俺達が行ったのは、神の国という名の、金属の建物しかない大きな国っす。神の国以外は、すべて小国らしく、頻繁に増減するから、灰王神にも数はわからないらしいっす。



 ◇◇◇



 到着した翌朝、空を無数の魔法攻撃の光が飛び交っていることに気づいたっす。争いが多い星だと思ったっすが、俺達が到着したのは、厄災の最中だったらしいっす。



「あぁ! 灰王神がお越しくださった! 厄災を鎮めるための転移者は、全員倒れて帰還してしまいました。灰王神、なんとかお力を……」


 神の国には、厄災は起こらないらしいっす。周辺の国から、魔力の高い人達が、俺達が泊まった灰王神の神殿に、助けを求めに来たっす。


『わかった。私の配下を制圧に向かわせよう』



 俺達、比叡山十二大魔王は、3つに分かれたっす。迷宮十二大賢者は、半数は神の国に残って、残りは二人ずつ俺達に加わったっす。


 俺がペアを組む緑髪の魔王は、赤髪の魔王と一緒じゃないとテンパってしまうっす。だから、アカの魔王も同じグループになるっす。


『ミドリ、おまえらは厄災の中心地に行け。大した厄災ではない。炎の魔人が起こしている厄災だ。さっさと終わらせなさい』


 俺達は、灰王神から無茶振りされたっす。迷宮十二大賢者のリーダーが俺達のグループに入ったことで、まぁ、なんとかなる気はしたっすけど。




 実際に行ってみると、厄災の中心地となる洞窟の周辺は、火の海だったっす。


「火には炎だぜ!」


 赤髪の魔王が、意味不明なことを叫びながら、飛び込んで行ったっす。元気すぎるっす。


「ミドリさん、俺達はどうすれば……」


 迷宮十二大賢者のリーダーが困った顔をしてるっす。


「生田さんでしたっけ? 氷魔法は使えるっすか?」


「はい、吉田も使えます」


「じゃあ、この付近の火を消すっすよ」


「えっ? 見渡す限り、火の海じゃないですか。さすがに広範囲すぎて……」


「できるっすよ。緑髪の魔王が拡張するっす。俺は、生田さんと吉田さんの術に、呪術を乗せてサポートするっす。簡単っすよ」


「でも、氷を使うと、先に飛び込んで行った赤髪の魔王さんは……」


「アカが制御するから、赤髪にはダメージは入らないっす。じゃあ、一斉に行くっすよ〜」



 迷宮十二大賢者の魔力は凄かったっす。俺の術を乗せて、空一面に広げた氷を、一気に地上へ叩き落としたっす。


『灰王神が降臨した。つまらぬ厄災は鎮まれ!』


 俺が術を乗せた声は、予想以上に広がり、氷から大きな声が響き渡ってしまったっす。この星の特徴のせいっすね。反響する大地は、扱い辛いっす。



 シューッと水蒸気が上がり、大地は一気に冷えたみたいっす。それと同時に、俺の背筋も冷えたっす。


『ミドリ、私の名を使うなら、厄災をつまらぬと言うな。厄災で多くの命が消えているのだ』


『す、すみませんでしたー!』


 俺達は、一瞬で、厄災を制圧できたっす。魔術と呪術を重ねると、最強っすね。



 ◇◇◇



 それから数年、神の国でのんびりと過ごしたっす。


 神殿には、毎日のように各国から貢ぎ物が届き、迷宮十二大賢者は、元々は神官をしていたから、信者達への対応は慣れていたみたいっす。


 だけど、俺達には、暇すぎたっす。


 外を歩いても、金属の建物ばかりで、疲れるっす。神の国にいる人は、俺達を神のように扱うから、楽しいおしゃべりはできないっす。それに、皆、灰王神に頼り切っていて自立する気がなく、そういう心の声をさんざん浴びていると、俺は吐き気がしてくるんす。


 ララン様のような尊い女の子は、どこにもいない。この星のどこにもいないっす。




「ミドリ、俺、ちょっとシルバ様の様子を見に行ってくるわ。もうすぐ、俺らがいるトロモス星の近くを、第1スペクタル星系のスタラ星が通るんや。スタラ星は、歪な公転をしとるからな」


 アカの魔王が、とんでもないことを言ってきたっす!


「アカ、俺も行くっすよ! アカひとりでは不安っす。俺の方が転移魔法は得意っすよ」


「ふっ、そう言うと思っとったで。灰王神は、暇を持て余してるなら、2〜3年は遊んで来てもええって仰っていた。この星の厄災の周期は、20年らしいで。周期崩れを起こしたら、原始の星の誰かに送ってもらえばええって」


「すぐに準備をするっす! ララン様には会えるっすか?」


「さぁな。原始の星は、地球の数千倍の広さがあるらしいから、2〜3年で捜せるかはわからん」


 アカが、シルバ様に会いに行くということは、五十嵐様の領地に行くということっすよね? ララン様が住む国は、隣だと聞いたっす!


「俺は、捜してみせるっす!」



 そうして俺達は、第2スペクタル星系のトロモス星から、第1スペクタル星系のスタラ星へ星間転移したっす。


 灰王神は、俺とアカだけでは不安だと言って、生田さんと吉田さんも一緒に行くことになったっす。彼らが世話になった人が、原始の星にいるらしいっす。


 そのスタラ星には、原始の星へ行く常設の星間転移魔法陣があったっす。しかも、無料だったっす。



 ◇◇◇



『どの国に繋ぎましょうか』


 原始の星の入り口となる星間ゲートには、背筋が凍るほど強い門番が、ゾッとするほどたくさん居たっす。


『俺達は、剣の魔王ケントと同郷やったんや。このルートで遊びに来ればええって教えられたんやけどな』


 こういうときでも、アカは強気っすね。


『剣の魔王の国ですね。かしこまりました。あぁ、数日前に到着した難民の件でゴタゴタしているでしょうから、防御バリアを纏ってください』


 門番がそう言ったので、俺は4人に防御バリアを張ったっす。門番に、ショボいバリアだと笑われた気がするけど、気にしないっす。原始の星っすからね。


『剣の魔王の国へ繋がりました。滞在期間中、言語変換能力を付与します。そちらのゲートをお進みください』


 俺達が真っ白な門をくぐると、身体にふわっと浮力を感じたっす。そして、言語変換能力の付与はわからないっすが、俺が張ったバリアが、より強固なモノに書き換えられていたっす。




 ◇◇◇



「こちらは、剣の魔王の国、サムサム渓谷です。転移間違いはありませんかぁ? 言語変換魔法は正しく機能していますかぁ?」


 綺麗なお姉さんっす。しかし、あまりにも知能が高く、魔力も半端ないっす。


「間違いはないで。魔王ケントを訪ねて来た。俺らは同じ故郷やったんや」


「じゃあ、ここで合ってますよぉ。えーっと、トロモス星の魔王が二人と賢者が二人ですね。ん〜、どうしようかな。トロモス星にいたユキナさんも弱いですよねぇ」


 綺麗なお姉さんは、キョロキョロしてるっす。俺達には入る権利がないのかもしれないっす。何も自己紹介をしてないのに、すべて覗かれたみたいっすね。



「あーっ! ミルタさぁん、ちょっといいですかぁ?」


 綺麗なお姉さんは、門を入って行った獣人の男の子を呼び止めたっす。


「ん? 何? 俺、北の町のゴタゴタを見学しに行くんだけど」


「ちょっと、お願いがあるんですぅ。こちらの4人の方を、魔王ケントの元に安全に連れて行ってくださいませんかぁ? ファルテは、門番のお仕事があるんですぅ」


 綺麗なお姉さんは、男の子に俺達の護衛を依頼したっす! いつもなら反論するアカが、おとなしいっす。アカは、この国に着いてから、珍しくビビってるみたいっす。


「ケントさまのとこ? まぁ、いいぜ。でも、この4人って、めちゃくちゃ弱いな〜。ちょっと何かが当たると死ぬよな」


「だから、お願いしてるんですぅ」


「ちょっと待ってろ」


 男の子の耳がピクピクっと動いたっす。しばらくすると、俺達の周りが……天国になったっす! 次々と獣人の子供達が、転移してきたっす。女の子は、すごく凛としていて尊くて可愛いっす! みんなララン様みたいっす!



「町の案内係? ケントさまのとこ?」


「魔王ファルテが連れて行って欲しいんだってさ。でも、これは第2スペクタル星系のオーラだな」


「この4人は、魔王ケントの故郷の星からトロモス星に移住したみたいですよぉ。皆さん、魔王ケントのところに、彼らを安全に連れて行ってくださぁい。あっ、猫ちゃんが来ましたね」


 五十嵐様の迷宮で見たことのある銀色の猫が、俺達の前に現れたっす。



『ミドリの魔王、アカの魔王、そして生田さんと吉田さんですね。ようこそ、いらっしゃいました。マスターは今、地球を襲撃した傭兵達に規律を指導しています。日本から来た人達の案内は、魔王城の門番が行なっていますので、こちらへどうぞ』


 銀色の猫はそう言うと、先導するように歩き始めた。


「あ、じゃあ、猫ちゃんについて行ってください。皆さん、魔王城まで彼らの護衛をお願いしますぅ」




 ◇◇◇




「何じゃ。トロモス星からの客人とは、おまえらか」


 黒い髪の獣人の青年が、俺達を見て懐かしそうな顔をしているっす。もしや……。


「シルバ様ですか!?」


 アカが、駆け寄っていったっす。


「あぁ、シルバだ。よくわかったな。しかし、アカとミドリと生田と吉田か? 妙な組み合わせじゃのぅ。あー、吉田は、カナに会いに来たんだな」


「本条さんがここにいると聞いたんです。それに野口くんも……あっ!」


 3歳くらいの女の子が、パッと姿を現したっす。明らかに日本人に見えるっすけど、その能力は日本人じゃないっす。彼女がスッと目を細めたときには、俺の身体を電撃が走ったっす。可愛くて、とんでもなく尊いっす!



「ママが担当してた人? 私は、キミカ」


「えっ? ママ? カナちゃんの娘?」


「うん。あっ、ラランちゃんがお客様を地下に連れて行きなさいって言ってる。破壊神が北の町にいるの。弱い人は、みんな地下にいるよ。シルバさん、ゲストハウスを建てたよね? 案内してあげたら?」


「そうだな。キミカちゃん、門番を代わってくれるか?」


「いいよ。私が門番してあげる」


 そう言うと尊すぎる天使は、身体に魔導ローブを身につけたっす。どうやって着替えたかわからないっすが、よく似合ってて尊いっす。



「ふっ、ミドリ、いつまで気持ち悪い顔をしている? 相変わらずだな。おまえら、滞在期間の制限はあるのか?」


「灰王神から、2〜3年は遊んで来ていいと言われてるっす」


「そうか。来年、五十嵐の魔王降臨30年祭がある。それを見てから帰ればいい。この町は、懐かしくて刺激的だからな」


 シルバ様が、ニヤッと笑って妙なことを言ったっす。


「懐かしいんすか? 刺激的すぎるっすけど」


「まぁ、すぐにわかる。とりあえず、地下2階へ移動するぞ。この町の地下は、五十嵐の迷宮に似ている。迷宮アンドロイドも連れて来たからな」


「もしや、シルバ様のお気に入りのブランデーも?」


「ふっ、アカがしばらく滞在するなら、バーを開店するのもいいな。生田や吉田は、自己転生して元の姿に戻るか? 灰王神に強制されたことには、この星の魔王は同情的だ。力を貸してくれる」


 シルバ様の言葉に、迷宮大賢者の二人は、すごく嬉しそうに頷いていたっす。



 エスカレーターを降りると、広い空間に大勢が避難していたっす。さらに地下2階へ降りると、高いビルが整然と並ぶ都会が広がっていたっす。


「ミドリが目を輝かせとるけど、放し飼いでいいのでしょうか」


「ふっ、まぁ、ええじゃろ。この町におる子供達は、皆、ミドリより強いはずじゃからな」


 よく見てみると、あちこちに尊い子がいるっす! 天使だらけっす! 俺は幸せすぎて、死にそうっす。



「あっ! ミドリっ、久しぶりだねっ」


「はぅぅ、ララン様! 俺は、死んでしまったんすね」


 目の前にララン様が現れたっす。


「ん? ミドリは、立ってるから死んでないよっ。みんなっ、あたいのお友達のミドリだよっ。ちょっと変わった子だけど、仲良くしてあげてねっ」


 ララン様がそう言ってくださると、たくさんの天使達が俺の周りに来てくれたっす。俺は、もう思い残すことは何もないっす。



【次回予告】

次回は、9月14日(日)に更新予定。

最終話となるエピローグです。ケント視点に戻ります。

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