第64話 ラベンダー色の髪!くノ一アサヒ登場でありんす!
64話目です。
今回の話の中で登場するくノ一のアサヒのことをよろしくお願いいたします。
アサヒはナンバーズ15人ほどではないですが、作中では重要なキャラにしようと考えております。
現在クレードたちが所持している未完成品のグラン・ジェストーン(原石)3個と関わるキャラの一人です。ただアサヒが得る力は、クレードたちクリスタークの戦士とは異なるため、クリスタルナンバーズの16人目というわけではありません。
(※今回の登場人物たちについては、前回「○第64話の主な登場人物の紹介」の回をご参照ください)
ケルビニアン暦2050K年8月19日の昼。
(魔法武装組織メタルクロノスの宣戦布告まで、あと13日)
この日、ルスカンティア王国ではチャドラン王子やルリコたちを乗せた船が出航したが、一方遠い異国の地では…
ここはワトニカ将国の首都ヤマトエド。
武家の名家、月帝家の屋敷の前で…
侍(門番)「ムッ!あなた様は…」
レビンディ「レビンディ・京藤院…」
「今年もキョウノミヤから参りましたどすぅ…」
(屋敷内)
女中「奥方様、レビンディ様がお見えです」
ラジニナ(奥方)「レビンディちゃんが来たのかい…」
「今年もそんな時期か…」
屋敷内の客間に、ラジニナと義母のミツエがやって来た。
レビンディ「叔母様もミツエ様もお元気なようで…」
ラジニナ「レビンディちゃんも相変わらずだねぇ」
「手紙通り、今年もヤマトエドにやって来たってわけかい」
ミツエ「毎年毎年、ご苦労なことです」
レビンディ「ヤマトエドの方々にも舞妓の文化を知っていただきたいんどす…」
「そないなためでしたら、ウチはなんぼでも体を動かしますわ…」
レビンディはちゃぶ台の上にお土産を置いた。
レビンディ「叔母様、ミツエ様…」
「旅の道中、カマクラ藩でサブレを買いました…おあがりやす…」
ミツエ「ありがとうございます」
「レビンディさんが来る度に、私もサブレを楽しみにしているものでして」
ラジニナ「いつも悪いねぇ、あたしもこのサブレ結構好きでさあ」
ラジニナは袋を開け、三人は鳥の形をしたサブレを頂いた。
レビンディ(サブレを食べながら)「ところで叔母様」
「ロゼル従兄はんは居てはりますか?」
「お姿が見えへんのどすが…」
ラジニナ(サブレを食べながら)「ああ、ロゼルねぇ…」
「まあ屋敷に来たときはレビンディちゃんも大体会ってるよね…」
レビンディ「叔母様、今は居られんのどすか?」
ラジニナ「実は今月になって屋敷を出ていっちゃったんだよ」
「まあ、あまりにもお見合いの話が来るからね、とうとうあのロゼルも耐えられなかったみたいで…」
ミツエ(サブレを食べながら)「股旅姿になって屋敷を出ていきましたよ。どこへ行くのかも告げずに」
レビンディ「まったく、従兄はんは何をしてはるんでっしゃろ…」
「従兄はんも6月で33…」
「そろそろ身を固めてもらわんと、叔母様やミツエ様も安心できまへんがな…」
ラジニナ「まあ、親としてはそれが本音ではあるんだけど、今回は初めてのケースだったからね」
「正直あたしやミツエさんだって驚いているところはあるよ…」
レビンディ「叔母様、何か変わってことでもあったんどすか?」
ミツエ「ワトニカ国内の名家などからお見合いの話がよくくるのですが、今回異国の貴族様からお話がきましてね…月帝家にいろいろと書かれたお手紙が届いたのですよ」
レビンディ「そら確かに驚きですなあ」
「異国の貴族様が月帝家と縁を持ちたいとは」
ミツエ「まあ異国のお方から見ても、月帝家が名家だと思っていただけるのは嬉しいものですが…」
ラジニナとミツエは異国の貴族からの手紙に書かれていた事などをレビンディに話し始めた。
ラジニナ「異国の貴族様っていうのは、キンデルダム王国(※1)のビスタルーク家ってとこなんだ」
レビンディ「キンデルダム?風車と花で有名な国どすなあ」
ミツエ「キンデルダムは開国後、最初に交易を行った相手国であります」
レビンディ「そうどすなあ。ワトニカにとってキンデルダムは今も重要な交易国どすわ」
「キンデルダムとの交易を目的にオオウラ藩(※2)に蘭出瑠島(※3)という人工島も造りはったくらいどすし」
ラジニナ「ビスタルーク家は公爵家なんだ」
「なんでもキンデルダム国内のチューリップ畑の約3割はビスタルーク家が所持している土地らしいんだ」
レビンディ「約3割の畑…そらあ確かに正真正銘の名家どすわ」
ミツエ「キンデルダムの花の中でチューリップは特に有名です」
ラジニナ「つまり名産品であるチューリップの売り上げの3割はビスタルーク家に入るってことだよ」
「公爵家らしく巨万の富ってことだね」
レビンディ「チューリップは有名やけど、その背後で管理している御家のことまでは知らんでしたわ」
ミツエ「ビスタルーク家については、私たちも初めて知りましたよ」
ラジニナ「だからこそ驚いたんだ」
「異国の御家で、それも広大な畑を所持する公爵家からの話ってことでさあ」
レビンディ「まあ確かにあの従兄はんでしたら、そないな話を聞けばすぐに逃げ出しますわなあ…」
ラジニナ「国内の名家のお嬢様たちにさえ抵抗を感じてるんだ」
「異国のお嬢様相手となれば、もっと警戒するだろうさ」
レビンディ「それにしてもビスタルーク家は何でお見合い先にこちらの月帝家を選んだんやろな?そもそも」
ラジニナ「なんでも御家のお嬢様であるユノールさんの婚約相手が戦いで行方不明になっちゃったらしいんだ」
レビンディ「婚約相手が戦いに?」
「その御方は騎士団の人どすか?」
ラジニナ「騎士団員ではあるみたいなんだけど、ビスタルーク家からの手紙だけじゃ、お相手だった殿方のことまではよく分からなかったよ。とりあえず向こうも貴族の家柄らしいけど」
レビンディ「貴族同士のご結婚、まあ自然な流れどすなあ」
ラジニナ「同じ公爵家なのか、それとも伯爵家とかなのか、その爵位までは分からなかったけどね」
レビンディ「いずれにせよ貴族の御家にお生まれになった御方が戦うことを選んだということどすか」
ラジニナ「物の怪退治のため急遽結成されたラープ・キンデルダム・セントロンドスの三国同盟部隊の中にその人がいたようなんだ」
レビンディ「すると同盟部隊の一員として戦い、そして「行方不明」に?」
ラジニナ「おそらくそういう表現を使っている以上、その人の遺体は見つかってないってことなんだろうね」
ミツエ「ユノールさんは今も婚約相手がどこかで生きてらっしゃると信じているようで…」
レビンディ「婚約相手やさかい、ユノールはんも簡単には割り切れんやろな」
ラジニナ「だけど彼女のお父さん、公爵家の当主からしたらいつまでもそういう気分でいられちゃ困るらしいよ」
ラジニナ「ユノールさんのお父さん、オージェラスさんは、生死不明となってしまった婚約相手のことで落ち込んでいるユノールさんに対して、次の結婚の話をいろいろと持ち掛けているようでさあ」
レビンディ「それはつまり本来の婚約相手はんのことを諦めてもらうってことどすか?」
ラジニナ「そのようだね。もうその彼のことは諦めて次の事を考えてほしいってことだろうね」
レビンディ「それでしたら、なんでわざわざワトニカの月帝家にまで話がいくんやろか?」
「キンデルダムには貴族の御家が他にもございましょう」
ラジニナ「オージェラスさんとしては、早く気持ちを切り替えてほしいんだろうね」
「そのためにユノールさんの目を異国や異文化に向けさせて興味関心を持ってもらいたいというか…」
「まあいずれにせよ、異国の名家を探していく中で月帝家のことも分かったようだね」
ミツエ「キンデルダムは親和都(※4)な国として知られていますからね」
「文化の違う異国に目を向けるとしたら、まずはワトニカということなのかもしれませんね」
ラジニナ「おそらくうちだけじゃなくて、キンデルダムと関係の深いオオウラ藩、それにサド藩やナント藩の大名家にもお見合いの手紙を送ってるんじゃないかな?」
「オオウラはもとより、サドとナントはワトニカでチューリップの生産が盛んな所だからね。ビスタルーク家とはご縁も深められそうな場所だよ」
レビンディ「せやけど、お父はんは娘はんの本当のお気持ちをお分かりになっていないように思えますわ」
「新しい婚約の話もご自分で進めてらっしゃるようで…」
ラジニナ「まあそこまでお高くとまっているような人ではないと思うよ」
「今回月帝家に届いた手紙を読む限り、チューリップの生産や販売については情熱を持っている人だと感じるしね」
ミツエ「ですがレビンディさんのおっしゃる通り、娘さんのお気持ちを最優先にしているわけではないようですが…」
レビンディ「それで頂いたお手紙に対して、返事を出しましたんか?」
ラジニナ「さすがのあたしやミツエさんも今回はお断りさせてもらったよ…」
「あのロゼルがそこまでの決断できるとは到底思えなかったしね…」
ミツエ「案の定、ロゼル本人も話を聞くや否や、頭を抱えてしまいましたよ」
「まあそのビスタルーク家の一件で屋敷を出ていってしまったのですがね…」
ラジニナ「「屋敷に居たんじゃ、どこから見合いの話がくるか分かんねぇ。だからしばらく戻らねぇ」とか口にして、そのままどっかに行っちゃったよ…」
レビンディ「修行のために異国へ行ったウェンディとはだいぶ事情が異なりますなあ…」
ラジニナ「レビンディちゃん、ひとまずオージェラスさんが書いた手紙を読んでみるかい?」
「あと偶然なんだろうけど、8月の月世界新聞(※5)にもその三国同盟部隊の話が出ているんだ」
「そっちも合わせて見てみるかい?」
レビンディ「そないでっか?ほなら拝見して……」
女中「奥方様、大奥様、失礼いたします」
女中が客間にやって来て…
女中「お客様がいらっしゃいまして…」
ミツエ(大奥様)「今はレビンディさんとお話し中でございます」
「私やラジニナさんが対応するほどのお方でございましょうか?」
女中「ナギサ・知床鷲、マッカリ・伍羊山と名乗る方々でして…」
ラジニナ「知床鷲…もしかしてこの間お見合いの手紙をいただいたエゾ藩の御家じゃないか」
ミツエ「すると相手のお嬢様が直接この屋敷まで…」
ラジニナ・ミツエ・レビンディたちは、客間にナギサたちを呼んだ。
ナギサ「お初にお目にかかりやす!あきちの名はナギサ・知床鷲!」
「商店「知床屋」の娘でありんす!」
ラジニナ「知床屋…確かエゾの豪商カパチッリさんとこのお嬢様で?」
ナギサ「仰せの通り!カパチッリはあきちのアチャ(※6)でありんす!」
ミツエ「カパチッリさんからお見合いのお手紙は確かにいただきましたよ」
「ですがうちのロゼルがその気になれなくて…」
ナギサ「ロゼルの兄貴があきちとのお見合いをお断りしたことはすでに存じてるでありんす!」
「でもマッカリに勧められて一回兄貴に会ってみることにしたんでありんす!」
ミツエ「するとロゼルに会うためだけにわざわざヤマトエドまで…」
マッカリ「私たちはエゾ藩くノ一部隊の新人研修でこのヤマトエドまで来ました」
「それでここまで来たのなら、お見合いの手紙を送ったロゼルさんに会うだけ会っても良いのではと思いまして…」
レビンディ「くノ一部隊…」
「マッカリはんは幕府軍の方でいらっしゃりましたか」
ナギサとマッカリは改めて名乗った。
ナギサ「あきちのくノ一としての名は「アサヒ」!」
「あきちは豪商の娘であり、エゾ藩のくノ一でもありんす!」
マッカリ「私の本名は、マッカリ・伍羊山といいますが、くノ一としては「ニゼコ」と名乗っております」
ラジニナ「アサヒちゃんにニゼコちゃんか…」
「まあせっかく来てもらって申し訳ないんだけど、息子のロゼルは今屋敷にいないんだ」
「異国の公爵家からお見合いの話がきたもんだから、やんなって出てちゃったよ…」
ナギサ改め、アサヒ「それでしたらロゼルの兄貴がお戻りになるまで、屋敷に顔を出させてくだせぇ!」
「ヤマトエドに来ているうちは、お会いしてお話しさせてもらいたいでありんす!」
ミツエ「アサヒさん、なぜあなたはそこまでロゼルのために?」
ラジニナ「本気で惚れちゃってるのかい?うちのロゼルに」
アサヒ「愛!それよりもロゼルの兄貴には前に進んでもらいてぇ!」
「女子ともっと交流しねぇと兄貴は変わらねぇって思いやした!」
マッカリ改め、ニゼコ「私は「会って少し話をするだけもいいのでは?」と言ったんですけど、アサヒがいろいろ本気になってしまいまして…」
アサヒ「ご返事いただいたお手紙によると、ロゼルの兄貴はメノコ(※6)たちと会ってみる以前にお断りしてるようでして!」
ミツエ「メ、メノコ…?」
ニゼコ「メノコは、エゾ藩の方言で「女性」の意味です」
話を聞いたラジニナがアサヒに、
ラジニナ「その通りなんだよ、アサヒちゃん。ロゼルはそもそもお見合い相手の女性たちに顔を見せてもいないんだよ」
「まあ、お見合いした後に付き合いを断ったら相手の女性に悪いと思って、気を遣っているんだろうけどさあ…それじゃあロゼル自身が一向に前へ進めないと思うんだよね…」
アサヒ「だったらその役目、あきちにやらせてくだせぇ!」
「さすがに結婚までは無理かもしれやせんが、ロゼルの兄貴とお付き合いいたしやしょう!」
ラジニナ「ア、アサヒちゃん!?」
アサヒ「話はそっからでありんす!」
「逃げしてしまう前に、まずはお会いすることから、始めてみやしょう!」
ラベンダー色の髪をしたアサヒの登場。
彼女はこれから、チェレンカ(深緑の髪)とラルピア(茶色の髪)という二人の女性たちと出会い、ナンバーズを力強くサポートしてくれることだろう…
物語の場面は、月帝家の屋敷から、主人公クレードたちがいるアイルクリート共和国へ…
次回へ続く。
※1…王国の名前の由来は、オランダの世界遺産「キンデルダイク=エルスハウトの風車網」(文化遺産 1997年登録)より
※2…藩の名前の由来は、日本の世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(文化遺産 2018年登録)の「大浦天主堂」より
※3…島のモデルは長崎県の「出島」。
※4…新和都で「しんわと」と読む。「親ワトニカ」という意味で、言葉の元ネタは「親日」から。
※5…「月世界新聞」とは、1ヶ月から2ヶ月程度に一度発行される、魔法大陸ムーンリアス20カ国の情勢をまとめた新聞。
※6…元ネタはアイヌ語。『アチャ』は「父、お父さん」など、『メノコ』は「女性」、「女の人」などの意味。




